国立がん研究センターのがんゲノム情報管理センター(C-CAT)は、保険診療で実施された「がん遺伝子パネル検査」の情報を研究・開発に利活用できる「利活用検索ポータル」の運用を2021年10月4日に開始する。「世界でも例を見ない保険診療と研究開発イノベーションによる協働開発」(C-CAT センター長の間野博行氏)だと位置付けており、がん医療が発展し、がんゲノム医療の成果が患者に還元されることが期待されるとしている。

C-CAT センター長の間野博行氏(出所:国立がん研究センター、以下同)
C-CAT センター長の間野博行氏(出所:国立がん研究センター、以下同)
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 C-CATは、患者一人ひとりの遺伝子パネル検査の結果や、得られる配列情報および診療情報を集約・保管し、利活用するための機関。国によって国立がん研究センター内に2018年6月に設置された。

 一方、がん遺伝子パネル検査は、標準治療がない、または局所進行・転移が認められ標準治療が終了となった固形がんの患者を対象に、2019年6月に保険適用になった(関連記事:がん遺伝子検査、6月に2種類の「パネル検査」が保険適用)。現在までに、200施設を超える全国のがんゲノム医療中核拠点病院・がんゲノム医療拠点病院・がんゲノム医療連携病院の協力により、2万例を超える遺伝子パネル検査と臨床経過などの情報がC-CATに集積されているという。

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 今回開始する利活用検索ポータルでは、C-CATに集積されたデータを、医療機関や学術機関、企業などの幅広い研究者が学術研究や医薬品の開発に利活用できるようになる。例えば、日本人のがんでは、特定の遺伝子変化がどのくらいの頻度で生じているか、遺伝子変化と病態や治療への応答性・有害事象に結びつきがあるかなどを調べることができる。特定の遺伝子変化を持つがん患者数の把握も可能で、日本人に適した抗がん剤の臨床試験の計画や実施が促進されることも期待される。

患者の99.7%が二次利活用に同意

 利活用検索ポータルは、二次利活用に同意した患者の匿名化データをがん種、遺伝子変化、薬剤名、治療効果などで検索を行い、結果を閲覧することができる。実際には、C-CATに自身のデータを登録することに同意した患者の99.7%が二次利活用に同意しているという。

 これまでC-CATは、それぞれの遺伝子の変化に対応して治療効果が期待できる薬剤や治験・臨床試験の情報を「C-CAT調査結果」としてがんゲノム医療中核拠点病院等に返却。患者の治療法の選択に役立てていた。2020年8月末時点の厚生労働省の調査では、がん遺伝子パネル検査によって、既に標準治療が終了した患者の8.1%(607人/7467人)が、遺伝子の変化に基づく治療を受けたとされている。

 今後、治療を受けられる患者をさらに増やすためには、遺伝子の変化に基づいた治療開発を一層促進する必要がある。その一つの取り組みが、今回の利活用検索ポータルの運用開始というわけだ。

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(タイトル部のImage:出所は国立がん研究センター)