「ナノマシン造影剤」でがん診断にも応用可能

 さらに、がん診断にもがん病巣にBPAを集める仕組みは応用可能とみられている。BPAに放射性のフッ素を結合した18F-PBAを使う仕組みもできている。LAT1によって18F-PBAを取り込ませてPETスキャンでBPAの分布を調べると、がんの有無を判断できるからだ。今後、この技術を進めていくことで、がん診断の精度をより高めていける可能性もある。ナノマシン技術を応用して放射線画像において正常部分と異常部分のコントラストをはっきりさせる薬剤となるので「ナノマシン造影剤」と西山氏は説明する。

東京工業大学科学技術創成研究院 化学生命科学研究所教授の西山氏(写真:Beyond Health)

 「低磁場のMRIは感度が低く微小がんの検知が困難だが、ナノマシン造影剤を使うことで高感度化することが可能。今後、微小ながんを検出可能となる可能性があるほか、悪性度の高いがんで高信号を判別できる」と西山氏はみる。

 このようながん細胞のアミノ酸を取り込む仕組みなどを活用して、がんを標的に治療したり診断したりする技術はこれまでの治療の欠点を補う面もある。がん治療において標的を狙う治療としては、「抗体」と呼ばれる体が外敵を排除するために備えている仕組みを応用する方法が知られている。免疫グロブリンと呼ばれるタンパク質が、異常なタンパク質に結合して、機能を失わせる仕組みになる。

 抗体を使った仕組みは、がん治療において狙えるターゲットが限定的である課題があった。西山氏は、「抗体を使った治療の課題は、HER2、EGFR、PD-1など少数のタンパク質を標的にしている。当てはまるタンパク質が少ないがん細胞では標的にしづらい。それに対して、LAT1のようなアミノ酸を取り込みやすい性質や、酸性度の違いを応用するなど、新しい狙い撃ちの技術が進歩している」と説明する。

 こうした狙い撃つための微小な分子を調整して作り出す仕組み「ナノマシン技術」の応用が、がん治療のほか、脳神経疾患など幅広く進む。今後、さらなる応用が進む可能性がある。


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