日本整形外科学会は、歩行など移動機能の健康度を示す”ロコモ年齢”をスマホで手軽に測定できるツールを開発した。2022年5月11日に開催したオンライン記者発表会で詳細を説明した。ロコモ(ロコモティブシンドローム:運動器症候群)は、足腰など運動器の障害によって移動機能が低下した状態のことで、同学会が2007年に提唱し始めた概念だ。要介護にならずに健康寿命を保つには、ロコモに早く気づいて足腰の老化を防ぐことが重要だが、これまでロコモになっているかどうかを自分で測るのは難しく、簡便に知る方法の開発が課題だった。

 この課題を解決するために今回開発されたのが、「ロコモ年齢」だ。日本整形外科学会が2010年に立ち上げた「ロコモチャレンジ!推進協議会」と博報堂DYグループの手による「誰でもどこでもいつでもロコモかどうかを調べることができる」移動機能の健康度測定ツールは、20歳以上の成人なら、誰でも無料で利用できる。

 ロコモチャレンジ!推進協議会委員長でNTT東日本関東病院長の大江隆史氏は、「スマホで手軽にロコモ年齢を測れるようにすることで、皆さんにご自身の足腰の健康状態を認知してもらい、適切な運動や栄養コントロールの意識を高め、足腰の健康を維持・改善するための行動変容を促したいと考えています。高齢課題先進国の日本で生まれたロコモを予防、改善していただくことで、人生の最期まで生き生きと暮らせる方を増やしたい」と話した。

ロコモチャレンジ!推進協議会委員長の大江隆史氏(写真:オンライン会見のキャプチャー)
ロコモチャレンジ!推進協議会委員長の大江隆史氏(写真:オンライン会見のキャプチャー)
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 「ロコモ年齢」を利用するためには、専用サイト(https://locomo-joa.jp/locomo-age/)にあるQRコードをスマホで読み取りユーザー登録を行う必要がある。その後、(1)「ロコモ25」、(2)「立ち上がりテスト」、(3)「2ステップテスト」に回答していく。(1)の「ロコモ25」では、最近1カ月の体の痛みや日常生活で困難なことがあったかなど25項目の質問に答える。(2)の「立ち上がりテスト」は、高さ10~40センチの台に座った状態から、両脚、または片脚で立ち上がれるかどうかを確認する。(3)の「2ステップテスト」では、できるだけ大股で2歩進み、両足を揃えてふらつかずに立てたときの歩幅を測定し、下肢の筋力やバランス能力、柔軟性を含めた歩行能力を総合的に評価する。

 これら3つのテストによってロコモ年齢が判定され、結果に応じたアドバイスを受けられる。パソコンなどスマホ以外のデバイスからはアクセスできない。

 日本整形外科学会は、このツールの開発に当たって、1人で歩行できる全国の20~89歳の男女1万人を対象として、医療機関で「ロコモ度」を診断し、年齢と生活習慣の関係を調査した。判定されるロコモ年齢は、同調査で十分なデータが得られた8681人の結果を基に割り出されたもので、例えば暦年齢が50歳でも、「20歳以下」と出ることもあれば、「89歳」と判定されることもあるという。

「ロコモ年齢」判定ツールの画面イメージ(出所:プレスリリース)
「ロコモ年齢」判定ツールの画面イメージ(出所:プレスリリース)
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停滞するロコモ認知度

 同学会が今回、スマホによる測定ツールを開発した背景には、スマホを多用している若い世代でロコモの認知度が低いこともある。厚生労働省は、2012年に策定した10カ年計画「健康日本21」第2次計画の中で、2022年には「ロコモを認知している国民の割合」を80%まで増加させる目標を掲げているが、2021年時点は44.6%で目標達成は難しそうな状況だ。2012年時点で17.4%だった認知度は2015年には44.4%まで上がったものの、その後はほぼ横ばいの状態が続いている。世代間の差も大きく50代以上では50%を超えているが、20~40代では30%台と低迷している。

 「ロコモは20~40代には関係ないかというとそんなことはありません」と大江氏。三菱地所と一般社団法人ラブテリによる「まるのうち保険室」が2016年、東京・丸の内周辺で働く20~30代の女性352人を対象にロコモ度テストを実施した結果では、3人に1人がロコモになっていることが明らかになった。この調査では、全体の30%が「ロコモ度1」(移動機能の低下が既に始まっている状態)、4%が「ロコモ度2」(移動機能の低下が進行している状態)だった。そのまま移動機能の低下を放置すれば、将来早い段階で要支援や要介護になる恐れがある。

 「若い女性は、やせ願望を持つ人が多いのですが、やせの女性は、骨粗しょう症、糖尿病、妊娠・出産時の早産や低出生体重児などの健康リスクが高いことが知られています。骨粗しょう症はロコモを進行させる重大な疾患なので、若い女性が骨粗しょう症にならないことが非常に大切です。また、男性の30代と40代を比較すると、40代の肥満の割合が10ポイント以上増えていると共に、実は20~40代は、50代以上と比較して、運動習慣がある人が少ないという事実もあります。コロナ禍の影響で、全世代で運動機会が減少していますが、20~40代の人にロコモへの関心を持ってもらうことは非常に重要だと考えています」と大江氏は強調した。

 整形外科などの臨床の場でも活用されている「ロコモ度テスト」を正式に実施するには器具が必要だが、「ロコモ年齢」は、スマホがあれば、1人でいつでもどこでも手軽に測定できる。同学会は3カ月に1度の測定を推奨している。繰り返し計測すれば、運動や生活習慣の改善によって、足腰の健康度が改善したかどうかの確認も可能だ。今後は、利用者のデータを蓄積してプログラムの機能改善を進め、公共性を持ったデータとして分析し、啓発にもつなげていく予定だという。人間ドックなどで利用できるバージョンの開発にも取り組んでおり、自治体などでの活用も想定している。

 「ロコモ年齢を通して様々な組織と連携し、社会課題である健康寿命延伸の解決に取り組みたいと思っています」と大江氏は語った。企業やスポーツ施設、自治体などでロコモ年齢を判定する機会が増えれば、幅広い年代で移動の健康度が上がる可能性もある。

(タイトル部のImage:ロコモ チャレンジ!推進協議会)