義理や忖度がなく、より直感的に人の感性を捉えられる

 これを受け「なぜ今、脳科学とネットマーケティングが近づいているのか?」とのテーマからディスカッションがスタート。まずは川島氏が楽天との関係について説明した。

 この4月、東北大学と楽天はイノベーション創出を目的とした包括連携協定を締結し、川島氏はヘルスケア事業で関わっている。川島氏は、日立ハイテクノロジーズと東北大学が共同で設立したベンチャー企業のNeU(ニュー)でCTOを務めるビジネスパーソンでもある。ニューは“脳科学でQuality of Lifeの向上に貢献する”ことをミッションとし、脳計測ソリューションやニューロマーケティング・感性評価などのサービスを提供する。

 川島氏はニューを「脳科学をもっと身近に、脳計測をもっと生活の中に採り入れたい」との思いから設立したと述べた。背景には、脳科学を応用したサービスに注目が集まっていることが挙げられる。

脳科学をもっと身近にしたいと話す川島氏

 「ヘルスケアに関して、脳科学はさまざまなアプローチをし始めている。私自身は、人間の脳が何をすればどのような働きをするかを調べている。脳機能イメージング研究と呼ばれるものだ。

 例えば今、私がこうして話をしているときに、脳の中で何が起きているかを画像化する。この研究の面白いところは、その先にデコーディング(再構築)があるところ。すなわち、脳のどの場所がどのような働きを持っているかがわかれば、その場所をモニターすることで、その人が何を考えているのかわかるのではないかといった考え方になる」(川島氏)。

 ニューの特徴は高い技術力と研究成果の知見を生かし、人体装着型のデバイスを製造している点だ。企業や研究機関向けに提供する脳計測ハードウエアでは、近赤外光を用いた光トポグラフィ(NIRS)によって脳機能をマッピングする、手のひらサイズの計測機器を開発した。

ニューが開発した小型・軽量の脳計測機器

 「これを皆さんの頭につけて、脳の働きがどうなっているかをスマートフォンで色と音で知ることができる。その昔、脳のデコーディング研究をしようと思ったら大型装置であるMRIを使う必要があったが、脳の計測技術が発展してきて、皆さんの脳の中で何が起きているかを瞬時に画像化できるのも夢ではなくなった」(川島氏)。

 これにより、ニューロマーケティングの世界は加速する。「消費者の意向を知りたい、どんな好みを持っているのかを知りたいといったときにはアンケート調査を実施するが、アンケート調査は状況によって大きくブレる。義理や忖度などのバイアスがかかるためだ。しかし、脳に直接聞くことができれば義理や忖度は関係なくなり、より直感的に人の感性を捉えることができる。我々はより良いモノづくりやサービス、広告づくりを支援し、いつでもどこでも脳に聞いてみることで、社会に新しいニューロマーケティングソリューションを提供していきたい」(川島氏)。