より精密でほしいところに手が届くマーケティングが可能に

 一方の中野氏は「ニューロマーケティングが米国で流行したのは10年前。その後、論文数が一気に減って2014年頃に“幻滅フェーズ”に突入した」と切り出した。その理由は研究室でしか再現できない研究を重ね、市場との条件に大きなギャップがあったからだ。その上で「きちんと市場を見て、生きている人間がモノを買っているという事実から目を背けて研究を進めることがどれだけ危険か。それを知った上で研究を進める人でないと難しい。地道に研究を続け、ここまで商品化された川島先生は素晴らしい」と続けた。

 そして中野氏は、会場に詰めかけた聴衆に次のようにメッセージを贈った。

データを読み解くリテラシーこそが重要と話す中野氏

 「脳科学にはマジカルな響きがある。それと同じようにニューロマーティングも奇跡を起こしてくれるのではないかと感じている人もいるだろう。これを使えば売上が伸びるのではないか、他社に先行して使えば上手く行くのではないかと。

 実際にはそんなことはなく、計測したデータにそれ以上の意味はない。それを読み解くリテラシーこそが大事。受け手が受け身のままではニューロマーケティングの効力は発揮されない。なので皆さんにも、ぜひ精進してもらいたい」(中野氏)。

 次にモデレータの菊池が「脳科学との出会いでネットマーケティングはどのように変化していくか」との質問を投げかけた。

 中野氏は「脳科学との出会いでネットマーケティングは真のマーケティングになる。そう言っても過言ではないかもしれない。年齢や性別で一律には語れないところを脳科学がサポートすれば、より精密でほしいところに手が届くマーケティングができるようになる」と語った。

 川島氏は「結論は中野さんと同じ。ニューロイメージングを組み合わせることで、消費者が何に興味を持っていて、それをどう捉えているかをある程度、数値として蓄積できる。それを使うことで、本当にほしいモノを個人の嗜好にあわせてきちんと届けられる。脳科学を活用したネットマーケティングが、消費者と企業の間のストレスフリーなコミュニケーションツールになっていくのではないか」と期待を込めた。

脳科学とネットマーケティングはより強く結びついていく

 アカデミア、ビジネス双方のバランスを兼ね備えた両者だからこそ、バラ色の未来ばかりではなく現実もきちんと伝える内容だったのが印象深い。脳の可視化は決して“魔法”ではないが、確実にこれまでとは景色の違うマーケティング効果をもたらす――そんな希望を感じさせる有意義なパネルディスカッションとなった。

(タイトル部のImage:小口 正貴)