ヘルスケア分野の社会的課題の解決に挑戦する優れた団体・企業等を表彰することを目的とした、経済産業省主催の「ジャパン・ヘルスケアビジネスコンテスト2021」。2015年にスタートし6年目を迎えた今回は、最終プレゼン審査を2021年1月28日に予定している(関連記事: [詳報]経産省ヘルスケアビジコン、5代目グランプリ決定)。

 その最終プレゼン審査に向け、アイデアコンテスト部門とビジネスコンテスト部門において書類審査を通過したセミファイナリストの一次プレゼン審査が2020年10月、「日経クロスヘルスEXPO 2020」内で実施された。コロナ禍のため、オンラインでのプレゼン参加も交えた審査となった。

 冒頭で登壇した、経済産業省 商務・サービスグループ ヘルスケア産業課 課長補佐の高橋久美子氏は、コロナ禍ながらも過去最大となった応募総数に触れ、参加者の情熱と挑戦する意思を称えた。「ヘルスケア分野は斬新なアイデアを思いついても、相手にされないことが多い。しかし、より良い未来を作るためには、理想と現実のギャップを埋めていく作業の積み重ねが必要であり、情熱や意思、行動がそういったものを突き動かす。今回のコンテストが「理想と現実のギャップを埋める一歩になるとともに、挑戦者への支援が広がる機会となること期待する」(同氏)。

経済産業省の高橋氏(写真:寺田 拓真、以下同)

 本記事ではまず、アイデアコンテスト部門において書類審査を通過した15組のセミファイナリストのプレゼンを、登場順に伝えていく。

グランプリの座を競うビジネスコンテスト部門12社のセミファイナリストによるプレゼンの様子はこちらの記事へ
経産省ビジコン6代目グランプリは、この12社の中に

●梶山愛氏(クレインバスキュラー 代表取締役/東北大学大学院医工学研究科 技術補佐員)

 梶山氏は、血液透析用の血管(AVシャント)が狭くなる「狭窄」を防止する新たな治療法として「AVシャントリモデリングデバイス」を紹介した。狭窄を発症すると透析できなくなることから、血液透析の現場では深刻な問題になっているという。そこで梶山氏は、このデバイスで狭窄の発症や手術の心配を取り除き、患者が安心して透析できることを目指している。

梶山愛氏

 狭窄の治療法としては現在、狭窄部にカテーテルを挿入し、バルーンを拡張することで血液の流路を再開通する方法がある。ただ、この治療法は「年間18万件も実施されており、その医療費は450億円にもなる」(梶山氏)。この現状を解消すべく、梶山氏が着目したのは「冠静脈バイパスの静脈狭窄における新たな治療法」である。その治療法をAVシャントの狭窄に応用したものが「AVシャントリモデリングデバイス」で、狭窄の主要因である「内膜肥厚」を抑制できる。

 ターゲットとする市場規模は、日本国内の450億円に海外市場をプラスした1150億円を見込んでおり、このデバイスが実現できれば「市場に大きなインパクトを与えられる」(梶山氏)。助成金を獲得した2019年から開発をスタートしており、現在は東北大学・大学病院と共同研究を進めている。

●牧野結衣氏(広尾学園高等学校)

 牧野氏は、医療データを共有していつでもどこでも閲覧できるアプリ「結」のアイデアを披露した。全体の仕組みとしては、かかりつけ医が診療所での診断結果を患者に渡し、まずは患者がその内容をしっかり理解する。その後、希望者は自分の医療データを国のシステムに預け、個人の同意に基づいたうえで、全国の各医療機関が必要に応じて患者の医療データを閲覧できるというものだ。

牧野結衣氏

 現状では、患者の情報はカルテとして各医療機関が保持しており、患者がそれを見ることはできない。また、医療機関同士の連携が薄いため、情報共有もあいまいだ。そこでこのアプリでは、患者を中心とした医療体制を実現させることで、「患者と医療機関同士の連携による医療データの一元化」(牧野氏)を目指す。

