ケーブルテレビ大手のジュピターテレコム(以下、J:COM)が、自社のケーブルテレビインフラを利用したオンライン診療サービス「J:COM オンライン診療」を2021年7月1日から開始する。J:COMはインフラや接続機器を担当し、オンライン診療サービスはスタートアップ企業のMICINによる「curon(クロン)」を採用。ケーブルテレビ経由によるオンライン診療は日本初だという。

 2020年の新型コロナウイルス感染症により、日本におけるオンライン診療は要件緩和が進んだ。一方で、患者側の環境とITリテラシーが整っておらず、その現実が壁となって立ちはだかっている。J:COM オンライン診療はスマートフォンやタブレット、PCの操作に不慣れな高齢者をおもなターゲットとし、誰しもが使えるテレビとテレビリモコンを通じてオンライン診療を受けられるようにしたものだ。

 2021年5月31日には、千葉⼤学医学部附属病院 患者⽀援部 部⻑ 特任准教授 地域スマート医療コンソーシアム理事⻑ ⽵内公⼀氏、MICIN 代表取締役 原聖吾氏をゲストに迎えてオンライン発表会を開催した。

千葉⼤学医学部附属病院 患者⽀援部 部⻑ 特任准教授 ⽵内公⼀氏(出所:オンライン発表会のキャプチャ)
千葉⼤学医学部附属病院 患者⽀援部 部⻑ 特任准教授 ⽵内公⼀氏(出所:オンライン発表会のキャプチャ)

 まずは竹内氏が「オンライン診療の普及には患者に届けるラストワンマイルが重要。ITリテラシーの高さが重視されるようでは普及しない」と指摘。ほとんどの家にあるテレビを活用して患者が障壁を受けない環境を作るために「地域スマート医療コンソーシアム」を2021年5月18日に設立したばかりだ。本コンソーシアムにはJ:COMや日本調剤、KDDIなどが参加している(関連記事:「地域スマート医療コンソーシアム」設立、医療・CATV事業者など13法人)。

 「今すべきは、患者が困らないようにすること。そのためにも既存の資源を活用して、いち早く整備するのが理想的だ。地域スマート医療コンソーシアムでは、地域生活に根ざし、医療にも通じたIT人材を確保したい。その上で患者に対してきめ細かい支援ができる組織を作っていく」(竹内氏)

MICIN 代表取締役 原聖吾氏(出所:オンライン発表会のキャプチャ)
MICIN 代表取締役 原聖吾氏(出所:オンライン発表会のキャプチャ)

 続くMICINの原氏は「2020年8月の調査では、オンライン診療の実際の利用者は60代以下が9割以上を占めている」とし、ほぼ高齢者が利用していない現状を明らかにした。こうした事情から「J:COMとの協業では慣れ親しんだテレビの活用によって、ネットサービスを使い慣れていない高齢者にオンライン診療を広めていきたい」と期待を寄せた。

 J:COMは全国5大都市圏でサービスを提供し、加入世帯数は556万、接続世帯数は1398万を数える。興味深いのは加入者の年代割合で、59歳以下と60歳以上がちょうど半分ずつだという。それを踏まえるとJ:COM オンライン診療との親和性は高い。

ジュピターテレコム 代表取締役社長 石川雄三氏(出所:オンライン発表会のキャプチャ)
ジュピターテレコム 代表取締役社長 石川雄三氏(出所:オンライン発表会のキャプチャ)

 ジュピターテレコム 代表取締役社長 石川雄三氏は「地域密着の手厚い人的サポート体制が特徴の1つ」と述べ、同社が「地域社会への貢献」をミッションに掲げていることを紹介した。60歳以上に聞いたオンライン診療の受診意向の独自調査では、「利用したことはないが、今後利用したいと思う」と回答した割合が52.8%となり、シニア世代の関心の高さがうかがえる結果となった。また、2019年9月〜2020年2月にかけて東京都内、福岡市内で行なった、慢性疾患を抱える60歳以上の患者に対するテレビを使ったオンライン診療の実証実験では、47%が「とても満足」、20%が「やや満足」と高く評価された。

 「これらの結果から、事業化しても皆さんに喜んでいただけると確信した。J:COMではオフラインのフィジカルによる導入サポートとテレビ画面での受診を患者に提供するOMO(Online Merged with Online)によって課題を解決する」(石川氏)

今年度内にはすべてのJ:COMエリアで展開予定

 サービス内容はシンプルで、利用料金は1回につき330円(以下、価格は税込)。既存のJ:COM加入者はセットトップボックス(STB)の「J:COM LINK」をそのまま利用できるが、未加入者は月額528円でオンライン診療専用のSTBをレンタルする必要がある。Webカメラは設置・設定費用込みで7678円。デリケートな内容を扱うだけにセキュリティーにも配慮し、Webカメラを専用サーバーに接続するなどして乗っ取りを防止する。

J:COM オンライン診療の利用イメージ。操作はリモコンで行なう。高齢者にとっては大画面でやり取りできる点もありがたい(出所:オンライン発表会のキャプチャ)
J:COM オンライン診療の利用イメージ。操作はリモコンで行なう。高齢者にとっては大画面でやり取りできる点もありがたい(出所:オンライン発表会のキャプチャ)

 当初はオンライン診療のみでスタートする。第一弾は東京都杉並区、練馬区、板橋区のほか、埼玉県、千葉県の一部となるが、今年度内にはすべてのJ:COMエリアで展開予定だ。今後は地域スマート医療コンソーシアムと連携しながら、オンライン服薬指導、健康相談、病院の送迎に関するMaaS、見守り、モニタリングなど医療・健康に関わるサービスの拡充を視野に入れる。同社にとっては未知の領域への挑戦となるが、石川氏は「地域医療の持続的な発展に貢献する」と決意を新たにした。

(タイトル部のImage:出所はJ:COM)