緊急事態宣言の解除を受けて、教育機関の活動が本格的に再開し始めた。これを受けて文部科学省は、「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」の第2版を2020年6月16日に発表。マニュアルにならって、多くの学校では体温の記録や体調の聞き取りが始まっている。

 そんな中、茨城県つくば市とつくばみらい市では、市内の市立小中学校を対象に、体温記録や体調報告ができるアプリを2020年6月8日から導入した。同19日に開催したオンライン記者会見で発表した。使用するのは、ヘルスケアスタートアップのAGREEが手掛ける医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」に新たに搭載した「LEBER for School(リーバーフォースクール)」の機能である。

LEBER for School画面イメージ(出所:AGREEのプレスリリース)

 LEBER for Schoolは、児童や生徒の体温記録と体調報告ができる機能で、保護者が入力した情報を教育機関に自動送信することができる。毎朝、検温を促すプッシュ通知が送られ、入力し忘れを防ぐ。つくば市とつくばみらい市では、教育機関の活動を本格的に再開するに当たり、児童や生徒の保護者に対して登校前に家庭で体温を計測して学校に報告してもらうよう要請しており、これにアプリを活用できるようにした。

体温測定と記録をしている様子(写真:オンライン記者会見の画面キャプチャー)

 アプリを使えば、書類を記載したり手渡ししたりする手間や手作業での集計を省くことができる。クラスや学年、学校全体など、集団ごとの傾向をグラフで把握することもでき、変化があれば学校側が簡単に察知することが可能だ。

 AGREE 代表取締役 CEO 兼 医師の伊藤俊一郎氏は「集団感染のリスクを着実に低減できるだろう」と見る。具体的には、全小中学校の生徒の発熱状況や下痢・喉の痛みなどの問診情報を集積し、分散登校やうがい・手洗いの徹底に役立てたい考えだ。

LEBER for Schoolを使った集団感染防止のイメージ(写真:オンライン記者会見の画面キャプチャー)

 学校によっては、登校後に体温計測を実施しているところもあるが、教職員の手間が増えてしまう上、感染リスクの高い生徒が登校してしまう恐れがある。アプリによって家庭での検温を徹底すれば、体調に異常がある場合の登校を控えてもらい、教育機関でのクラスター感染を防ぐことにつながるというわけだ。

 つくば市では、市内の小中学生がいる家庭の登録数は既に9割を超えているという。つくば市長の五十嵐立青氏は、「多くの保護者に子供を学校に通わせることへのハードルが下げられるのではないか。新しい技術が自分たちの生活に直接役に立つことを実感してもらいたい」と語った。

つくば市長の五十嵐立青氏(出所:AGREE)

 自身も小学生の子供の保護者であるつくばみらい市長の小田川浩氏は、「検温をして登録するのが日課になっている。プッシュ通知が届くので忘れることはなく、的確なシステムだと感じている」と話した。

つくばみらい市長の小田川浩氏(出所:AGREE)

新型コロナの受診勧奨にも寄与

 今回使用する医療相談アプリLEBERは、いつでも医師に相談ができるアプリである。現時点で、270人以上の登録医師が相談に乗っている。アプリでは、チャットボットによる簡単な自動問診に答えると、医師から症状に合った市販薬や受診すべき医療機関を教えてもらえたり、自宅でできる対処法などのアドバイスを受けたりすることができる。

LEBERの概要(出所:AGREEのプレスリリース)

 もともとは、医師の不足や偏在に対応するアプリとして2018年から提供してきたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受けて、そのニーズは高まっているという。AGREEによると、COVID-19関連の相談のうち、29.7%に対して医師が受診勧奨をし、38.6%の人が医療機関を受診していることが分かった。つまり、「医師のアドバイスによって適切な受診行動を促せた。“With コロナ”の時代に遠隔医療相談は適していると実感している」と伊藤氏は話す。

AGREE 代表取締役 CEO 兼 医師の伊藤俊一郎氏(出所:AGREE)

 茨城県では、LEBERを通じた医療相談を2020年4月9日から県民に対して無償で提供している。外出自粛によって医療機関に行きにくいと感じる人が、医師に気軽に相談できることを狙っているという。同年6月19日には、筑波大学附属病院の医師がLEBERの医師登録をしたことも明らかにしており、医療相談を通じて地域住民の不安軽減に役立てたい考えだ。

 実は、茨城県では、2018年8月から、子育て世代の健康不安を軽減するためにLEBERを用いた実証実験を行ってきた。この事業では、医師や小児科医が不足していて、不要不急の受診が多いという課題をアプリで解決するため、県内の約830世帯にLEBERを無料で提供した。

 その結果、81%の人が「相談して不安が減った」、76%の人が「相談をして受診を回避できた」と答えたという。相談を受けた医師は、平均3分24秒で相談に回答していたことが分かり、「アプリを使えば短い時間で健康への不安を解消できることが示せた」と伊藤氏は振り返る。

リスクに応じた「健康予報」を提供へ

 オンライン記者会見では、2020年7月にLEBERをリニューアルすることも発表された。現在、LEBERは体調の不調を感じてから使ってもらうサービスであるのに対し、リニューアル後はより早期の段階から使ってもらえるサービスとしていくという。

 例えば、LEBERで収集したデータを基にした「健康予報」の機能を搭載。ユーザーの住む地域の気候やCOVID-19の発生状況などを踏まえた健康へのリスクが一目で分かる仕様になっており、予防に役立ててもらいたいとしている。

 このほか、所属する組織ごとにどのような症状が急増しているのかが分かるようにしたり、体温チェックがしやすいインターフェースを整えたりするという。ユーザーごとに最適化した健康関連情報も届けていく。「日本の教育や子供の健康を守ることに役立てたい」と伊藤氏は意気込んだ。

クラスごとの異常感知イメージ(写真:オンライン記者会見の画面キャプチャー)

(タイトル部のImage:出所はAGREE)