 牧野氏がまず実現させたいと考えているのは「緊急時の円滑な対応」。災害時の慢性疾患患者への迅速な対応や、被災地での継続的な医療サービスの提供などが挙げられる。さらに、このアプリを活用した「移動診療」の導入も提案。アプリを通じて医療機関と患者を結び、「患者自身が健康データとともに歩んでいく社会を実現させる」(牧野氏)。

●瀧澤玲央氏(国際医療福祉大学成田病院 血管外科 外科医)

 人工血管やカテーテルなどの人工物には、「常に感染のリスクがつきまとう」(瀧澤氏)という課題がある。しかし、従来の感染対応法ではその感染を完全に防ぐことが非常に難しい。そこで瀧澤氏は、バイオミメティクス(生物模倣)を応用した「感染しないカテーテル」のアイデアを提案した。

瀧澤玲央氏

 現在、瀧澤氏が注目するバイオミメティクスは2つ。1つは「鮫肌構造」で、サメ肌の微細な凹凸が「さまざまな病原微生物に抗菌作用を有する」(瀧澤氏)という報告がある。もう1つは、セミやトンボの羽に見られる「ナノピラー構造」。こちらは、微細な柱状構造が「病原性微生物の細胞を破壊することで抗菌作用を示す」(瀧澤氏)という。

 これらのテクノロジーで感染しないカテーテルを実現し、現行の医療品を使わずに感染をコントロールできれば、医療現場の無駄なコストを削減するなどの「革命的なイノベーションになる」(瀧澤氏)。また、実現にはいくつかの課題があるものの、このテクノロジーを感染リスクのあるすべての医療器材に応用できれば、将来的に「患者、医療者のリスク回避」「大幅な医療費削減」「日本初の世界市場への進出」などのメリットにつながるとした。

●運天満氏(有限会社ユーマンネットワーク)

 運天氏のアイデアは、「集束音波認知症治療装置」の開発である。集束音波を利用し、血管を新生させて血行を改善する認知症治療と、血液脳関門(BBB)を開放して治療薬を脳に転送するDDS治療に役立てようという試みだ。

運天満氏

 認知症は、毛細血管を再生して血行を改善できれば「予防や治療の可能性がある」(運天氏)。また、集束音波(=衝撃波)はすでに心臓や抹消動脈疾患の血管再生に利用されており、海外ではアルツハイマー型認知症に対する集束音波治療装置が開発されている。これらを踏まえると、将来的な実現を目指す今回の装置でも「血管の再生が可能」と見込まれることから、「認知症の治療に利用できる」と運天氏は考える。

 また、認知症治療薬は脳に送達できれば効果が期待できるが、そのほとんどがBBBに排除されてしまう。そのため、承認された認知症治療薬はまだ1つもない。ただ、集束音波はBBBの開放が可能であることから、まだ実験段階には至っていないが、運天氏は今回の装置でも「BBBを開放できる可能性がある」と想定し、認知症治療への活用を期待する。

●重城健太郎氏(西新井ハートセンター 医師)

 重城氏は、ウィズコロナ時代でも陽圧呼吸療法ができるパーソナル陰圧マスク「CoroPAP」のアイデアを紹介した。CPAP(持続陽圧呼吸療法)で用いられる従来のマスクでは、コロナ禍で問題視されているエアロゾルが発生する可能性があることから、その問題を解決する取り組みとなる。

重城健太郎氏

 急性心不全の患者にはすぐに呼吸のサポートが求められるが、より簡単で一定の効果も見込めるCPAPは、マスクからの「リーク(空気漏れ)によってエアロゾルが発生してしまう」(重城氏)。そのため、コロナ禍ではCPAPを原則できなくなっており、「スタッフの疲弊」「治療による合併症」「入院期間の延長」「救急受け入れ困難」などの問題が出ていることから、重城氏はCoroPAPの開発をスタートした。

 CoroPAPは、従来のCPAPのマスクに頭を丸ごと覆う帽子のような部分を追加した構造となる。開発チームの実験でも、リークを防ぐ効果があったという。今後は、特殊なカメラによるリークの確認や、3Dプリンターによる製品の改良を考えている。重城氏は、これまでにない陰圧と陽圧がコラボしたCoroPAPによって「患者と医療スタッフの両方をサポートしていく」と語った。

