エーザイとディー・エヌ・エー(DeNA)は、認知症対策プラットフォームの構築で業務提携した。認知症予防に向け生活者の行動変容を支援するアプリの共同開発・サービス提供に取り組む。

 第1弾として「Easiitアプリ」を開発した。脳の健康度合い(ブレインパフォーマンス)を見える化し、脳の健康を良好に保つ生活習慣を支援するアプリである。iOS版は2020年7月28日に提供開始、Android版は2020年8月末のリリースを予定している。

日常生活領域と医療領域をつなげる

 認知症対策プラットフォームはもともと、エーザイが構想していたもの。同社 執行役員 ディメンシア・トータルインクルーシブエコシステム事業部プレジデント兼チーフデジタルオフィサーの内藤景介氏は、「当社は製薬企業だが、認知症に関しては薬以外のところでいかにサポートできるかが極めて重要になる」と語る。

認知症プラットフォームで日常生活領域と医療領域の架け橋を実現(出所:エーザイ・DeNAの発表資料)

 今回、対一般消費者に強みを持つDeNAとタッグを組んだのは、日常生活領域と医療領域の架け橋となるプラットフォームの実現を目指すためだ。実際、認知症は現状、介護事業者や家族による無償の介護が必要になるなど、社会的コストが大きな課題になっている。その課題解決のため、未病段階でのアプローチの重要性が指摘されている。

 開発したアプリは、まさに未病段階で生活者の日常生活における課題をどう解決していくかに着目したもの。生活者が自身の認知機能の変化を把握し、予防行動を行いつつ、「当事者と家族が抱えている課題を簡単(easy)に解決する仕組みを目指す」(エーザイの内藤氏)。

合計スコア23で脳の健康度合いが改善

 今回のEasiitアプリの対象は、40代以上のビジネスパーソンで、認知症に対して不安を持つ人を想定している。具体的には、認知症対策を見据え、日々の仕事の質を高めるために脳の健康度合い(記憶力、思考力、判断力)を改善したいと考えている層だという。

業務提携の第1弾として開発した「Easiitアプリ」(出所:エーザイ・DeNAの発表資料)

 脳の健康度合いは、日頃の良い行動や習慣行動を数値化する。この数値を「Easiitスコア」と呼び、ライフスタイルを改善していくとスコアが上がり、目標値を達成するとブレインパフォーマンスが改善される仕組みである。

 具体的には、毎日の歩数、食事内容(カロリーや栄養素)、睡眠、体重などからEasiitスコアを算出する。各項目の合計スコアが23を達成すると脳の健康度合いが改善するよう設定している。ただし、各項目の目標値は個人のライフスタイルに合わせたステップを踏んでいくよう設計した。「3000~5000歩しか歩かない人にいきなり1万歩は難しい。個人に合わせてハードルをいくつか設定し、それをクリアすることでステップアップできるよう動機づけしている」(DeNA 執行役員 ヘルスケア事業本部長の瀬川翔氏)。

 食事記録は食事内容を写真で登録すると、画像解析AIでカロリーや栄養素を算出できる。歩数や睡眠時間・質などのデータは、各社のウエアラブルデバイスやヘルスケアアプリとデータ連携できるようにした。

歩数や食事内容などからEasiitスコアを算出。目標値をクリアすることでブレインパフォーマンスを改善する(出所:エーザイ・DeNAの発表資料)

 なお、WHO(世界保健機関)が2019年に公表した脳のパフォーマンス低下のリスク低減に向けたガイドラインには、ライフスタイルの改善などにより、脳の衰えを遅らせる可能性が示されているという。「運動や禁煙、栄養、飲酒など12のテーマにおけるエビデンスや推奨レベルが提示されている」(DeNAの瀬川氏)。今回のアプリの監修には、東京都健康長寿医療センター 脳神経内科 部長の岩田淳氏が参画した。

生活習慣の改善で保険料が割引かれる認知症保険商品

 認知症対策プラットフォームには今後、医療機関や介護施設、民間保険会社、フィットネスクラブなどとの協働を深めていく考え。参画事業者が新たなサービスを創出・提供することにより生活者に恩恵をもたらすエコシステムを目指す。

医療機関や民間保険会社、フィットネスクラブなどとの協働で認知症エコシステム形成を目指す(写真:記者会見のオンライン画面キャプチャー)

 DeNAの瀬川氏は協働の具体例として、認知症を対象とした民間保険商品を挙げた。現在、認知症に関する保険商品のニーズは高いが、生活習慣の改善で保険料が割り引かれるような保険商品は見られないと同氏は指摘する。

 その理由は、認知症予防について確固たるエビデンスがないためだという。それにより、予防のための行動に応じたインセンティブを付与できない。瀬川氏は「現在わかっていないことが、Easiitを通じてわかってくる。健常者のデータを取得することで健常者にお返しできるようなエコシステムにつながるのではないか」と述べた。

(タイトル部のImage:出所はエーザイ・DeNA)