離れた臓器に転移したがんも攻撃

 今回の説明会では示されなかったが、米国の臨床試験データベースに登録された内容によると、第3相臨床試験の予定登録者数は日本、米国など十数カ国の275人。少なくとも1種類以上の抗がん剤治療を含む2種類以上の治療を受けた局所再発頭頸部がん患者を対象に、最長1年間、RM-1929による治療を行い、標準的な治療と比較する。試験の完了予定は2021年12月となっており、好ましい成績が得られれば、2~3年後には患者のもとに届く可能性もある。

 RM-1929は、抗体にがん細胞を殺す機能を持つ物質を結合させて抗体複合体を作り、標的となるがんに誘導し、がんだけにダメージを与える。このような治療法は「ミサイル療法」、細胞毒を結合した抗体は「武装抗体」などと呼ばれている。

 通常、ミサイル療法は免疫療法とは呼ばないが、研究者らは、光免疫療法により、免疫系が活性化する場合があることを動物実験で突き止めている。光を当ててがん細胞が破壊されると、周辺の免疫細胞ががん細胞のタンパク質を取り込んで分解する過程で、そのがんを免疫システムの敵として認識する。これを受けて作られるNK(ナチュラルキラー)細胞や細胞傷害性T細胞などが、体内に散らばった同じ種類のがんを攻撃するのだという。これにより、がんが悪化して離れた場所に転移した場合、転移した先にあるがん細胞も攻撃できる。

 ただし、免疫系には、こうした免疫の活性化を止める仕組みがあり、がん細胞は巧妙にそのシステムを利用している。NIHの小林氏や楽天メディカルでは、光免疫療法などによってこうした仕組みを抑える研究を進めている。

(タイトル部のImage:Beyond Healthが撮影)