●竹内雅樹氏(東京大学大学院工学系研究科 電気系工学専攻修士2年)

 竹内氏は、失われた声を取り戻すための新しいデバイス「Syrinx」を開発している。声を失った人たちがコミュニケーションを取るためのデバイスで、「ハンズフリー」「人間に近い声の生成」「快適なデザイン」という3つの特徴を持つ。

竹内雅樹氏

 これまでは、口パクで振動音を言葉にして発声する「EL(電気式人工喉頭)」が長年利用されてきた。しかし、ELには「片手が塞がる」「機械的で単調な音声」「20年以上不変のインターフェース」という課題があった。Syrinxは、「これらの課題を解決する」(竹内氏)ための新しいデバイスであり、喉頭摘出者団体「銀鈴会」の協力を得ながら開発を進めている。

 Syrinxは、振動子の付いたバンド状のものを首に巻き付けた状態で使用する。人間に近い声を出すために、2つの異なる振動子を用いるとともに、ユーザーの過去の音声から機械学習を用いて振動音を作成する。現在は、製品化や特許取得のため、さらに人に近い声を再現するための改良に取り組んでいる。そして「声を失った人が日常生活で何不自由なく話せる社会」(竹内氏)というゴールを目指す。

●依田龍之介氏(帝京大学医療技術学部 視能矯正学科4年)

 依田氏は、子どもの視力を守る家庭用眼科検査サービス「おうち de 眼科」のアイデアを提案した。視力の成長が停止・低下してしまう小児特有の疾患「弱視」は、三歳児検健診では発見率が42.3%に留まっていることから、すべての子供を対象とする「弱視の早期発見を目的として考案された」(依田氏)。

依田龍之介氏

 サービス内容としては、スマホアプリによる視力・眼球運動の「家庭内検査」、眼球版の母子手帳である「検査結果の記録・解析」、健常者データを基にAIが判定する「異常検知」を用意。弱視の傾向がある場合は、遠隔健康医療相談や近医への受診を推奨する。さらに弱視になった場合も、このアプリで「弱視治療の管理」をできるようにする構想もある。「弱視治療の経過を可視化し、子どもの視力向上につながる行動変容を行うことで、治療成績の向上につなげる」(依田氏)。

 しかし、このような価値を生み出すためには、記録の継続が必要となる。そこで依田氏が着目したのは、「絵本の時間」を利用した検査。スマホなどでデジタル絵本を読む間に、インカメラを利用して子どもの眼球運動を検査する。さらに、文字や絵を視力に換算することで、視力を予想する仕組みを想定している。

●新井崇弘氏(慶応義塾大学大学院 修士2年)

 新井氏は、不健康からの脱却を目的としたジョギングアプリケーション「アセカクナカマ」のアイデアを紹介した。走る動機がない人にターゲットを絞り、運動の可視化などとは異なる視点で運動したくなるモチベーションを高め、最終的に「ウェルビーイングを提供していく」(新井氏)。

新井崇弘氏

 アセカクナカマは、自分の走った場所が地図上に色でトレースされる機能を搭載する。さらに、「仲間と協力してライバルと競う」仕組みを導入し、自分の走った場所が所属するチームスコアとして加算されるとともに、ライバルチームがトレース済みの場所を走ると、その場所を奪うことが可能になっている。そして、最終的に合計スコアの高いチームに、インセンティブが与えられる。

 ただし、走力には個人差があることから、やる気を起こすためのバランス調整として「個人での成績表彰やインセンティブ付与」「走力に応じたランダムマッチング」「ルーチンに飽きてしまう人向けの別モード」などの追加を想定する。また、インセンティブ機能は、チームでの貢献度などに応じて変動するほか、「飲料メーカーとの協力で、飲料水の無料提供なども検討している」(新井氏)。

●金田恵理氏(大阪大学大学院 医学系研究科 心臓血管外科 大学院生)

 金田氏は、更年期症状に苦しむ働く女性のための「新しいホットフラッシュ治療機器」の開発を目指している。更年期症状によるホットフラッシュ(ほてり、のぼせ、発汗)が原因で仕事を辞める女性は年12万人にものぼる一方で、「高い有効性・安全性を満たす治療法がない」(金田氏)からである。

