国立がん研究センターは2021年9月1日、「がん対策研究所」を新たに開設した。既存の「社会と健康研究センター」「がん対策情報センター」の2部署を統合した新組織で、今後、がんに関する適切かつ高精度な情報を発信していく。所長には国立がん研究センター 理事長の中釜斉氏、副所長には祖父江友孝氏が就任した。

 がんは生涯で日本人の2人に1人がかかる国民病である。それだけに、国を挙げてがん対策を推進してきた歴史がある。1984年には「対がん10ヵ年総合戦略」を策定し、2006年には「がん対策基本法」が成立。本法に基づく「がん対策推進基本計画」が現在、第3期まで進んでいる。

 こうした努力に加え、最近ではゲノム解析、免疫療法に代表されるようにがん医療が急速に進歩している。一方で、がんに多くの人が罹患する事実は変わらない。中釜氏は「それを防ぐためには、がんにならない、がんを早期に発見する、がんの治療後も社会の中でがんと共生していくことが重要。がん対策の課題を迅速に拾い上げ、課題に対する克服に向けた研究を実施し、それを政策提言につなげる。政策につなげた後、実効性を検証し、さらなる改善につなげるために、がん対策研究所を立ち上げた」と、設立の主旨を説明した。

がん対策研究所 所長 中釜斉氏(提供:国立がん研究センター)

 公衆衛生・社会医学研究を担ってきた社会と健康研究センター、がんの情報提供・がん対策支援を担ってきたがん対策情報センターを統合した理由を、中釜氏は「社会医学系の専門家、疫学、行動科学、サバイバーシップ、医療経済評価、情報発信、国際保健などの力を結集し、科学的エビデンスの創出から政策実装までを一貫して実施できる組織体制が必要と考えたため」と話す。

 すなわち、今回の組織再編は高度化・多様化するがんの情報ニーズにスピーディに応えるためのものだ。「社会医学的な課題がどんどん広がっており、情報にたどり着けないケースも依然として存在する。2つの組織の専門性、叡智、経験を集約し、一丸となって取り組んでいきたい」(中釜氏)。