ヘルスケア×IT(デジタルヘルス)分野での存在感を高めているイスラエル(関連記事1)。2019年7月に神戸で開催された「イスラエル・デジタルヘルスセミナー2019」では、イスラエルから9社が参加し、自社サービスのプレゼンテーションで熱弁をふるった(関連記事2)

 本記事では、この9社のうち「高齢者向けソリューション」「医療業務効率化と医療機器のサイバーセキュリティー」に関する取り組みをプレゼンした4社についてレポートしていく。

音楽が引き金となり、アルツハイマー病患者が記憶を呼び起こす

●2gether

 アルツハイマー病の音楽セラピーを手掛ける2gether。グラフィカルで見やすいモバイルアプリによって、高齢者でも簡単に操作できることに注力した。もともと、同社Founder & CEOのロイ・タル氏の祖母がアルツハイマー病になったのが起業のきっかけだ。タル氏はその効用を次のように説明する。

2gether Founder & CEO ロイ・タル氏

 「音楽はアルツハイマー病にとって、ほぼ唯一のセラピー手段。メラトニンを上昇させ、睡眠周期を調節する。興奮状態を減らすこともできるし、介護者の疲労も軽減可能だ」(タル氏)

 24時間体制のオンラインチャット機能もある。チャットを通じて音楽セラピストとコミュニケーションを図ることが目的だ。また、介護者が一緒に音楽を聴いたときの患者の反応や写真を記録することで、“状況”を蓄積する。これは音楽が引き金となり、アルツハイマー病患者が記憶を呼び起こすことがあるからだという。

音楽を聴いたときの状況も記録する

 過去1年間で42都市以上、115以上の施設でアプリを試してきた。結果、「91%の利用者が気分が向上した」(タル氏)。これから本格的な臨床試験を開始する予定で、音楽セラピーがアルツハイマー病患者にどのような効果をもたらすかの詳細なエビデンスを収集していく。

●Uniper Care

 どうしても自宅にこもりがちになる高齢者たち。Uniper Careが提供するのは、自宅にいながらにしてオンラインでバーチャルに触れ合えるコミュニティサービスである。キーデバイスはスマホでもPCでもなく、テレビだ。

 同社CEOのラミ・キルシュブルム氏がテレビに着目した理由は「高齢者でも簡単に使えて何も変える必要がなく、電源も一緒だから」。あくまでテレビを人びとをつなげる機器として捉え、「つながることで活力を与えられるソリューションとして発想した」と語る。

Uniper Care CEO ラミ・キルシュブルム氏

  テレビを通じてソーシャルグループの一員となり、友人と交流できるばかりでなく、医師と会話したり、ヨガ教室などの健康促進プログラムを受講できたりする。「孤独感の減少、身体的健康の増進、抑うつ状態の軽減などが現れた。テレビをリモコン操作すればいいので、他のソリューションを比べても参加率が高い」(キルシュブルム氏)。

高齢者の操作に配慮したUniperのサービス

 今後はバーチャルのデイケア、在宅介護、遠隔医療ツールとしても展開していきたいと話す。テレビを観る感覚で身体機能とメンタル面の向上が見込めるならば、健康寿命の続伸につながる可能性が高い。「結果的に介護費用などの削減効果も生まれるのではないか」と、キルシュブルム氏は期待を込める。