オリンパスは、内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス エックスワン)」を2020年7月3日に国内で発売する。これまで撮像方式の異なる2種類のシリーズとして展開してきた内視鏡システムを一本化し、どちらの撮像方式にも対応できるようにした。

2020年7月1日に開催された記者会見に登壇したオリンパス 消化器内視鏡開発 ダイレクターの倉康人氏(写真:オンライン記者会見のキャプチャー)

 オリンパスではかねて、内視鏡医の多様なニーズに応えるべく、「面順次式」と「同時式」という2種類の撮像方式を採用した内視鏡システムをそれぞれ手掛けてきた。面順次式を採用した「EVIS LUCERA」シリーズと、同時式を採用した「EVIS EXERA」シリーズである。ただし、面順次式は画像再現性が優れているが色ズレが生じてしまう。同時式では色ズレのない画像が得られるが面順次式に比べて情報量が少ない、という一長一短の側面があった。

面順次式と同時式の原理の違い(出所:オリンパスの発表資料)

 こうした課題を解消し、どちらの利点も再現するために、EVIS X1では5つのLEDを使った光源を採用した。使用するのは、青と紫、緑、赤の従来から存在するLEDと、新たに開発したアンバー(琥珀色)のLED。この5つのLEDの発光タイミングを細かく制御することで、面順次式と同時式のどちらの観察も行うことができるようにした。

光源に使用する5つのLEDとその波長(出所:オリンパスの発表資料)

撮像方式に応じて発光タイミングを制御する(出所:オリンパスの発表資料)


画質向上で「精緻な手技ができる」

 新たに開発したアンバーのLEDによって、「出血や炎症などの赤い部位に対して良好な色再現性を発揮するシステムを構築することができた」と同社 消化器内視鏡開発 ダイレクターの倉康人氏は話す。LEDを使用しているため、長寿命でメンテナンス性に優れるという特徴も併せ持つ。

 EVIS X1を使用した昭和大学江東豊洲病院 消化器センター センター長 教授の井上晴洋氏は、「電子スコープの発売以来35年間、2系統に分かれていた内視鏡がいよいよ一本化することが喜ばしい」と話す。従来の内視鏡システムよりも画質が向上しており、より精緻な手技ができるという。食道や胃に関しては診断と同じスコープで治療ができるといい、「早期がんの診断や治療が容易になるだろう」と同氏は見ている。

昭和大学江東豊洲病院 消化器センター センター長 教授の井上晴洋氏(出所:オリンパス)

 なお、EVIS X1は既存の内視鏡システムとも互換性を持つ。そのため、EVIS LUCERA ELITEやEVIS EXERA Ⅲで使用していたスコープは全てEVIS X1で使用でき、逆にEVIS X1で新しく開発したスコープをEVIS LUCERA ELITEやEVIS EXERA Ⅲで使うこともできる。

2枚の画像を合成し、簡便なピント合わせを実現

 EVIS X1には、同社独自のイメージング技術である(1)EDOF(被写界深度拡大技術)、(2)RDI(赤色光観察)、(3)TXI(構造色彩強調機能)を搭載した。

 (1)のEDOFは、焦点範囲の広い内視鏡画像を得るための技術である。これまで、心臓の拍動や腸の蠕動運動がある状況での焦点合わせは、検査時間が延長したり、医師にストレスを与えたりしていた。

 また、内視鏡治療を実施する前にがんの深達度を正確に診断する拡大内視鏡は、拡大することでピントの合う範囲が狭くなってしまうという欠点があった。そのため、画面全体にピントを合わせるには、医師の操作によって補完する必要があった。

 そこで、EDOFでは、近い距離と遠い距離のそれぞれに焦点が合った2つの画像を取り出して合成することで、リアルタイムに焦点範囲の広い画像を得ることを可能にしている。具体的には、内視鏡先端のレンズから取り込んだ光を2つの光路に分割し、2つの異なる画像を取り出す。それぞれの画像でピントの合っている部分だけを抽出して1枚の画像に合成することで、広い範囲にピントが合う画像を得られるというわけだ。

深部血管や出血箇所の視認性を向上

 (2)のRDIは、内視鏡治療を行う際の出血を防いだり、出血した場合に迅速な止血をサポートしたりする技術である。近年、内視鏡的粘膜切除術(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)など内視鏡を使った治療が行われており、こうした治療を安全に行うために搭載した技術である。

 RDIのモードを用いる場合は、赤と緑、アンバーの3色のLEDを光源として使用する。波長の長い赤やアンバーの光は、粘膜よりも深い位置に到達することができ、アンバーは赤よりも血中のヘモグロビンに吸収されやすいという特徴がある。これを踏まえて、血管に吸収されるアンバーの光と、吸収されない赤の光の差分を画像化することで、深部血管の視認性を向上させることができる。

RDIによる深部血管の視認性向上(出所:オリンパスの発表資料)

 この特徴は、治療中に出血した場合の出血部位の探索にも役立てる。治療中に出血すると、止血のために水で洗浄するため、観察部位が全体的に赤く染まってしまい、どこから出血しているか特定するのが難しい。その際に、アンバーのLEDがヘモグロビンに吸収されやすいという特徴を使えば、「新鮮血が多く出ている出血部位が見つけやすくなる」(倉氏)。

 (3)のTXIは、観察部位の表面の構造や凹凸、色調の変化を強調して内視鏡観察をサポートする技術である。通常光観察で得られる画像を構造成分と明るさ成分に分離して、処理を加え、再び1枚の画像にすることで、色のコントラストや凹凸がはっきりする画像を作ることができる。

従来製品である「EVIS EXERA Ⅲ」を用いた場合の通常光観察の画像(左)とTXI処理を施した画像(右)。構造や色彩、明るさが強調されている(出所:オリンパスの発表資料)

 EVIX X1では、こうした画像処理を操作者の指示によってリアルタイムの動画で実行することが可能だ。昭和大学江東豊洲病院の井上氏は、「通常観察では見落としそうになる部位も、TXI画像では見つけやすい」と語る。特にポリープの境界面などがくっきり見えるという。

胃の幽門部を通常光で観察した様子(左)とTXIで観察した様子(右)。右の画像の方がポリープの境界がはっきりしている(写真:オンライン記者会見の画面キャプチャー)

 このほか、タッチパネルを採用するなど、EVIS X1では使い勝手の向上も図った。国内では、およそ3万3000台の内視鏡が稼働しているといわれ、その70%が購入から5年以上経過しているとされている。まずはこの層をメインターゲットに、販売促進をしていき考えだ。

(タイトル部のImage:出所はオリンパス)