●運天満氏(有限会社ユーマンネットワーク)

 運天氏のアイデアは、「集束音波認知症治療装置」の開発である。集束音波を利用し、血管を新生させて血行を改善する認知症治療と、血液脳関門(BBB)を開放して治療薬を脳に転送するDDS治療に役立てようという試みだ。

運天満氏

 認知症は、毛細血管を再生して血行を改善できれば「予防や治療の可能性がある」(運天氏)。また、集束音波(=衝撃波)はすでに心臓や抹消動脈疾患の血管再生に利用されており、海外ではアルツハイマー型認知症に対する集束音波治療装置が開発されている。これらを踏まえると、将来的な実現を目指す今回の装置でも「血管の再生が可能」と見込まれることから、「認知症の治療に利用できる」と運天氏は考える。

 また、認知症治療薬は脳に送達できれば効果が期待できるが、そのほとんどがBBBに排除されてしまう。そのため、承認された認知症治療薬はまだ1つもない。ただ、集束音波はBBBの開放が可能であることから、まだ実験段階には至っていないが、運天氏は今回の装置でも「BBBを開放できる可能性がある」と想定し、認知症治療への活用を期待する。

●重城健太郎氏(西新井ハートセンター 医師)

 重城氏は、ウィズコロナ時代でも陽圧呼吸療法ができるパーソナル陰圧マスク「CoroPAP」のアイデアを紹介した。CPAP(持続陽圧呼吸療法)で用いられる従来のマスクでは、コロナ禍で問題視されているエアロゾルが発生する可能性があることから、その問題を解決する取り組みとなる。

重城健太郎氏

 急性心不全の患者にはすぐに呼吸のサポートが求められるが、より簡単で一定の効果も見込めるCPAPは、マスクからの「リーク(空気漏れ)によってエアロゾルが発生してしまう」(重城氏)。そのため、コロナ禍ではCPAPを原則できなくなっており、「スタッフの疲弊」「治療による合併症」「入院期間の延長」「救急受け入れ困難」などの問題が出ていることから、重城氏はCoroPAPの開発をスタートした。

 CoroPAPは、従来のCPAPのマスクに頭を丸ごと覆う帽子のような部分を追加した構造となる。開発チームの実験でも、リークを防ぐ効果があったという。今後は、特殊なカメラによるリークの確認や、3Dプリンターによる製品の改良を考えている。重城氏は、これまでにない陰圧と陽圧がコラボしたCoroPAPによって「患者と医療スタッフの両方をサポートしていく」と語った。