金田恵理氏

 既存の治療法は、ホットフラッシュの発症原因の上流にあたる「女性ホルモンの低下」にアプローチしていたが、金田氏はより下流で直接的な原因でもある「交感神経の異常興奮」に着目。新しい治療の可能性として、「とある外部刺激によって交感神経の異常興奮を抑制する」という手法を提示した。

 なお、近日中の特許出願を控えていることから、今回のプレゼンでは手法の具体的な内容については語られなかった。しかし、この手法は「症状の発現の直接的な原因に作用することで、確実な症状の消失・低減をもたらす」ことから、金田氏は「これまでの着眼点とは異なる非常に画期的なソリューション」と表現した。

●太田圭亮氏(釧路工業高等専門学校 電子情報システム工学専攻1年)

 太田氏は、香りによるメンタルコントロールとその効果確認を可能にする自己管理ツール「フレグランスコントローラ(フレコン)」のアイデアを披露した。ユーザーの集中力向上やリラックス効果に加えて、副次的に「作業効率や生産性の向上にも寄与する」(太田氏)ことが期待される。

太田圭亮氏

 仕組みとしては、「脳波センサー」「アロマディフューザー」「ソフトウェアアプリケーション」の3つで構成される。脳波は、メンタルコントロールの効果測定・確認に使用する。脳波センサーは、体温計のように簡単に使用できる形状や短時間での測定を実現し、利便性の向上をはかっていく考えだ。アプリケーションは、集中やリラックスできる香りの量と放出する時間を、脳波データを基にして制御する。

 事業モデルのポイントとしては、フレコンの開発者と香り製造者の連携を挙げる。例えば、「香り製造者はフレコンから得られた効果データから、香りの効果と脳波の関係性を実証できるようになる。さらに、効果の高い香りや人気のある香りなどのデータから、それぞれの顧客に合った香りの需要創出や可視化なども可能になる」(太田氏)と見込んでいる。

●小林利道氏(臨床工学技士)

 小林氏は、患者の急変を事前に察知する「ワイヤレス呼吸数モニタリングシステム」の開発に取り組んでいる。状態の悪化は8時間前から起きており、その多くで「呼吸状態の悪化が見られる」と報告されていることから、その変化を見逃さないためのシステムとなる。

小林利道氏

 今回のシステムは、「電極を内蔵したシリコンバンド」「モニタリングアプリ」「受信端末」の3つで構成される。呼吸数の測定原理は、電極2点間の抵抗値の変化を測定する「インピーダンス法」を採用する。従来の呼吸数測定方法と同じ手法で、信頼性の高さが特徴となる。得らえた数値はスマホにインストールしたモニタリングアプリで演算され、メディカルスタッフへリアルタイムにデータが送信される。

 このシステムの展開によって、「状態悪化・重症化を検知し、予期せぬ心停止を防ぐ。そして、入院期間を短縮することで、医療費を削減していく」(小林氏)。さらに小林氏は、急性期から回復期のみならず、「これから本格的に展開されていく在宅医療でも、シームレスなモニタリングを実現していく」考えだ。

●石北直之氏(新潟病院 医療機器イノベーション室長)

 石北氏は、3Dプリントが可能な人工呼吸器の開発プロジェクト「COVIDVENTILATORプロジェクト- #O24U」を紹介した。北原氏は3Dプリントで製造可能な医療機器として、2013年に人工呼吸器の実験に成功しており、これをコロナ禍での世界的な人工呼吸器の需要増と供給不足の課題解決に役立てようと考え、2020年度中の提供を目指している。

石北直之氏

 もともと、3Dデータはすでに完成していたが、データの無料公開にあたって問題となったのは、「人工呼吸器がクラスIIIの高度管理医療機器に該当し、薬事承認申請が必須となる。さらに、想定されるリスクは予めできる限り減らす必要がある」(石北氏)ということ。そのため、設計の修正や追加のオプション開発が避けられないなどの課題が発生し、承認申請手続きや開発、調査などに多額の費用が必要になった。

