医療系スタートアップのシェアメディカルは、聴診器デジタル化ユニット「ネクステート」を2019年8月中に発売する。既存の聴診器に接続することで聴診音をデジタル化するユニットである。デジタル化した聴診音をヘッドフォンやスピーカーで聞いたり、聴診音データをスマートフォンやパソコンに記録したりできる。初年度は販売台数1万台を目指す。

 開発は、「学校検診で1日に100人も聴診すると耳が痛くなる」という一人の医師の悩みからスタートしたという。聴診器のイヤーピースと呼ばれる部分が耳介を圧迫し、長時間続けて使用すると痛みが生じるからだ。「現在の聴診器が発明されて200年。耳の痛みから解放することを唯一の課題解決として、『今使っている聴診器を活用』することをコンセプトに開発に取り組んできた」。シェアメディカル 代表取締役CEOの峯啓真氏はこう語る。

シェアメディカルの峯氏(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)

 ユニットは、既存聴診器のチェストピース(身体に当てて集音するヘッド部分)に接続して使用する。接続部はユニバーサルジョイント機構と呼んでおり、あらゆる聴診器に対応する。「現在の主流である3Mリットマン(米国3M社が製品化した聴診器のロングセラー)のほとんどのモデルに接続できる」(峯氏)。

 音量ボリュームで音の大きさを調整できる。音の低周波領域または高周波領域を強調して聴音できるモードも実装している。

 元々は耳の痛みからの解放を目的とした聴診音のデジタル化だったが、副次的なメリットとして様々な活用が考えられると峯氏は言う。例えば、オンライン診療に利用することで遠隔での視診に加え聴診が可能になる。データを蓄積していけば医療教育現場での活用も可能になる。

 さらに、集積した聴診音を人工知能(AI)で学習させ、診断深度を深めることも期待できると見る。そのため「AIベンチャーなどと協業していきたい」(峯氏)とする。

「聴診データ研究会」の設立も明らかに

 会見では、「聴診データ研究会」の設立も明らかにした。「聴診データの活用を検討していく上で、データの蓄積には多くの医師の協力が欠かせない」(峯氏)との考えから構想したものだ。2019年10月中の設立を予定する。理事長には、東京都医師会 理事の目々澤肇氏(目々澤醫院 院長)が就任する。

 研究会では、聴診データの活用や共有について、関連する学会との共同研究を軸に活動する。「研究会だけでできることは限られるため、循環器学会や呼吸器学会、産婦人科学会など関連学会との連携しながら、研究テーマの選択やデータ蓄積を進めていきたい」とシェアメディカル顧問で、藤沢スマートタウンクリニック小児科医の道海秀則氏は話す。

藤沢スマートタウンクリニック小児科医の道海氏

 一方で、電子情報・電子機器の活用・開発により、医療知識・技術研鑽、患者の治療・療養環境の整備などを目指す「電子情報医学会」の創設も視野に入れているとした。同学会では、聴診音だけでなくデジタル化した医療情報全般を対象として、医療従事者や研究者による臨床研究と教育を活動の柱とし、認定医の創設やガイドライン策定などを検討していくという。


(タイトル部のImage:Beyond Healthが撮影)