オムロン ヘルスケアは、AI(人工知能)解析技術と家庭計測データを用いた京都大学との共同研究「健康医療AI講座」(以下、共同研究講座)を2021年6月1日に京都大学構内に設置した。これに先立ち、オンライン記者発表会を同年5月27日に実施した。

 オムロン ヘルスケアは現在、脳卒中や心筋梗塞など、高血圧が原因で発症する重篤な脳・心血管疾患の発症(イベント)をゼロにすることを目指している。しかし最近の状況を見てみると、世界の死亡リスク要因では「高血圧」が女性で1位、男性で2位という上位にある。また、日本人の死因では2位が「心疾患」、3位が「脳血管疾患」となっているほか、要介護の原因でも「脳血管疾患(脳卒中)」が1位になっている。

 また、近年の日本人全体の血圧の変化と病死者数の推移を見てみると、血圧値は年々下がっている一方で、脳血管疾患による死者数は下げ止まっており、心疾患はむしろ増加傾向にある。これらのデータから、オムロン ヘルスケア 開発統轄本部 技術開発統轄部 統轄部長の濱口剛宏氏は「脳・心血管疾患の予防に対して高血圧のコントロールはもちろん重要だが、それだけでは重篤なイベントはゼロにならない」と指摘する。

オムロン ヘルスケア 開発統轄本部 技術開発統轄部 統轄部長の濱口剛宏氏(出所:オムロン ヘルスケア)

 このような背景から、今回の共同研究講座では2つの課題にフォーカスして研究を進めていくという。第1は「血圧コントロール不良の改善」である。高血圧治療を受けている患者の約半数は「血圧を上手くコントロールできていない」ことから、オムロン ヘルスケアは「個別に最適化されたアプローチが必要である」と考え、その実現に対して「AIの技術を用いてトライしていく」(濱口氏)。

 第2は「イベント発症の早期発見」である。高血圧治療においては、血圧を良好にコントロールできていても「イベントはゼロにならない」という現実がある。そこでオムロン ヘルスケアは、「AIによってイベントの予兆を早期に捉えて治療する」(濱口氏)ことでイベントをゼロにしていく考えだ。

 これらを踏まえて、共同研究講座では「革新的なバイタルデータを活用した、パーソナライズ血圧改善AI開発」と「毎日の家庭計測データに基づいたイベント予兆の検知AI開発」の2つを研究テーマに掲げる。

 パーソナライズ血圧改善AI開発では、高血圧の要因が「生活習慣や個人の特性などによって様々に異なる」という点に着目。日中や夜間の血圧をいつでもどこでも計測できるウエアラブルな血圧計を開発し、それらのデバイスとAIを用いて生活習慣と日々の血圧の関係性をひもとくことで「個々人に最適な服薬治療や生活習慣の改善」(濱口氏)を見つけていく。

 イベント予兆の検知AI開発では、さまざまなバイタル情報の日々の変化をAIによって解析することで、イベントの予兆につながる微細な変化を検知。イベントが発症する前に治療することで「イベント発症の抑制につなげていく」(濱口氏)。