全国5市町が連携した大規模なヘルスケアプロジェクトが、2019年7月に始動する。取り組む自治体は、山口県宇部市、岩手県遠野市、京都府八幡市、鹿児島県指宿市、埼玉県美里町である。

 いずれも隣接しない飛び地の自治体だが、連携して地域住民の健康増進に取り組む。今後、5年間で地域住民2万人の参加、年間12億円の医療費・介護給付費の抑制に挑む。

 2019年6月12日に実施された合同記者会見では、5市町代表の宇部市長 久保田后子氏が挨拶。「日本の南北を結ぶ大規模な取り組み。新しい事業スキームを構築し、人生100年時代において全国で共通する課題解決の糸口になるよう挑戦していきたい」と意気込みを見せた。

宇部市長の久保田后子氏(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)

4項目でKPIを設定

 今回のプロジェクトは、官民連携の仕組みの一つである「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)と呼ぶ手法を活用する。地方自治体などの行政機関が、民間事業者や資金提供者から調達した資金を基に事業を実施。あらかじめ設定した成果を達成した場合に、行政から事業者や資金提供者に報酬が支払われる仕組みだ。

ウエルネスリサーチの久野氏

 SIBを活用したヘルスケア事業としては、2017年度に兵庫県神戸市や東京都八王子市などが実施したケースがある。ただし、「SIBが広がっていない一番の原因は、KPI(重要業績評価指標)を立てられないことにある」と、今回のプロジェクト全体を推進するつくばウエルネスリサーチの代表取締役社長で、筑波大学大学院 人間総合科学研究科 教授の久野譜也氏は指摘する。

 そこで今回は、まず、5年後に医療費・介護給付費を5市町合計で12億円抑制することをゴール指標(KGI)として設定。これを達成するための各年度のKPIを算出した。

 ポイントは、「科学的根拠に基づくデータベースの活用によってこのKPI設定を実施したこと」だと久野氏は言う。具体的には、「健康プログラムへの参加者数」「運動不十分層の割合」「継続率」「歩数の変化」の4項目でKPIを設定した。

タニタヘルスリンクがSIBの一投資家としても参画

 今回のプロジェクトで使うヘルスケアサービスは、タニタヘルスリンクが提供する。同社も、SIBの一投資家として参画している。つまり、KPIが達成されないと売上が低下することになる。

 このため、単にサービスを提供するだけでなく、住民の健康状態と生活スタイルを把握した上で、より成果を高める質の高いサービスを5自治体と協議しながら提供していくとしている。「従来の役務提供型から成果連動型に変わっていくことこそ、我々サービサーのあるべき姿だと考えている」(同社 代表取締役社長の丹羽隆史氏)。

連携する5市町。(右2番目から)遠野市の本田敏秋市長、指宿市の豊留悦男市長、宇部市の久保田后子市長、八幡市の堀口文昭市長、美里町の原田信次町長。左端はタニタヘルスリンクの丹羽氏

 なお、今回のプロジェクトは、「健幸」をまちづくりの基本に据えた新しい都市モデル「Smart Wellness City」を目指すSmart Wellness City首長研究会の取り組みを具体化したもの(関連記事)。同様の取り組みは2018年4月から兵庫県川西市・新潟県見附市・千葉県白子町の3市町が展開しており、今回は第2期プロジェクトとして行われる。事業評価は筑波大学が担い、また、各地の地方銀行の融資によるサポートを見込んでいる。

(タイトル部のImage:mikelaptev -stock.adobe.com)