女性は病原菌が尿道や膀胱に入りやすいため、感染症にかかりやすい。また、紙おむつを着けた場合、尿がお尻に回りやすく、皮膚炎や褥瘡の悪化などが起きやすい。このため、注意深い排尿ケアが欠かせない−――。

 こうした感染リスクを低減する女性用の体外式尿カテーテル「ピュアウィック」を、医療用デバイス/検査機器大手のベクトンディッキンソン(BD)グループのメディコンが2019年5月に発売した。これを受けて日本BDが6月24日に開催した「女性と尿路感染症 −感染予防と排尿ケアを考える−」と題する報道陣向けセミナーでは、排尿に詳しい4人の専門家が、女性の排尿トラブルとケアの重要性について講演した。

カテーテル装着で尿道や膀胱の感染リスクが増大

 札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座教授の高橋聡氏は、尿道や膀胱などの尿路に起きる感染症の特徴について説明した。

札幌医科大学医学部感染制御・臨床検査医学講座教授の高橋聡氏(写真:Beyond Health、以下同)

 女性では身体の特徴から、健康な場合でも尿路感染が起きやすく、人生で1度は急性膀胱炎を発症するとされる。

 一方、手術や大きなけがで動けない時に用いられる尿路カテーテルの装着によって細菌感染する「カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)」がある。こちらは男女とも発症リスクがあり、痛みなど症状がある場合には必要に応じて抗菌薬(抗生物質)で治療する。

 装着の際には細菌が入らないように慎重に処置されるが、それでも感染を完全に避けるのは難しい。海外の研究結果によると、症状はないものの尿中に細菌が見られる無症候性細菌症の頻度(感染率)は、閉経前の健康な女性では1%から5%なのに対して、尿路カテーテルを留置した場合、短期間でも9~23%、長期間では100%と、極めて感染リスクは高い。高橋氏は、「カテーテルにはデメリットもあるので、カテーテル以外に尿を排出できる手段を検討すべき」と指摘した。

溜める機能と出す機能のトラブルがある

 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎泌尿器外科学講師の横山みなと氏は、排尿トラブルには排尿症状と蓄尿症状があることを解説した上で、チーム医療で排尿の自立を支援する排尿ケアチームの活動を紹介した。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科腎泌尿器外科学講師の横山みなと氏

 尿は腎臓で絶え間なく作られて膀胱に溜まり、膀胱が満タンになると尿道を通って排出される。尿を溜める際には膀胱の筋肉を緩め、尿道は閉めておく。また、尿道の周囲の筋肉が弛緩し、膀胱が収縮することで排尿が起こる。このため、排尿動作にトラブルが起きると、「出しづらい(排尿困難)」「出せない(尿閉)排尿症状」が、また蓄尿動作がうまくできないと、「トイレが近い(頻尿)」「漏れる(尿失禁)」といった蓄尿症状が出現する。

 横山氏は、「膀胱にカテーテルを留置することで、こうした蓄尿症状や排尿症状を改善できるが、カテーテル関連尿路感染症のリスク増加だけでなく、膀胱や尿道が刺激され、人によっては強い痛みを感じたり、認知症など意識低下があったりする患者さんでは、膀胱から抜け落ちないようにバルーンを膨らませてあるのに、無理に引き出そうとして、尿道などに傷を作ってしまうことがある」という。

 そこで、専門的知識を持つ医師、看護師、理学療法士(PT)などがチームで排尿ケアに当たる「排尿ケアチーム」が有効だという。横山氏は、「様々な職種が情報を共有し、患者さんの自力での排尿を目指すことで、感染症の予防や治療、生活の質向上に貢献している」と強調した。

米国では3分の1以上の病院が採用

 続いて講演に立ったカミル・ニュートン氏は、米国における排尿管理の現状と、女性用体外式尿カテーテル「ピュアウィック」の概要について講演を行った。ニュートン氏は医師でピュアウィックの発明者、ピュアウィック社の創業者でもある(現在、ピュアウィック社は米ベクトンディッキンソン社が買収)。

医師でピュアウィックの発明者、ピュアウィック社の創業者でもあるカミル・ニュートン氏

 米国でも入院患者などに対する排尿管理の方法は日本と同様で、歩ける場合は、ポータブルトイレが用いられるが、身体状況に応じて、膀胱留置カテーテルや差し込み便器、おむつなどが使われる。しかし、トイレの使用は転倒リスクが高く、紙おむつやアンダーパッドを使用した場合、16.3%に皮膚損傷や褥瘡が生じるなど、トラブルも多いという。褥瘡が発生した場合、医療費は平均4万8000米ドルにものぼる。

