クルマで言うところの「オートクルーズ」とも言えるロボット麻酔システムが、2022年にも登場しそうだ。全身麻酔に用いる鎮静・鎮痛・筋弛緩薬の注入量を、すべて自動的に制御するシステムである。

ロボット麻酔システムの全体イメージ(出所:福井大学)

 福井大学 医学部 麻酔蘇生学 教授の重見研二氏、国立国際医療研究センター 麻酔科 診療科長の長田理氏、日本光電 呼吸器・麻酔器事業本部 専門部長の荻野芳弘氏らの共同研究チームが、2019年4月16日に会見を実施。ロボット麻酔システムの実用化を目指し、患者60人規模の臨床研究に着手したことを発表した。2020年度に医師主導治験を実施し、2021年度以降に薬機法申請を行う。2022年度の製品化を目指す。

自動的に鎮静・鎮痛・筋弛緩剤を制御する

 全身麻酔は、鎮静・鎮痛・筋弛緩の3要素を別々の薬で行う。鎮静剤は患者を眠らせること(意識消失)、鎮痛剤は術中の痛みを取り除くこと、筋弛緩剤は術中の患者の動きを止めるとともに術野を確保する目的がある。

 通常は、麻酔科医が心拍数、血圧、脳波などの生体情報から患者の状態を確認・評価しながら、それぞれの薬の注入量を調整している。これに対してロボット麻酔システムは、患者の状態確認・評価に基づいて、自動的に鎮静・鎮痛・筋弛緩剤を制御するものだ。

ロボット麻酔システムを使用した臨床研究の様子(出所:福井大学)

 具体的には、筋弛緩状態と鎮静度を含めた生体情報を生体情報モニターに集約し、そのデータをロボット麻酔システム(医療機器プログラム)に転送。そのデータを基に処理アプリケーションが3つの薬剤の流量制御を行い、シリンジポンプ(点滴静脈注射ポンプ)に指示を送り、麻酔薬の至適濃度に自動調整する仕組みである。

「麻酔科医の業務負担が劇的に軽減される」

 会見で重見氏は、ロボット麻酔システムのこうした機構を「クルマのアクセルとブレーキを自動制御するオートクルーズのようなイメージ」と言い表した。高速道路などでの巡航運転が楽になるように、「麻酔科医の業務負担が劇的に軽減されると考えている」(同氏)。

会見に臨む共同研究チームのメンバー(写真:Beyond Health)

 麻酔科医の生体情報の目視、手動によるシリンジポンプ操作などにおけるヒューマンエラーを低減でき、手術中の患者の状態管理に集中できるようになる。このため、医療安全の向上も期待できるという。

 全身麻酔の手術件数は年々増加傾向にある一方、麻酔専門医は全国的に不足しているとされる。重見氏は、「麻酔科医の働き方改革と医療の質の担保という重要な2つの課題を、ロボット麻酔システムが解決してくれるだろう」と強調した。

 目標とする60症例(自動制御群30例、手動群30例)の臨床研究は福井大学と国立国際医療研究センターで実施しており、会見時で既に20症例程度が終了。2019年9月末までに全症例を行い、2020年度には両病院で医師主導治験を実施する予定だ。2021年度以降に日本光電が薬機法申請を行い、翌年度には販売したい意向という。

 並行して、ロボット麻酔システムを安全に使用するための認定制度や教育制度を、日本麻酔科学会とのコンセンサスを得ながら検討・構築していくことも明らかにした。

(タイトル部のImage:ロボット麻酔システムのアプリケーション画面、出所は福井大学)