ベトナムをターゲットにしたワケ

 安部氏によると、当初は日本で事業展開をしようと検討したが、断念したという。医療法人の理事長は医師である必要がある中で、企業がクリニック運営を拡大していくのは、規制への対応が重要だ。日本では規制緩和が進む方向ではあるものの、医師会などとの調整を行いながら進むことになり、時間はかかってくる。かかる時間を考えたときに、日本以外の方が円滑にクリニック開業を進められると判断できたという。

 さらに、日本では国民皆保険があり、広く一般の人が医療を受けられるのはメリットである一方で、新しい医療行為を取り入れていくのは困難も伴う面がある。財源として保険料や税金の負担を要するため、ロボット手術やAI、オンライン診療の普及において診療報酬の金額が安価になっており普及しづらいといった課題も指摘される。メドリングは、AI診療支援の仕組みなど新しい診療形態を広げようする中で、日本以外の国で自由診療として提供する方が新しい仕組みを進めやすいと判断した。

 アジア圏の中でもベトナムへの進出を決めたのは、大きく3つの理由があると安部氏は説明する。それらは成長市場であること、医療課題があること、新しい取り組みをしやすいことである。

 安部氏は、「ベトナムにも公的な医療施設はある。それらは安く利用できる半面で、フリーアクセスではなく、指定のクリニックに行く必要がある。さらに、大きな病院に紹介受診する場合には、さらに何カ月も掛かる。使い勝手が悪く、経済的に余裕がある場合には公的医療を使わず、自由診療を利用している。我々は自由診療で展開する最低限の医療を提供するクリニックを作り、ベトナムでの成功モデルを構築して他国に横展開しようと考えた」と説明する。

 さらに、「ベトナムの人口は2030年には1億人に達するとみられ、人口は増加傾向にある。日本に対する評価は高く日本のノウハウを持って行くだけでありがたがられる」と説明する。安部氏によれば、米中貿易摩擦の影響などもあり、漁夫の利を得るような形で、中国からベトナムへの生産移管が進んでいるという。製造業が活況で、農村部から都市部に人口移動があり、そこでは医療ニーズも高まっているとする。経済成長に伴い、生活習慣病の問題も出てきている。

 企業が医療機関の経営は日本と比べると行いやすく、電子カルテ導入などの情報化もこれから進む段階。安部氏は、「医師や看護師数が少なく、医師の給与水準は10万円台。カルテはほとんど紙。普及前に自社でクラウド型の電子カルテの開発も手がける」と話す。