 トイレの使用が困難な場合、男性用には、体外に装着できるコンドーム型採尿器が商品化されているが、女性用はなく、尿路カテーテル装着による感染リスクの上昇と、紙おむつやパッドの不快さや皮膚障害リスクを秤にかけるしかなかった。この状況を改善するために開発されたのがピュアウィックだという。

 ピュアウィックは、一部をラテックス(ゴム)に覆われた太さ約4cm、長さ約25cmのキャンディーバー状をしている注)。一端にチューブが出ていて、これを尿を溜める容器(キャニスター)に接続する。病院の病室には、痰の吸引などを行うため、大気圧より低い陰圧(吸入)が標準で配管されており、キャニスターにこれを接続する。

注)現在は、米国向け、日本向けともシリコンゴム製となった。

ピュアウィックの外観

 使用の際は、ピュアウィック本体のガーゼ面に尿道口を当て、股にはさみ込むようにする。一見、尿が漏れてしまわないかと不安だが、排尿と同時に吸引され、漏れることはほとんどない。Newton氏が自身で体験した結果では、500mLの排尿でも尿漏れは起きなかったという。非常にやせている場合など、正しい位置を保つのが難しい場合は、メッシュパンツを装着して固定する。

 米国では発売後、徐々に採用する病院が増え、現在では約1800病院に導入されており、毎月100万本が使用されているという。

 Newton氏は、「膀胱内に留置するカテーテルを使った場合、1日ごとに5%ずつ感染リスクが増加するとされている。ピュアウィックはこうした感染のリスクを下げ、患者の命を救うデバイスだ」と締めくくった。

 なお、すべての患者に向いているわけではなく、認知症など意識障害があって、カテーテルを抜きたがる行動が見られる人や、月経時にタンポンを装着できない人、排便に問題がある人などには適していないという。

新デバイスはコストに課題、在宅や施設で使える環境整備も必要

 東京医科歯科大学医学部附属病院の皮膚・排泄ケア認定看護師である射場朝子氏は、排尿ケアにピュアウィックを試験的に導入した経験から、臨床上、医療経済上の観点から紹介した。

東京医科歯科大学医学部附属病院の皮膚・排泄ケア認定看護師である射場朝子氏

 導入の対象としたのは、認知機能や手足、視力などの問題でおむつ内排尿となっている患者で、大きな問題は認められなかったという。射場氏は「ピュアウィックは、装着や交換が容易。患者さんにとっては、特に夜間のおむつ交換で起こされずに済むメリットは大きいのではないか」と評価する。

 「1L以上の吸収が可能な長時間用オムツはあるが、例えば500mLの排尿があれば、股間にペットボトル1本を入れたのと同じ。不快感は大きい」(同氏)。

 一方、射場氏は、コストの高さを問題点として指摘した。ピュアウィックは、1本当たりの希望小売価格が1100円。標準的な尿量(1日1500mL)の場合、1日2回程度の交換が必要で、1日当たり2200円となる。

 これは、膀胱留置カテーテルの240円(7日間使用可能で1690円)、長時間用オムツの450円(1100mL吸収用9枚入りLサイズで2000円を2枚使用)、長時間尿取りパッドの105円(600mL吸収30枚入り1000円を3枚使用)に比べて大幅に高い(いずれも東京医科歯科大病院売店などの参考価格)。

 半面、尿路感染症や褥瘡の治療費や、患者の苦痛軽減、オムツ交換などに要する介護者の手間や身体的負担の軽減などの効果もあり、長期的・総合的な観点でコストを見る必要がある。

 また、ピュアウィックを使うためには、連続的な吸引が必要なため、今のところ病院の病室でしか使えない。こうした設備がない場所で使うためには、組み合わせて使用できる吸引ポンプなどが必要となる。射場氏は「今後は介護施設や在宅でも使える環境の整備が必要」と指摘していた。

 なお、国内ではBDグループのメディコンがピュアウィックを販売する。発売3年後の年間販売目標は3億円を目指す(メディコンUCC事業部長の濱地和弘氏)という。

(タイトル部のImage:Beyond Healthが撮影)
■変更履歴
記事初出時、「日本BDグループのメディコン」とあったのは「BDグループのメディコン」でした。また、「今後3年間の販売目標」とあったのは「発売3年後の年間販売目標」でした。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。