 そんなとき、支援の手を差し伸べたのが新潟病院である。さらに、約1千万円の寄付や公的資金も得たことで、開発は一気に加速したそうだ。なお、現在はスマホアプリの開発にも着手している。換気サイクルは肺の状態などに影響を受けるため、目安となる流速設定値などをスマホアプリで提供しすることで「より精密な管理を実現していく」(石北氏)。

●小川良磨氏(メカニカルエンジニア)

 小川氏は、チーム「トモクラウド」が実用化開発を進めている「LTモニタ(リンパ浮腫トモグラフィックモニタ)」を解説した。「リンパ浮腫に苦しむ乳がんや婦人科がんサバイバーのトータルペインを、最新テクノロジーで解決する」(小川氏)。

小川良磨氏

 リンパ浮腫は乳がんや婦人科がんの手術後に発症する後遺症で、手足が腫れてしまう病気だ。症状が進むと手の施しようがなくなるが、「いまだに経験と勘に頼った古典的な診断技術が用いられている」(小川氏)ため、新しく正確な診断技術が求められていた。この解決策として小川氏たちが採用したのが、電気を使った独自開発の画像化診断技術「EIT(電気インピーダンストモグラフィー)」である。

 LTモニタは、電極の付いたウェアラブルセンサーを患者の腕や足に巻き、クラウドと連携することで、EITによって測定場所の断面を簡単かつリアルタイムに画像化する。これにより、「リンパ浮腫の早期症状として現れるリンパ液の漏れを検出し、早期診断を実現する」(小川氏)。プロ仕様の医療機関向け「LTモニタPro」と個人使用を想定したセルフケア向け「LTモニタLite」を開発しており、2026年に「LTモニタPro」、20209年に「LTモニタLite」の販売を予定する。

●髙橋秀徳氏(DeepEyeVision 代表取締役)

 髙橋氏は、自社が展開する医療機関向け眼科画像診断支援サービスの概要を紹介した。読影医不足によって疾患の早期発見が難しくなっていることから、AIによるディープラーニングを利用した眼底診断支援を提供することで、失明のみならず、高血圧など全身疾患の防止にも役立てていく。

髙橋秀徳氏

 DeepEyeVisionは、自治医科大学が開発したAIの独占ライセンスを受け、クラウド上にAIシステムを構築。読影医がそのAIシステムを利用することで、読影時間を「1/3に削減できるようになる」(髙橋氏)。また、FDA承認された競合する米企業のAIシステムは1疾患のみを対象とするが、髙橋氏は「弊社のAIシステムは100疾病を対象としており、まったく別物である」と説明した。

 自社の知財としては、自治医科大学が取得した糖尿病網膜症の国内特許の独占ライセンスを受けているほか、「角膜に関する特許」や「患者の将来を予測する特許」を出願している。これらの知財を活かすことで、今後もさらなる発展を進めていく。

●高谷祐希子氏

 高谷氏は、造血幹細胞移植後の生活を包括的にサポートするアプリ「RE birthdays」の開発を目指している。白血病は造血幹細胞移植によって不治の病でなくなったが、その一方で移植後のフォローアップが必要になっていることから、AYA世代と呼ばれる10代後半から30代を対象に支援する。将来的には、他の疾患患者への市場規模拡大も視野に入れている。

高谷祐希子氏

 RE birthdaysは、3つの機能を備える。1つ目は「PHR機能によるセルフケアサポート」で、簡単にできる自己管理を実現することで合併症の予防や早期治療につなげるほか、ゲーミフィケーションによるモチベーションの維持によって移植後のQOL向上をはかる。2つ目は「SNS機能によるピアサポート」で、移植後の疑問を患者同士で解決できるプラットフォームとして機能し、AYA世代の孤立を防ぐとともに、早期の復学・復職を支援する。

 3つ目は「医療機関と連携した効率的な外来受診」で、移植病院向けのソフトウエアを作成することにより、アプリ利用者の患者データを電子カルテ上の情報として閲覧可能にする。さらに、地域医療全体で移植患者を支える架け橋としての役割を果たす。

(タイトル部のImage:寺田 拓真、コラージュはBeyond Health)