全例でワルファリンの服用が中止された

 WATCHMANの承認に当たっては、2000人以上を対象にした複数の臨床試験が実施された。1114人を対象にした「PROTECT AF試験」と「PREVAL試験」の2件のランダム化比較試験(RCT)で、ワルファリンと比べて出血性脳卒中リスクの低減と、長期的な出血性イベントの低減が確認された。ワルファリンとの比較では、心血管死/原因不明の死亡は52%低減(P=0.006)、手技6カ月以降の大出血は72%低減(P<0.0001)、出血性脳卒中は78%低減(P=0.0004)した。また、PROTECT AF試験とPREVAL試験のメタアナリシスでは、WATCHMAN留置期間が長いほど出血性イベントが低減した。

 42人の日本人を対象にしたSALUTE試験では、脳卒中、全身性塞栓症、心血管死の発現率で有効性を、周術期の重篤な合併症の発現率で安全性を評価、全例でワルファリンの服用が中止された。手技から1年後の経過を調べた試験では、虚血性脳卒中が2例(4.8%)認められたが、いずれも体に障害は認められず、入院も必要ない軽度のもので、塞栓性の脳梗塞ではないと判断された。また、出血性脳卒中や全身性塞栓症、心血管死は認められなかった。経食道エコーで、留置後1年まで左心耳が適切に閉鎖されていることも確認された。

国立循環器病研究センター心臓血管内科部長の草野氏(撮影:武田京子)

 なお、日本循環器学会では、WATHCMANの適正使用指針および実施施設認定のフローが定められた。メーカーの市販後調査対象患者は、CHADS2スコアまたはCHA2DS2-VAScスコアに基づく脳卒中および全身性塞栓症のリスクが高く、長期的に抗凝固療法が推奨される非弁膜症性心房細動患者。さらに、(1)HAS-BLEDスコア(抗凝固療法における大出血のリスクを評価する指標)が3以上、(2)転倒に伴う外傷に対して治療を必要とした既往が複数回ある、(3)びまん性脳アミロイド血管症の既往がある、(4)抗血小板薬の2剤以上の併用が1年以上にわたって必要、(5)出血学術研究協議会(BARC)のタイプ3に該当する大出血の既往がある──の1つ以上に適合する患者であることとされた。

 また、実施施設基準は、(1)日本循環器学会認定循環器専門医が2人以上在籍、(2)日本不整脈心電学会認定不整脈専門医が1人以上および日本心血管インターベンション治療学会が認定する血管カテーテル治療専門医が1人以上在籍──など。実施施設認定までには、製造販売業者による施設調査、トレーニングの受講、日本循環器学会による認定証発行を経る。ボストン・サイエンティフィック ジャパン代表取締役社長のスティーブン・モース氏は、「今年中に30〜45施設で実施されるようになるのではないか」とみる。

 「近年、左心耳閉鎖手術や胸腔鏡下左心耳切除術など、心房細動の脳卒中予防療法として左心耳治療に注目が集まっている。今回の左心耳閉鎖デバイスWATCHMANの登場で、治療の幅が広がった」と草野氏は話している。

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