スタートアップのカラダノートは、健康寿命の延伸に向けた予防・早期発見分野へのサービス提供を加速するべく、東京女子医科大学と共同で「心疾患早期発見プロジェクト」をスタートする。プロジェクトの開始に先駆け、2021年7月から「スマートフォンを用いた心音聴取および心雑音解析からの心臓弁膜症のスクリーニング」を始める。同年7月2日に開催したオンライン記者発表会で、その概要を紹介した。

カラダノート 代表取締役の佐藤竜也氏

 共同研究者である東京女子医科大学 心臓血管外科学講座 教授・講座主任の新浪博士氏によれば、日本における死因第1位の「悪性新生物(がん)」は医療費が4兆5000億円、三大疾病の1つである「心疾患」は2兆円になるそうだ。ただ、がんは血液検査のテクノロジーが進化したことで「自宅でも検査できるほど発達している」一方で、心疾患に含まれる心臓の「弁膜症」や「心筋症」、冠動脈の動脈硬化による「虚血性心疾患」などの早期発見には人間ドックを受ける必要がある。このため、「病院に行かないと検査できない」状況にあると指摘する。

東京女子医科大学 心臓血管外科学講座 教授・講座主任の新浪博士氏

 心疾患の中で最近増加傾向にあるのが「心臓弁膜症」である。「狭窄症」や「閉鎖不全症」といった弁の異常によってさまざまな心臓のトラブルが出てくるのだが、55歳以上の潜在患者は422万人とされている。さらに、一番増えている「大動脈弁狭窄症」の潜在患者は65歳以上の約2%(約70万人)が「大なり小なりの大動脈弁狭窄症を発症している」ほか、そのうちの約2割(14万人)には「手術が必要だと言われている」と新浪氏は補足する。

 しかし、日本で行われている大動脈弁狭窄症の手術は「1万数千程度(=約10%)にとどまっている」(新浪氏)とのこと。つまり、約90%が手術を受けずに潜在患者のまま埋もれている。そのため、新浪氏はこれまで「その潜在患者をどうやって探していくか」を思案してきたという。そこで、心臓弁膜症」に着目し、新浪氏とカラダノートが共同でスタートしたのが今回のプロジェクトというわけだ。

「受診勧奨にもつなげる」

 スマートフォンを用いた心臓弁膜症のスクリーニングでは、スマートフォンのマイクと録音機能を用いて心音を記録し、心雑音の解析から心臓弁膜症のスクリーニングを行っていく。判定基準は「聴取した心雑音を〇△×の3段階で判定し、弁膜症診断との一致率で評価」(佐藤氏)する。

 研究対象者はカラダノートが提供する血圧管理アプリ「血圧ノート」の利用者の中から許諾の取れた人を予定する。血圧ノートの利用者には、高血圧で平均年齢が50代後半以上の人も多くいることから、実際に受診が必要と判定された場合には「受診勧奨にもつなげていく」(佐藤氏)。

 今後の方針・取り組みについて、カラダノートとしては医療現場との連携強化により「検査制度の向上を目指す」とともに、事業性の確立も視野に入れて「民間保険会社との連携も加速していく」(佐藤氏)考えだ。また、医療機関に対する狙いとしては「早期治療および重症化予防の実現」「適切なタイミングでの治療・手術の実現」「手術数増加による医療レベルの向上」を挙げた。

 一方で、自社としては「大手生命保険会社との協業模索」「早期発見による保険支払金等の削減」「重症化予防効果による収益機会の創出」を狙っていく。そのほか、他の疾患においてもオンラインと人間ドックを組み合わせた「オンラインドック市場」(自社造語)を拡大することで「早期発見による医療費の抑制を実現させるとともに、新たな収益機会を創出する」ことを目指す。これらによって「国全体の医療費削減に貢献できるはず」と佐藤氏は語った。

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