「単独で推進するには難しい」

 こうしたデジタルを活用した新たな取り組みのうち、例えば「AI創薬」といったテーマは製薬企業の従来型ビジネスの枠組みに近く、「既存事業の延長で受け入れやすい」(八十木氏)という。

 AI創薬で期待できるのは、研究開発期間の短縮だ。一般に、医薬品は基礎研究から承認審査に至るまで10年以上必要な上に、1新薬あたりの開発コストは平均で1000億円以上という試算がある。しかも、成功率は3万分の1以下で、開発候補化合物の取得も難化している。それだけに、これらの問題を解決できる技術として、製薬企業の期待が高まっている。

 実際、2017年以降から「製薬企業とAI創薬技術を有するベンチャー企業の提携が増加している」(八十木氏)という。しかし同氏は、「研究が盛んな領域ではデータソースが豊富だが、そうでない領域ではデータが足りないので、その領域での対策が必要となる」という課題も提示した。

 製薬企業が、「実は参入したい領域」(八十木氏)であるものの、「単独で推進するには難しい」(同氏)とするのが、「非侵襲によるデータ蓄積」といった分野だ。この分野では現在、血圧や心拍数などの生理的パラメータに加えて、痛みや感情、呼吸数、睡眠状態、脳波などを測定する多彩なアプリやウエアラブルデバイスが開発されている。

 ただし、医療用のウエアラブルデバイスなどとなると、規制の整備が米国などと比べて遅れていることや、一般消費者向けの製品と比べ開発期間や費用が増大することから、「まだ発展途上な領域」(八十木氏)と位置付ける。可能性の幅が広い一方で、課題としては「目指す方向性とその計画、市場の予測などが難しい」と同氏は指摘する。

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