キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、医療従事者が医療機関の外で、タブレットやスマートフォンを使って安全に医用画像を閲覧できる「モバイル画像参照サービス」の提供を7月16日に始めた。同社の医用画像クラウドサービス「Medical Image Place」の新たなサービスメニューで、医療機関に保存されているCTやMRIなどの画像をいったんMedical Image Placeのクラウド上にアップロードして、診療の現場だけでなく、外出先や自宅などでも参照できる仕組みだ(図1)。

図1●モバイル画像参照サービスのシステム概要(キヤノンMJによる、図2も)

 救急医療機関で夜間、当直医が専門外の患者を受け入れた場合、院外の専門医に画像を提示して助言や指示を仰ぐことで、より適切な医療を提供できる場合も少なくない。災害現場で診療を行う際、患者の病歴を詳細に把握したいという要望もある。また近年、厚生労働省は、少子高齢化が進む中での持続可能な保健医療の提供を目指し、在宅医療や医療介護連携を含む地域包括ケアの構築・拡充を進めている。こうした中、在宅や介護施設における診療など、医療機関を離れた現場で医用画像を確認したいというニーズが高まっている。

 モバイル画像参照サービスのプラットフォームであるMedical Image Placeは2014年10月、遠隔読影インフラサービスを皮切りにサービス提供を開始、順次サービスを拡充してきた。現在では、遠隔読影インフラサービス、今回提供を開始したモバイル画像参照サービスのほか、医用画像外部保管サービス、紹介患者の診療画像と読影レポートが共有される地域連携サービス、キヤノンの統合医療画像管理システムの機能を搭載した医療画像システムサービスの計5種類のサービスを提供している。

多段階のセキュリティーで安全性を担保

 医療機関内の単純X線やCT、MRIなどの医療用画像は、メーカーや機種にかかわらず、DICOM(ダイコム)と呼ばれる国際標準規格で出力・保存されている。モバイル画像参照サービスを用いると、このDICOM規格の画像を院外から閲覧できる。

 医用画像は“究極の個人情報”とされ、院外で閲覧するシステムでは、セキュリティーの確保が最も重視される。画像機器が接続された病院内ネットワークからMedical Image Placeへの画像アップロードは、「ゲートウエイ端末」と呼ばれるパソコンを介して行うが、ゲートウエイ端末にはネットワークインタフェースが2つ装着されており、院内と院外のネットワークを物理的に分離している。

 また、GW端末には「クライアント証明書」という電子的な証明書が記録されていて、この証明書がないパソコンからのアップロードはできない。

 さらに、院外で画像を閲覧する際、専用アプリやパソコンのブラウザーからログインした後、メールでワンタイムパスワードを発行する「多要素認証」を採用、なりすましによる画像閲覧を防いでいる。

図2●モバイル画像参照サービスの端末イメージ
検査日が異なる画像や異なるモダリティーの画像を最大4シリーズ同時表示できる。

 端末側では直感的なユーザーインタフェースを採用しており、画像の拡大/縮小のほか、階調表現(WL/WW)の調節、複数の多層画像のスライス移動を同時に行えるシンクロ機能、アノテーション(付加情報表示)機能などを備えている。また、同一画面上に、検査日や撮像機器(モダリティー)が異なる画像を最大4シリーズ表示できる(図2)。

 なお、画像の閲覧ができるモバイル機器はiOSが動作するアップル製品に限っている。これは機種間である程度、画像表示の均質性が保たれているためだという。

 導入費用は、初期設定費用が10万円、ゲートウェイ端末が40万円から(個別の要望により異なる)、ゲートウェイ端末に導入するモバイル画像参照アプリケーションが200万円。他に月額利用料金として、Medical Image Placeの画像保管費用が500GBまで5万円、500GB以上1TBまで10万円(いずれも税別)となっている。

(タイトル部のImage:mikelaptev -stock.adobe.com)