シンガポールにおけるヘルステックのエコシステムは、「まだまだ未熟だが、かなりのスピードで成長している」――。

 シンガポール経済開発庁 日本事務所 所長 / 駐日シンガポール共和国大使館 参事官(産業)事務所 二等書記官(産業)のリー・チーハオ氏は、「TECH for LIFE SOLUTION DAY」(主催:INDEE Japan、共催:LINK-J、2019年9月に開催)に登壇。「グローバル視点でのライフサイエンスイノベーション動向と具体事例」をテーマに、シンガポールのヘルステックについて紹介した。

シンガポール経済開発庁 日本事務所 所長 / 駐日シンガポール共和国大使館 参事官(産業)事務所 二等書記官(産業) リー・チーハオ氏(写真:近藤 寿成)

 リー氏が所属するシンガポール経済開発庁は、日本の経済産業省にあたる省の傘下にあり、投融資がメイン業務となる。多国籍企業との連携のなかで、シンガポールでのイノベーション活動などを、建国以来40年以上にわたって支援してきた。

 リー氏によれば、2018年時点でのヘルスケアスタートアップの数は170社ほど。2015~2018年の年率では約23%の成長だという。成熟度にも変化が見られ、2012年にはアーリーステージやシリーズAのみだった状況が、2018年にはシリーズBまで成長するスタートアップも出てきているという。「すべてのルートが見えつつある段階に来た」(リー氏)。

 シンガポールでは高齢化が進んでいるものの、全体としてはまだまだ若い。所得のベースも増加傾向にある。そのため、ヘルスケアに対する要求は多様化しているという。ただ現時点ではASEAN全体でのヘルスケア支出が年々上昇している中で、GDP比の支出は他国やOECD諸国の平均よりも下回っている。このため、「まだまだ成長の余地がある」というのがリー氏の認識だ。


起業したその日から、アジア圏や世界を目指す

 シンガポールのスタートアップの特徴についてリー氏は、シンガポールの内需はそれほど大きくないため、「起業したその日から、アジア圏や世界を目指す」と語る。実際に統計を見てみると、全体の約40%ずつが世界あるいはアジア圏をメインターゲットとしている。シンガポールのみをターゲットとしているのは残り20%のみという状況だ。

 現在、シンガポールには100社を超える製薬会社や医療機器メーカーなどの多国籍企業が拠点を置いている。さらに、AppleやMicrosoft、Google、Facebook、Samsung ElectronicsなどのIT/テック系企業も80以上が入ってきている。このため、「狭い場所に多くの企業が集まっていることは大きなメリット。スタートアップや企業とのコラボレーションを生み出す場所としては最適だ」(リー氏)と語った。

 なお、シンガポールでは、新規に病院を作っても「そこで働く医師や看護師が足りない」(リー氏)という課題があるという。そのため、シンガポールの医療省は、その対策のために「3 Beyonds」という方針を掲げている。

 第1は、病院以外の広いコミュニティでの一貫したケアを目指す「Beyond Hospital to Community」。第2は、医療の質ではなく実際の効果を重視する「Beyond Quality to Value」。第3は、病気にかかる前の予防治療を意識した「Beyond Healthcare to Health」だという。

(タイトル部のImage:mikelaptev -stock.adobe.com)