停滞するロコモ認知度

 同学会が今回、スマホによる測定ツールを開発した背景には、スマホを多用している若い世代でロコモの認知度が低いこともある。厚生労働省は、2012年に策定した10カ年計画「健康日本21」第2次計画の中で、2022年には「ロコモを認知している国民の割合」を80%まで増加させる目標を掲げているが、2021年時点は44.6%で目標達成は難しそうな状況だ。2012年時点で17.4%だった認知度は2015年には44.4%まで上がったものの、その後はほぼ横ばいの状態が続いている。世代間の差も大きく50代以上では50%を超えているが、20~40代では30%台と低迷している。

 「ロコモは20~40代には関係ないかというとそんなことはありません」と大江氏。三菱地所と一般社団法人ラブテリによる「まるのうち保険室」が2016年、東京・丸の内周辺で働く20~30代の女性352人を対象にロコモ度テストを実施した結果では、3人に1人がロコモになっていることが明らかになった。この調査では、全体の30%が「ロコモ度1」(移動機能の低下が既に始まっている状態)、4%が「ロコモ度2」(移動機能の低下が進行している状態)だった。そのまま移動機能の低下を放置すれば、将来早い段階で要支援や要介護になる恐れがある。

 「若い女性は、やせ願望を持つ人が多いのですが、やせの女性は、骨粗しょう症、糖尿病、妊娠・出産時の早産や低出生体重児などの健康リスクが高いことが知られています。骨粗しょう症はロコモを進行させる重大な疾患なので、若い女性が骨粗しょう症にならないことが非常に大切です。また、男性の30代と40代を比較すると、40代の肥満の割合が10ポイント以上増えていると共に、実は20~40代は、50代以上と比較して、運動習慣がある人が少ないという事実もあります。コロナ禍の影響で、全世代で運動機会が減少していますが、20~40代の人にロコモへの関心を持ってもらうことは非常に重要だと考えています」と大江氏は強調した。

 整形外科などの臨床の場でも活用されている「ロコモ度テスト」を正式に実施するには器具が必要だが、「ロコモ年齢」は、スマホがあれば、1人でいつでもどこでも手軽に測定できる。同学会は3カ月に1度の測定を推奨している。繰り返し計測すれば、運動や生活習慣の改善によって、足腰の健康度が改善したかどうかの確認も可能だ。今後は、利用者のデータを蓄積してプログラムの機能改善を進め、公共性を持ったデータとして分析し、啓発にもつなげていく予定だという。人間ドックなどで利用できるバージョンの開発にも取り組んでおり、自治体などでの活用も想定している。

 「ロコモ年齢を通して様々な組織と連携し、社会課題である健康寿命延伸の解決に取り組みたいと思っています」と大江氏は語った。企業やスポーツ施設、自治体などでロコモ年齢を判定する機会が増えれば、幅広い年代で移動の健康度が上がる可能性もある。

(タイトル部のImage:ロコモ チャレンジ!推進協議会)