メディカル・データ・ビジョン(以下、MDV)とディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は、民間で国内最大規模となる1500万人超の保険者データベース(DB)の構築などを骨子とした業務提携契約を2022年5月11日に締結した。今回の締結により、子会社のDeSCヘルスケアをはじめとしたDeNAグループとMDVは、両社の強みを生かした協業を検討する。主な骨子は「データの利活用での協業」と「生活者向け健康増進サービスでの協業」となる。

 データの利活用での協業では、両社が蓄積してきたDBを連携し、1500万人超の保険者データ(DeNAの808万人+MDVの771万人)と約4000万人の病院データを合わせた国内最大規模のDBを構築する。さらに、MDVの分析用Webツール「MDV analyzer」にその連携DBを搭載し、サービス提供を目指す。

 生活者向け健康増進サービスでの協業では、MDVのPHRサービス「カルテコ」などのサービスと、DeSCヘルスケアのアプリ「kencom」をはじめとするサービスのアセット・ノウハウの連携を検討する。これにより、生活者の健康増進を一層サポートし、医療費の適正化などに貢献していく。

 今回の締結を受けて両社は共同記者説明会を開催。DeNA ヘルスケア事業本部 副本部長でDeSCヘルスケア 代表取締役社長の瀬川翔氏とMDV 取締役 営業本部長の中村正樹氏が登壇し、ヘルスケアにおけるこれまでの取り組みや業務提携による取り組みの概要・シナジー効果などについて語った。

 前半は瀬川氏が登壇し、DeNAの概要やデータ利活用の意義、課題などを紹介した。「一人ひとりに想像を超えるDelightを」をミッションに掲げるDeNAは、エンターテインメント領域で培ってきたさまざまなメソッドを、「スポーツ・まち」や「ヘルスケア」などを含む社会課題領域に対して横展開。これにより、「エンターテインメント領域と社会課題領域の2本柱で中期的に伸ばしていく」ことをDeNAグループとして注力している。

 そのなかで、ヘルスケアにおいては2014年から事業展開をスタート。「健康寿命の延伸」と「医療費の適正化」にこだわることで「生活者の幸せな時間を延ばすことができるような取り組みを続けている」(瀬川氏)。

 さらに、ゲーム・エンターテインメントで培ったノウハウを生かしたヘルスケアサービスを提供することで、生活者の健康増進・行動変容をサポート。楽しみながらサービスを継続利用してもらうことで、結果的に健康意識の向上や予防などにつなげてもらう。さらに、蓄積されたデータをアカデミア・製薬企業と利活用し、創薬などを通じて「より多くの人の健康増進や医療費の適正化に寄与することを目指す」と瀬川氏は解説した。

DeNA ヘルスケア事業本部 副本部長でDeSCヘルスケア 代表取締役社長の瀬川翔氏(写真:近藤 寿成、以下同)
DeNA ヘルスケア事業本部 副本部長でDeSCヘルスケア 代表取締役社長の瀬川翔氏(写真:近藤 寿成、以下同)
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 具体的な取り組みとしては、ヘルスケアエンターテインメントアプリ「kencom」を紹介した。kencomは、行動変容を実現するための多彩な機能を搭載している点が大きな特徴となる。DeNAでは、サービスにおける「高い継続率」をもっとも重要な指標と捉えており、kencomはさまざまな機能の効果によって「4年以上経過後も60%水準をキープしている」(瀬川氏)という。また、アプリではウォーキングイベントなども実施しているが、イベント期間中は普段歩く習慣のない人の歩数が「2倍に増加する」といった結果も出ているそうだ。

 ただし、多様な課題が存在するヘルスケアの分野では「1社で出来ることは限られる」ことから、瀬川氏は「さまざまな企業とのパートナーシップによる課題解決」の重要性を指摘。これまでのパートナーシップの事例として、データホライゾンとの自治体や健保保険組合向けの事業展開や、法研との保険事業や健康増進を含めた取り組みなどを紹介した。

 今回のMDVとの業務提携もまさにパートナーシップの一環であり、瀬川氏は「さまざまな形で課題解決に取り組んでいきたい」と語る。さらに、業務提携によるデータ利活用の意義や現状における課題解決のポイントとして、「生活者の行動変容をサポートするエビデンスの創出、サービス還元」と「皆保険制度・高齢先進国の日本だからこそできる取り組みへのチャレンジ」という2点を挙げた。

 なお、kencomでは保険者(健保/国保/後期高齢者)由来となる808万人のデータ(2022年4月時点)を有しており、「保険者制度ごとに被保険者の属性は異なるため、それぞれに特徴を意識しながら分析をデザインする必要がある」と瀬川氏は説明する。さらに、これまでは「健保のデータを十分に分析できた」と振り返る一方で、今後は高齢者が一層増えてくることから「国保や後期高齢者のデータを活用しながら、高齢者の追跡調査による実態把握や課題解決も進めていく」との考えを示した。

 また、各データを「追跡性」「重症度」「速報性」で分類した場合、保険者データは「保険者が健康な時もそうでない時もレセプトを通じてデータが入ってくるため、病気になる前の活動も含めた追跡研究や治療効果のチェックが可能になる」(瀬川氏)という意味で、追跡性が高いといえる。逆に、病気の重症度をチェックしたい場合は「医療機関のさまざまな検査データなどを見ないとわからないことも多い」ことから、MDVが蓄積する医療機関の患者データの方が明らかに優位性がある。さらに、調剤のデータはすぐにデータを確認できることから、「マーケティングなどで速報性が求められる際には、調剤の患者データを活用するケースが多い」と瀬川氏は補足した。