新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による閉塞した状況を打破するため、ポジティブなアイデアを発信できないものか──。そんな思いからスタートした「Healthcare Innovation Hub(通称:InnoHub)」とAI Samuraiによるオンラインアイデアソンの第2弾が、2020年5月14日に開催された(第1弾の記事はこちら)。

 InnoHubとは、2019年7月に経済産業省が設置した相談窓口。数多くのサポーター団体/アドバイザーが参加しており、InnoHubがベンチャーや研究機関との橋渡しをしながらヘルスケアビジネス全体を盛り上げていくことを狙いとする。AI SamuraiはAI特許審査シミュレーションシステムを展開するITベンチャーで、アドバイザーとしてInnoHubに携わっている。

 本アイデアソンは、企業・団体、大学、学生、個人などが対象だ。参加者属性の制約を取り払い、まずは広くアイデアの種を吸い上げるのが特徴である。オンラインならではのスピード感も相まって、かなりの応募数があったという。そのため、2020年4月23日に行われた第1弾に続いての追加開催となった。

上下の空間を使いソーシャルディスタンスを狭める

 今回は、とりわけ個人の豊かな発想が目立った。例えば、フルフェイス型フェイスガード兼マスク。新型コロナでは飛沫感染が大きなリスクとなるが、頭上はウイルスの浮遊が少ないと考え、上部へと筒型に伸びる空気の取り込み口を付けた。素材はポリ塩化ビニール(PVC)とし、コストを抑える。

頭から被るフェイスガード兼マスク(写真:オンライン画面のキャプチャーを編集部が一部加工、以下同)

 「頭からビーチボールを被っているイメージ。より高い場所から空気を吸って、顎の下から地面に向けて吐き出す。上から下に一定の気流の状態を保つことで、ウイルス感染リスクを下げられるのではないか」(発表者)。さらにビジネスアイデアとして、航空機内での利用を提案。このマスクを使うことでソーシャルディスタンスを狭め、より多くの座席数を確保できるようになればと話した。

 重症化リスクを事前に予測するAI診断支援アプリの提案もあった。新型コロナは自覚症状がないまま自宅で重症化し、手遅れになってしまうケースが多発している。「こうした状況を防ぐために、海外、国内の臨床データを機械学習して重症化リスクを把握するシステムを思いついた。もともと基礎疾患を抱える患者の傾向も調べたい。結果はスマホアプリで確認する」(発表者)。

重症化リスクを事前に予測するAI診断支援アプリ

 新型コロナは目の充血に関連するとの報告もあるため、「スマホで自分の目を撮影して機械学習データと比較する機能も付加したい」とも。くしくも先日、医療ベンチャーのアルムが提供する救命・救急補助アプリ「MySOS」に、米国・中国を中心とした臨床データに基づく予測モデルによる重症化リスク予測機能が付加された。ヘルステックの文脈で同様のアプローチが浸透すれば、悲劇を減らせる可能性もありそうだ。

額に貼る「検温シール」の提案も

 手軽かつすぐに実現しそうなアイデアとして提案されたのが、額にシールを貼って熱があるかどうかがひと目でわかる「検温シール」。青いシールを貼って外出し、37.5度を超えると赤に変化する。果物に貼ってある示温印刷のシールから着想したそうで、不特定多数の人の体温を可視化でき、何よりコストが安いメリットがある。学校や保育園・幼稚園などでの子どもの体温管理、公共施設など検温が義務化された場所での活用を想定する。

額に貼る検温シール

 新型コロナで自宅待機を余儀なくされ、多くの人がスマホ依存型の生活を送っているが、これは肩こりや首の痛みの原因となる。発表者である現役の整形外科医が考案した肩こり解消アプリ「Easy Shoulder」は、プロによる痛みに対する適切なアドバイス、そしてゲーム的要素を採り入れて運動を継続させる。

 「痛みを取るために正しい知識を提供し、リアルタイムで運動に対するフィードバックを行う。痛みが落ち着いてきたら、習慣化できるようにゲームの楽しさによってサポートする。最終的な目標はディスプレイを超えて理学療法士やヨガインストラクターとリアルにつながること。インストラクターとのマッチングや、友だちづくりにも広げていければ」(発表者)。

 企業・団体の参加組からの提案もあった。ビジネスアライアンスは、ミリ波を応用した非接触のバイタルセンサー開発を進めており、このセンサーを見守りやマーケティング、スポーツレッスンに活用したいと考えている。担当者は「現状、非接触センサーはマイクロ波が主力だが、バイタルデータは静止体しか測定できない。しかし、ミリ波であれば複数の動体を対象としてバイタルデータとモーションデータを取得できる。それが利点だ」と説明した。

 こうした特性を踏まえ、現時点での実現性は低いとしながらも、「公共交通機関と連携して乗車時、降車時にバイタルチェックを行い、バイタル異常者の追跡ができるようになるかもしれない」と述べ、新たなテクノロジーによる新型コロナ対策に期待を込めた。

 Community of Thingsは、加湿器にアルコール消毒液を噴射する拡張機能を付加し、店舗や施設規模に応じた除菌対策を披露した。店舗や商業施設は、当然ながら需要があるほど3密の状態になる。ならば3密になることを前提として捉え、感染を予防すればいいと考えたという。

加湿器を利用した、3密前提の感染予防

 オフィスビルや学校、不特定多数が往来する商業施設やエンタメ施設、小型店舗の3パターンに分けてユースケースを紹介。例えば商業施設では「人感センサーで人の動きをチェックして、アルコール消毒液と水蒸気を交互に噴射。1回で終わるのではなく、小刻みに施設を除菌する」と解説した。

 繁盛していた知人の居酒屋が窮地に追い込まれ、そうした飲食店を救いたいとの気持ちからアイデアをひらめいた。「3密は悪魔の言葉のように言われるが、3密こそが経済復興の証。この苦難を乗り越えていきたい」と発表者は力強く結んだ。

(タイトル部のImage:出所はHealthcare Innovation Hub)