保健・医療・福祉分野の製品やシステム、サービスなどの大規模展示会「国際モダンホスピタルショウ」(主催:日本病院協会/日本経営協会、特別協力:日本看護協会)。実は、今年の展示では、従来の「医療機器ゾーン」が「医療機器・ヘルスケアIoTゾーン」と変更された。“ホスピタル”の領域がどんどん広くなり、かつIoTなどのテクノロジーとの融合が進んでいる時代背景がうかがえる。

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 実際、各社からはIoTを活用したソリューションの展示が相次いだ。その中から幾つかをピックアップして見ていこう。

電磁波で皮下のグルコース値を測定、NTT

 NTTは、電磁波を用いて皮下の間質液からグルコース(ブドウ糖)濃度を測定する非侵襲の生体成分センサーを参考出展した。グルコース成分により吸収される周波数の電磁波を皮膚に照射し、反射信号を解析することで間質液中のグルコース濃度を推定するという。

NTTが参考出展した電磁波を用いたグルコース濃度センサー(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)

 血液中のグルコース値と間質液中のグルコース値は相関性を持っており、血糖コントロールのために利用されるようになった。指先の血液から血糖値を測定する簡易血糖測定などと異なり、非侵襲であることが特徴。「非侵襲という点ではレーザー光を用いたグルコース値測定が精度的に有意かもしれないが、電磁波は生体組織による光の散乱の影響を受けにくい優位性がある」(説明担当者)。

 参考出展したセンサーデバイスは指先で測定するプロトタイプだが、将来的にはスマートウォッチのようなウエラブルデバイスを目指している。「正確な血糖コントロールというより、持続測定により日常の変化をとらえることで生活習慣の改善や受診の動機づけに利用することを狙っている」(同担当者)という。

人感センサーで下肢筋力低下の予兆を検知、NEC

 NECは、人感およびドアの開閉センサーなどを用いた24時間安否見守り支援サービス「eみまもり」を出展した。居室内の人の動き、家電製品の使用状況、冷蔵庫や扉の開閉情報などを検知し、クラウド上のアプリケーションに収集する。収集した情報に基づき、生活行動に特異な変化があった場合に家族や自治体などの担当者にメールで通知する。

筋力低下の予兆の検知も可能なeみまもり

 生活行動のリズム変化をとらえた見守り以外にも、様々な応用が研究されている。金沢大学 医薬保健研究域保健学や首都大学との共同研究によって一部実装を始めたのが、2つの人感センサーを用いた筋力低下の予兆を検知するサービスである。

 廊下などに1mほど離して設置した人感センサーにより、2点間の反応時間差から歩行速度を相対値として検出する。設置当初のデータと比較してマイナス状態が続くと下肢筋力低下の兆候と考えることができ、高齢者本人や家族への気づきを与えたり、啓蒙・予防に役立てられたりするという。「全身筋力と相関がある握力、転倒と関係するファンクションリーチ動作、歩行能力に関係する機能検査など、4年間にわたって研究参加した高齢者のデータを収集し、筋力低下の判断・検知のアルゴリズムを開発した」(説明担当者)。

心拍周期から自律神経の測定も可能、ユニオンツール

 ユニオンツールは、心拍間隔(心拍周期)や心拍波形、3軸加速度、体表温を計測するウエアラブル心拍センサー「myBeat」2機種と、それらの心拍変動からストレス状態などを可視化する解析ソフト「RRI Analyzer」を出展した。

自律神経の測定もできるウエアラブル心拍センサー

 心拍センサーは、電極パッドで左胸部に貼り付けたり、専用ベルトを用いてみぞおち部分に装着したりして利用する。独自の無線通信規格でパソコンにデータを保存・管理するモデルと、Bluetoothでスマートフォンにデータ保存・管理するモデルの2機種がある。

 高齢者の見守りの他、スポーツ時や日々の健康管理、作業者の見守りなどに利用される。また、解析ソフトによって自律神経のバランスを把握できるため、ストレスチェックなどにも使われる。「3軸加速度と体表温を同時に検知できるため、工事現場や工場内での作業者の熱中症予防や転倒・転落事故の監視などに利用されている」(説明担当者)という。

エコナビスタとの提携によるケア記録の自動化、ワイズマン

 ワイズマンは、介護請求・記録ソフト「ワイズマンSPシステム」と、スリープテックベンチャーのエコナビスタが提供する見守りシステム「ライフリズムナビ+Dr.」との連携ソリューションを披露した。両社は国際モダンホスピタルショウ2019開会前日の7月16日に、IoT機器などによるICT化を通じた介護職員の業務効率化を推進するため業務提携を発表した。

ライフリズムナビ+Dr.と連携したケア記録システム

 ライフリズムナビ+Dr.は、ベッドマットセンサーで入眠時刻・覚醒時刻・睡眠深度・心拍数・呼吸数などを見える化し、体調の急変や事故を未然に防ぐための見守りシステムである。

 展示ブースでは、ベッドマットセンサーの他、天井やトイレ内に人感センサー、扉の開閉センサー、室温・湿度センサーを設置展示した。ライフリズムナビ+Dr.に集約した各種データのうち、日々の就寝・起床時刻および睡眠時間、1日のトイレ利用回数、アラート履歴などをワイズマンSPシステムのケア記録に自動転送。介護職員の記録業務や見守り業務の負担軽減を目指すという。

病室・居室などの環境を遠隔監視、i Home Care for you

 i Home Care for youが出展したのは、IoT向けの無線通信規格「SIGFOX」を採用したセンサーを用い、施設内の監視業務を自動化・効率化する「IoT遠隔監視アプリ」だ。温湿度・照度・扉開閉などを1つのセンサーで計測し、FileMaker Cloud上のアプリケーションで遠隔監視する。スマーフォンやタブレット、パソコンなどのWebブラウザで参照できる。データが設定値を超えた場合、管理者・担当者にメールもしくはSMS(ショートメッセージサービス)で通知する。また、パトライトの点灯でもアラートを発する。

SIGFOXセンサーを用いたIoT遠隔監視アプリ

 同社は、岐阜県の中核医療機関である松波総合病院が設立した会社。同病院のシステム開発を行っており、IoT遠隔監視アプリも同病院で運用されている。

(タイトル部のImage:Beyond Healthが撮影)