シャープは、スマートフォン(スマホ)と連携しカウンセリングや調整などのサービスをすべてオンラインで受けられる、ワイヤレスイヤホン式の耳あな型補聴器「メディカルリスニングプラグ」(MH-L1-B)を2021年9月中旬以降に発売する。軽度・中等度難聴者に適した補聴器で、特に聞こえづらさを感じ始めた40~60代の現役ビジネスパーソンの利用を想定する。

シャープの耳あな型補聴器「メディカルリスニングプラグ」。外観については、ワイヤレスイヤホンと同等のデザインを採用した。眼鏡や時計のように毎日身に着けたくなるデザインを目指したとする。マイクを搭載しており、スマホと接続してハンズフリー通話可能なワイヤレスイヤホンとしても利用できる。この場合は補聴器機能はオフとなり、一般のイヤホンと同様の音量調整のみとなる(写真:シャープ)
シャープの耳あな型補聴器「メディカルリスニングプラグ」。外観については、ワイヤレスイヤホンと同等のデザインを採用した。眼鏡や時計のように毎日身に着けたくなるデザインを目指したとする。マイクを搭載しており、スマホと接続してハンズフリー通話可能なワイヤレスイヤホンとしても利用できる。この場合は補聴器機能はオフとなり、一般のイヤホンと同様の音量調整のみとなる(写真:シャープ)
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自社技術活用し「オンライン診療ソリューション」に狙い

 今回の補聴器は、シャープにとって医療分野のDXを進める製品・サービスの第1弾となる。同社では「8K+5GとAIoTで世界を変える」を掲げており、ICTグループでは医療ソリューションの創出を目指してきた。中でも着目するのは「オンライン診療ソリューション」だ。同社の持つ、「AIoT」などのクラウド技術や5Gなどの無線通信技術、ウエアラブル機器やモバイル機器、デバイスで培った小型・省電力化技術が活用できると見込む。

シャープは健康・医療・介護分野での事業展開を進めている(図:シャープの発表会資料)
シャープは健康・医療・介護分野での事業展開を進めている(図:シャープの発表会資料)
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 ただし、同社単独では医療現場でのマーケティングや薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)への対応は難しい。そこで2020年6月に医療機器製造販売業者のニューロシューティカルズと資本業務提携契約を締結し、協業を進めてきた。今回の製品はその第1弾で、医療機器としての認証取得などはニューロシューティカルズが行ったとする。シャープでは今後もニューロシューティカルズとの協業を進め、消費者の反応を見つつ補聴器の新製品を検討するほか、医療分野のDXを進めるような製品・サービスの開発を続けるとする。

コロナ禍で聞き取りづらさを自覚するビジネスパーソンが増加

 日本補聴器工業会によると、2018年時点における日本国内の難聴自覚者は人口の約11.3%にあたる約1430万人と推定されている。そのうち9割以上を軽度・中等度難聴者が占める。軽度や中等度の場合、通常の会話中や環境によっては会話の聞き間違いが生じたり聞き取りにくさを感じたりといった程度とされる。そのため補聴器の所有率は12%と低く、1134万人は補聴器を持っていないとされる。

 一方、コロナ禍においては、マスクの着用やソーシャルディスタンスの確保、オンライン会議やパーティション設置といった状況が増えている。同社の調査では、日常生活での聞こえづらさを感じる人は新型コロナ感染症流行前後で約1.5倍に増加し、50代の人も2割以上の人が聞こえづらさを感じていることが明らかになった。

 そこで同社では、従来補聴器の必要性を感じにくかった軽度・中等度難聴者の中でも、コロナ禍では聞き取りづらさを自覚するビジネスパーソンが特に増加していると推測する。「現役でバリバリ働きたいが、聴力低下によるパフォーマンス低下が不安という人に向けて今回の製品を実用化することで、『健聴寿命』を延伸し、『生涯現役社会』の実現に貢献したい」(シャープ 専務執行役員 ICTグループ長 津末陽一氏)。

 今回の製品は、補聴器に対する「高い」「格好が悪い」「調整や取り扱いが面倒」といった印象を払拭できるものとする。中でも一番の特徴とするのは、カウンセリングや調整サービスをすべてオンライン化し、来店などの手間を省いた点だ。

 一般には調整をしないタイプの補聴器も存在するが、手軽な半面、ユーザーの聞こえの状態に合わない場合もある。「補聴器を使い始めた当初は、言葉と雑音が混ざったように聞こえてしまうもので、徐々に脳を慣れさせる必要がある。そのため、補聴器は購入後もスタッフによる聴力チェックや細かな調整が必要となる。一般に満足するまで、調整は3~10回ほど行う」(シャープ 通信事業本部 デジタルヘルスソリューション事業推進部長 石谷高志氏)。

調整のオンライン化で気軽、低価格に

 今回の製品は、ユーザーのスマホと連携し、オンラインで個々人の聴覚状態に合わせる調整サービスを受けられる。具体的にはスマホの専用アプリを介して、サービスセンターに接続、認定補聴器技能者や言語聴覚士といった資格所有者であるフィッターがサポートに当たる。フィッターはユーザーの聴力データに合わせて補聴器の設定データを作成する。作成した設定データは、インターネットを通じてユーザーのスマホに送られ、ユーザーが補聴器本体にスマホ経由で設定データを登録する仕組みだ。

 設定データは、オフィスや現場といった勤務環境や休日など、ユーザーの状況に合わせて最大10シーン分をフィッターが作成する。そのうち、4シーン分を補聴器本体に登録して本体操作のみで変更可能だ。ほかのシーンにしたい場合は、スマホから変更可能できる。また、アプリではフィッティングのほか、チャットで相談や聴力チェック、ビデオカウンセリングなどのサービス(「COCORO LISTENING」サービス)を受けることができる。

スマホの専用アプリ画面。「COCORO LISTENING」サービスにより、相談や調整などをオンラインで受けられる。ネット通販などで購入した場合、購入からアフターフォローまで、店頭に行くことなくすべてオンラインで済ませることが可能となる(写真:シャープ)
スマホの専用アプリ画面。「COCORO LISTENING」サービスにより、相談や調整などをオンラインで受けられる。ネット通販などで購入した場合、購入からアフターフォローまで、店頭に行くことなくすべてオンラインで済ませることが可能となる(写真:シャープ)
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 価格について、調整などのサービスのオンライン化による一元化、各種サービスのオプション化により低価格化を図ったとする。希望小売価格は9万9800円(非課税)で、調整を必要とするタイプの補聴器の一般的な価格(約30万円)と比べて約1/3に抑えられたとする。本体価格に60日間の調整サービスと無制限の相談サービスが含まれる。オプションサービスとしては、1年間の調整サービスや5年間の延長保証と盗難・紛失補償を受けられる「ケアプラン」(3万3000円、税込)、さらに必要に応じて60日間の調整サービスを追加できる「リモートフィットサービス(追加)」(1万1000円、税込)を用意する。

(タイトル部のImage:出所はシャープ)