GEヘルスケア・ジャパンは、「聴診器」のように持ち運べるポケットサイズの高性能超音波診断装置「Vscan Air」を発表した(関連記事:GEヘルスケアのポケットエコー「Vscan」が新たな進化)。同年6月に開催した記者発表会では、新製品の説明に加えて、医師による講演やタレントの堀ちえみさんを招いたパネルディスカッションなどが実施された。本記事では、医師による講演やパネルディスカッションを中心にお伝えする。

 発表会には、医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長の佐々木淳氏と自治医科大学 臨床検査医学 講師、救急医学講座(兼任)の亀田徹氏が登壇。まずは佐々木氏が「ポケットエコーで変わる在宅医療・訪問診療」と題して、在宅医療や訪問診療におけるポケットエコーのインパクトを紹介した。

 佐々木氏によれば、在宅医療をしっかり機能させるためには、患者の「日々の健康管理」や「急変時の対応」に加えて、「治療方針の決定」や「(可能な限り)病院依存の脱却」などが求められるという。しかし、これまでは限られた条件の下でしか患者を診断できなかったため、医師の経験とスキルに頼る面も多かったそうだ。このような背景から、佐々木氏はVscan Airを「強力な武器」と表現。Vscan Airのようなポケットエコーが「医師の診療能力を大きく強化し、それが患者の利益や医療資源の適正利用、さらには社会保障費の負担軽減にも貢献できる」と期待する。

医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長の佐々木淳氏(写真:近藤 寿成、以下同)
医療法人社団 悠翔会 理事長・診療部長の佐々木淳氏(写真:近藤 寿成、以下同)
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 在宅医療でメインとなる日々の健康管理では、ポケットエコーの出現によって「疾患の医学管理が大きく変わった」と佐々木氏はいう。例えば、循環器疾患や消化器疾患、泌尿器疾患、生殖器疾患、内分泌疾患の検査が可能になったことに加え、近年の高性能化によって呼吸器疾患や筋骨格疾患、皮膚疾患、脳神経・感覚器疾患といった「従来では考えられなかった領域でも、診断にエコーが活用されるようになった」と説明する。さらに、Vscan Airのような小型かつ非侵襲なデバイスの活用範囲は「今後さらに広がる」と予想する。

 また佐々木氏によれば、ポケットエコーがあれば患者の急変時に「90%以上の疾患を在宅診断で対処できる」とのこと。在宅での処置においても、「これまで以上にさまざまな処置を、スマートかつ安全に実施できるようになった」ほか、予後診断や治療方針の決定にも役立っているそうだ。

 これらポケットエコーの有用性から、佐々木氏はVscan Airをプライマリケア領域の「新しい聴診器」と形容する。そして、Vscan Airのようなポケットエコーが「救急搬送・緊急入院の減少」「患者QOLの向上」「社会保障費の削減」などにも貢献していけば、「これからの在宅医療のみならず、一般的な外来診療までも大きく変えていくはず」として講演を終えた。

自治医大の亀田氏が指摘するのは…

 一方、リモートで参加した亀田氏は、「コロナ禍における最新テクノロジーを用いた遠隔超音波システム」について紹介した。亀田氏いわく、医療資源の偏在は以前から続くものだが、現在はコロナ禍によって「通常医療への影響は甚大になっている」そうだ。そのため、最近は「遠隔医療・オンライン診療への期待」が高まっており、実際に多くの医療施設で導入が進んでいる。

自治医科大学 臨床検査医学 講師、救急医学講座(兼任)の亀田徹氏
自治医科大学 臨床検査医学 講師、救急医学講座(兼任)の亀田徹氏
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 このような背景にあって、ワイヤレスに画像をスマートフォンに送ることができ、その画像を医療従事者が共有して医療に役立てられるVscan Airを、亀田氏は「非常にありがたい製品」と高く評価。また、全身の検査に対応できる小型の医療機器は、Vscan Airのような「ポケットエコー以外に存在しない」と補足する。

 遠隔超音波医療を行うにあたって、実際に診断する医師は超音波の専門家だが、遠隔地でエコーを実施する人は「慣れた検者」の場合もあれば、経験の少ない「不慣れな検者」の場合もあり得る。そのため、この不慣れな検者と「どのようにやり取りするか」が今後の大きなテーマとなると亀田氏は考える。

 ちなみに、10年ほど前から肺炎や心不全にもエコーが用いられるようになってきたことから、COVID-19の診療においてもエコーが活用されているそうだ。そして、Vscan Airのような小型かつワイヤレスなポケットエコーは簡単にカバーをかぶせることで「感染対策にも十分に対応できる」(亀田氏)ため、今後の活用が期待される。

 遠隔超音波教育においても、基本的に指導医が不慣れな学習者と一緒に実施することになる。そのため、コロナ禍によって対面指導が難しい状況から「遠隔超音波教育への期待は大きい」ものの、こちらでも「どのようにインストラクションしていくかが課題だ」と亀田氏は指摘した。

 将来、遠隔超音波医療は「さらに進化を遂げる」と予測する亀田氏は、スマートフォンのような「普段から使い慣れたデバイスのみでエコーを実施できるような未来」を熱望する。また教育の現場においても、1人の指導者が複数の受講生に対して遠隔超音波教育を実施できるようなシステムの構築を望んだ。

「人材育成」との両輪がカギに

 発表会の最後には、これまでの登壇者に加えて、歌手でタレントの堀ちえみさんをゲストに迎えたパネルディスカッションが実施された。堀さんは2019年にステージ4の舌がんと診断され、悪性腫瘍を取り除くために舌の6割近くを切除する大施術を受けた。また、それ以前にもいくつかの難病を患ってきたことから、「エコーには本当にお世話になってきた。エコーには命を助けてもらったといっても過言ではない」と実感を込めて振り返る。

歌手でタレントの堀ちえみさん
歌手でタレントの堀ちえみさん
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 このような自身の体験から、今後も踏まえて「在宅医療でのエコー検査の未来」について堀さんが尋ねると、佐々木氏は「Vscan Airのようなデバイスがあれば、すでにエコーで何でもできるはず」と回答。ただし、検査の精度は検者によって変わることから「人材育成」の重要性とその遅れを指摘し、「遠隔に対応できる超音波システムや医療、教育の仕組みも必要だ」と付け加えた。

 亀田氏もこの意見に賛同して「機材の発展と教育を両輪で考えなければならない」と指摘した。加えて、患者と医療従事者、そして医療機器メーカーがタッグを組んで「優れた超音波診断システムと医療の展開を目指してほしい」とまとめた。

 GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長兼CEOの多田荘一郎氏は、堀さんの話を聞くなかで、自社製品が「早期診断や早期治療に貢献することの大切さ」を改めて実感。さまざまな技術との連携によって「より多くの患者を救えるように進化させていく」とともに、自社の製品やサービスが「日本の明るい未来を灯せるようにしていく」と述べた。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
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(タイトル部のImage:近藤 寿成)