AI・IoTできめ細かな自立支援介護もスケーリング

 実は今回のサービスの裏側では、もう一つの新たな取り組みが始まっている。ポラリスとパナソニックが共同開発した、IoT・AIを活用した要介護高齢者向け「短期滞在型自立支援サービス」だ。ポラリス独自の自立支援ノウハウとパナソニックのAI分析基盤技術を掛け合わせ、科学的エビデンスに基づく自立支援介護の実現に向けて開発したもので、対象者の状況をセンシングしデータを収集するIoTシステムと、そのデータを分析するAI分析基盤を利用する。

 ポラリスが開発した独自メソッドでは、先に紹介したように「水分摂取」「食事」「排泄」「運動」の4つがポイントとなる。例えば、高齢者などが陥りやすい脱水症状に向けて1.5L/日といった十分な水分摂取を実施、食事はできるだけ刻みなどの加工を止めて常食をとることで、排泄リズムを整える。同時に、各症状に対して多様な投薬を受けている場合が多いため、主治医と相談しつつ薬を減らす方向で調整する。加えて睡眠や意欲向上への対応も欠かせない。こうして生理機能を整え生活リズムを整えた上で、歩く練習により自立支援を実現するという方法だ。

 そのためには、まず対象者の生活実態を把握し、その状況に応じてケア内容を決め、さらにケアやプログラムを実施しながら現状や改善具合を把握、さらにケア内容を更新する必要がある。ただし、対象者からの聞き取りで正確な生活実態や現状を把握することは難しく、時間や手間もかかる。さらに、ケア内容を作成するスタッフの熟練度により、効果がばらつく可能性もある。またスタッフの人数や能力から対応できる人数にも限りが生じ、今後拡大するとみられるニーズに十分対応できない可能性も生じる。

 こうした課題への対応策として、パナソニックとポラリスはAI・IoTを活用した自立支援介護プラットフォームの構築を2018年から進めてきた。今回のリーガロイヤルホテルで実施する「ホテルリハビリ」は、その実用事例第1弾にあたる。

「短期滞在型自立支援サービス」の流れ。リゾート地やホテルに滞在して短期集中で効果的なリハビリを実践することを想定している(図:パナソニック、ポラリス)
「短期滞在型自立支援サービス」の流れ。リゾート地やホテルに滞在して短期集中で効果的なリハビリを実践することを想定している(図:パナソニック、ポラリス)
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 「短期滞在型自立支援サービス」は、以下のような流れとなる。まず対象者の自宅にリモート用アセスメントキットを送付する。キットには活動量・歩数や睡眠状態を把握するためのウエアラブル機器が含まれており、1~2週間装着して日常生活の状況を把握する。また、疾患や服薬、生活状態などを把握するためのWeb問診をタブレット端末で実施する。これらのデータをパナソニックが収集、AIでの分析によりTUGなどの廃用(長期に渡る過度な安静などで生じる身体機能低下など)レベルを推定し、3カ月後の改善レベル推定などの予後予測を示す。それに基づいてポラリスの専門スタッフがオンライン診断などを交えながら目標や改善プランを策定する。ウエアラブル機器などを利用することで聞き取りに比べて状態把握の精度が高められ、改善レベルの推定は対象者の意欲向上にも役立つとする。

 ホテルではポラリスのスタッフがリハビリなどのケアに当たると同時に、ウエアラブル機器で活動量などのリアルタイムモニタリングを続ける。今回の「ホテルリハビリ」では共同開発した「排泄センサ」(カメラ)をトイレの便器に設置、大便の頻度や形状(量や質)を自動で記録する実証実験を行う。こうしたモニタリングデータから、現状や改善度を分析し、運動だけでなく水分量や食事などについても改善プランを更新することで、効果の最大化を図る。

ウエアラブル機器として米Fitbitの製品を利用している(撮影:大亀 京助)
ウエアラブル機器として米Fitbitの製品を利用している(撮影:大亀 京助)
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「ホテルリハビリ」用客室のトイレに「排泄センサ」を設置して実証実験を行う。聞き取りや個々人の記録では記憶が曖昧だったり評価が主観的になったりすることから、自動でセンシングする意義は大きいとする(撮影:大亀 京助)
「ホテルリハビリ」用客室のトイレに「排泄センサ」を設置して実証実験を行う。聞き取りや個々人の記録では記憶が曖昧だったり評価が主観的になったりすることから、自動でセンシングする意義は大きいとする(撮影:大亀 京助)
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 両社はAI・IoTの活用により劇的な効率化と質の向上が図れる点に期待する。ポラリスとパナソニックは、リーガロイヤルホテルでの「ホテルリハビリ」について定員10人を想定しており、2021年内で3人程度の利用を見込む。加えて、ほかのホテルやサービス付き高齢者向け住宅、国外企業とも話を進めており、事業拡大を狙う。今後は改善プランの自動作成も視野に入れて開発を進める予定だ。現時点では改善プランの自由度が高く個別対応しやすい自費サービスを対象としているが、将来的には介護保険適用のデイサービスや通所後のフォローなどにも活用できるとみている。

(タイトル部のImage:大亀 京助)