一般社団法人日本ケアテック協会は2021年6月30日、東京・芝浦で設立記念総会を開催した(関連記事:日本ケアテック協会、設立記念総会を開催)。このうちセッション3では「在宅介護・地域包括ケアとデジタライゼーション」をテーマとしたパネル討論が実施され、「ケアテックの国際化」について議論が展開された。

 ケアテックの国際化に関して、モデレーターを務めたパナソニック くらし事業共創センター スマートエイジングケア事業の山岡勝氏は、自身がケアテック協会に加入するにあたって「作り上げたものを、いかにして国際化するか」という視点に強く賛同したという。そこで、日本発のケアテックを世界スタンダードとして打ち出していくためには「どのような目線が必要か」という点をパネリストに尋ねた。

パナソニック くらし事業共創センター スマートエイジングケア事業の山岡勝氏(写真:近藤 寿成、以下同)
パナソニック くらし事業共創センター スマートエイジングケア事業の山岡勝氏(写真:近藤 寿成、以下同)
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 ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏がまず指摘したのは、「国による違い」である。例えば、米国であれば社会保障がかなり弱い一方で、ドイツ型を踏襲するEU各国や北欧諸国などはかなり手厚い。このため、各国の「法律ベースに合わせた対応が必要になる」という考えだ。

 ただし、それ以上に鹿野氏が本質的に大事な点として指摘したのは「最小コストで、人の手をかけずに、どれだけケアマネジメント自体を高度化できるか」。どこの国でも労働力は足りておらず、北欧諸国であれば国土が広く雪の影響もある。遠方に住む高齢者が村まで出向くことはとても困難といえる。こうした状況に対して、日本としては遠隔での医療や介護を最小コストで実現できる仕組みをパッケージングして輸出していくやり方が「最も大切だ」と語った。

ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏
ウェルモ 代表取締役CEOの鹿野佑介氏
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「介護と医療で連携したデータ」が武器に

 ドクターメイト 代表取締役で医師の青柳直樹氏は、医療者の目線から「世界的に見て介護と医療で連携したデータがない」という点に着目。病院側からすると、退院後の患者の生活や服薬、介護の状況などを知る手段がないため、そういった情報とひもづくような仕組みの開発を望むという。「例えば、ある手術をした人は介護現場でこういったことが起きやすいなどのデータが、一貫性を持って見えてくることになる」(同氏)。

ドクターメイト 代表取締役で医師の青柳直樹氏
ドクターメイト 代表取締役で医師の青柳直樹氏
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 そうして得られるデータこそが、医療と介護の連携の価値だと青柳は考える。そのデータが現状では「世界中のどこにもない」と指摘。しかも、このようなデータは「世界中で応用できることから、そういった部分を上手く生かせれば日本は世界の最前線で戦える」と答えた。

「元気にする取り組み×テクノロジー」でイノベーションを

 ポラリス 代表取締役でオーロラ会 理事長の森剛士氏は現在、高齢者の自立支援を目的とした自立支援特化型デイサービスを全国44カ所で展開中。「これ以上は良くならない」と言われた人たちを在宅のデイサービスで「施設に入る前に元気にさせる」ことを目指しており、特に「歩行能力」の改善・維持に力を入れている点が大きな特徴だ。最近ではパナソニックと共同で、ポラリスの自立支援介護とAIを組み合わせた世界規模の「自立支援AIサービス」にも取り組んでいる。

 こうした「元気にする取り組み×テクノロジー」は、「世界でイノベーションを起こせる数少ない1つではないか」と自信をのぞかせる。実際、欧米や北欧諸国でも自立支援のノウハウはまだないことから、森氏としては「合理的で手厚い欧米の介護×自立支援」には非常に可能性を感じており、「EU諸国に持っていきたい」と考えているという。

ポラリス 代表取締役でオーロラ会 理事長の森剛士氏
ポラリス 代表取締役でオーロラ会 理事長の森剛士氏
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 一方で、米国の場合は、医療保険の状況を踏まえ、効率的かつ合理的に高齢者を元気にできる仕組みに「非常に価値がある」と見ている。「急性期を過ぎた人たちを元気にさせる」ことは世界共通の課題になっているため、経験値ベースで運用している現在の仕組みにテクノロジーを組み合わせれば、「より迅速に世界へと広げられる」との考えを示した。

(タイトル部のImage:近藤 寿成)