村田製作所と帝人フロンティアが共同出資して2020年4月に設立したPIECLEX(ピエクレックス)。同社は、「ぷっちょ」や「コロロ」などソフトキャンディやグミで名高い製菓メーカーの老舗であるUHA味覚糖とタッグを組み、「ニューノーマル時代のオーラルウェルネス共同プロジェクト」をスタートさせた。

発表会の参加メンバー。左から橋本氏、松川氏(以上、UHA味覚糖)、玉倉氏、安藤氏(以上、ピエクレックス)
発表会の参加メンバー。左から橋本氏、松川氏(以上、UHA味覚糖)、玉倉氏、安藤氏(以上、ピエクレックス)
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 一見、何の接点もないように思える組み合わせだが、キーワードは「咀嚼(そしゃく)」。すなわち、噛む力である。2021年6月28日に開催した共同プロジェクト発表会で、ピエクレックス 代表取締役社長の玉倉大次氏は「グミを噛むことでしっかりと力をマスクに伝えられるのではないかと考えてUHA味覚糖にアプローチした」と経緯を語った。

 「力をマスクに伝える」とはどういうことか。企業名でもあるピエクレックスとは、植物由来のポリ乳酸(PLA)から作られた最先端繊維であり、生地に伸縮や歪み(ひずみ)を加えることで電気が発生して抗菌効果を発揮するユニークな特徴を有する。設立時には、村田製作所の圧電技術と帝人フロンティアの化学繊維技術が融合した新事業として話題を呼んだ(関連記事:動力が電気に変わり抗菌機能を発揮、村田×帝人の新型繊維)。

 あれから1年余りを経て、ピエクレックスは第1弾製品として「PIECLEX マスク」の販売を開始。現在はBtoB向けに限定し、村田製作所、京都銀行、滋賀銀行、戸田建設に供給するが、今後はアパレルブランドと協力して一般的な展開を予定している。

ピエクレックスの抗菌作用(出所:ピエクレックス)
ピエクレックスの抗菌作用(出所:ピエクレックス)
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 一方のUHA味覚糖も近年はヘルスケア商品に注力しており、口腔内を健康に保つ「DOMAC」の研究を進めてきた。DOMACとはカンジダ菌糸を抑制するデカン酸、抗菌・抗炎症作用を持つオリゴノールなど5種類のアロマ成分から成る複合体。帝京大学医真菌研究センターと共同開発したものだ。2015年にはDOMACを含有した「UHAシタクリア」を発売し、口臭の原因ともなる舌苔(ぜったい)を防ぐ効果があるとして注目されている。

DOMACの概要(出所:UHA味覚糖)
DOMACの概要(出所:UHA味覚糖)
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 UHA味覚糖 執行役員 バイオ技術開発セクションリーダー 松川泰治氏は、DOMAC含有キャンディが口臭を、含有タブレットが舌苔表面微生物を有意に低減する実験結果を示した。また、岐阜県の歯科医による症例報告では、DOMAC含有ジェルの摂取によって舌苔の付着程度が減少する傾向が見られた。松川氏はこれら改善効果を踏まえ、「DOMAC含有のキャンディ、タブレット、ジェルをなめて健康習慣という新しい生活様式を提案していく」と話した。

エビデンス蓄積へ

 今や生活必需品となったマスクだが、コロナ禍でマスク着用時の口臭が気になる人が急増し、口臭対策の1つとして舌苔を取り除くことが重要とされている。日本ヘルスケア協会 在宅感染予防部会が行なった調査によれば、DOMAC含有タブレットを摂取した成人男性は「マスク着用時の口臭を抑制できる効果が現れた」(UHA味覚糖 バイオ開発ディビジョン バイオ商品開発セクション 橋本浩氏)という。

 そこで両社は共同試験を実施。ピエクレックスが所有する非接触・3次元歪み計測システムで咀嚼時の伸縮度計測を行ない、硬いグミを咀嚼するほど咀嚼動作が大きくなり、「グミを楽しみながら、PIECLEXマスクの効果を最大化できる可能性がある」(ピエクレックス ブランディングチームの安藤嘉奈子氏)ことが見えてきた。

共同試験の結果
共同試験の結果
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 共同試験の結果をもとに、より一層取り組みを深化させる構えだ。UHA味覚糖はDOMAC含有の高弾力グミを開発し、それを咀嚼することでPIECLEXマスク着用時の抗菌力がどれほど向上するかのエビデンスを蓄積する。これを受け、両社はグミを噛みながら抗菌マスクを着用する“ニューノーマル時代の健康新スタイル”に期待を寄せた。

(タイトル部のImage:オンライン会見の資料)