経済産業省関東経済産業局と公益財団法人木原記念横浜生命科学振興財団が10月25日に横浜市内で開催した、自治体とヘルスケア関連ベンチャー企業をつなぐ「ガバメントピッチ」。今回は第2部「課題解決型新スキームの挑戦」の様子をレポートする(前編はこちら)。

第2部に登壇したのは、タニタヘルスリンク、中外製薬、横浜市の3者。タニタヘルスリンクと中外製薬は自治体の課題解決を担う大手企業の立場から、連携先の相手としてベンチャー・中小企業に求めるニーズを紹介。また、様々な民間との対話によるオープンイノベーションを進める横浜市は、同じくベンチャー・中小企業向けに、いかにして幅広く企業提案を受け付け、さらなる提案型連携を進めるかについて話した。以下、順番に見ていく。

●タニタヘルスリンク

 健康機器大手のタニタの子会社タニタヘルスリンクは、個人に加え、企業や自治体向けにに様々な健康支援サービス・プログラムを展開している。同社の大きな特徴として、自治体ソリューション営業部の水越太輝氏は、「からだの状態を可視化することから始まり、『はかる→わかる→気づく→変わる』という健康づくりのPDCAサイクルに関するサービスをワンストップで提供している」点を挙げる。

 通信対応のタニタの計測機器で測定したデータはタニタヘルスリンクの専用サーバーに転送され、健康管理サイトやアプリ上で、いつでも閲覧することが可能。それで体や運動の状態がわかる。また、利用者の計測データに基づく各種コンテンツも用意されているため、健康課題に気づき、行動変容を促す契機にもなる。

 そんなタニタヘルスリンクだが、自治体の幅広い課題にアプローチするため、ベンチャーとの連携強化を進めたい考えだ。その企業が持っているデータとタニタヘルスリンクのデータとを連携することで、新たなサービスの創出につながる提案などを求めている。

 実際、これまでの取り組み事例として、地理情報システム会社と協業して、位置情報を反映したウォーキングマップにタニタヘルスリンクの歩数計測アプリを組み合わせ、名所を回ればポイントをもらえるようなサービスを提供した。ウオーキングに付加価値をつけた格好だ。

タニタヘルスリンク自治体ソリューション営業部の水越太輝氏
タニタヘルスリンク自治体ソリューション営業部の水越太輝氏
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●中外製薬

 ここ数年、デジタル領域の活動に力を入れている中外製薬。同社では2030年に向けて、デジタル技術によってビジネスを革新し、社会を変えるヘルスケアソリューションを提供するトップイノベーターになることを目指す。自治体と健康づくりで連携する活動も進める中、技術開発パートナーを求めている。

 ウェアラブルデータなどから取得されるデータを解析し、病気の予防・診断・治療・回復期のすべてにおいてヘルスデータを自ら把握できることで、誰もが幸せになる毎日を送れるようになる――。中外製薬デジタル戦略推進部の高橋竜之氏によると、そんなことを実現できる測定技術やアルゴリズム開発を進める企業との連携を望む。

 具体的には、痛みや疲労、ストレス、うつ、睡眠などのQOL(Quality of Life:生活の質)関連症状を定量化する、また、認知症やがん、骨粗鬆症といった病気の早期発見や早期治療につながる技術の提案を求めている。

 そうした技術を持つ企業と連携できれば、中外製薬として、革新的な新薬をつくり、なおかつ個々人に寄り添った個別化医療の提供を実現することも可能になってくるという。「互いにwin-win の関係を構築できれば」と高橋氏は結んだ。

中外製薬デジタル戦略推進部の高橋竜之氏
中外製薬デジタル戦略推進部の高橋竜之氏
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●横浜市

 人口約378万人を抱える横浜市。増加の一途をたどってきた人口は2019年に初めて減少に転じ、この先、少子高齢化のスピードが加速する見込みだ。

 もはや行政の知恵・力・資源だけでは解決していけない課題が山積している。横浜市はそんな危機意識を早くから抱いており、2008年4月には全国に先駆けて、公民連携の取り組みを主導する専門部署の共創推進事業本部を組織。そこに民間から事業の提案・相談を受け付ける窓口「共創フロント」を設けた。この窓口で企業や大学など民間からアイデアやノウハウを募り、担当者は内容に応じて関連部局につなぐ役回りを担う。

 その後、同本部は、政策局共創推進室に名前を変えると、徐々に権限も拡大。現在は様々な公民連携制度・手法を一括して所管する。

 横浜市政策局共創推進室共創推進課の中川悦宏氏によると、共創フロントには年間約100件の提案が寄せられ、2008年からの取り組みでこれまで400件を超える連携を実現しているという。

 共同推進室メンバーは、提案の実現化に向け、コーディネーターとなって調整を行う。時には、提案内容を深めたり、その効果を検証したりするのに、異分野の企業同士が連携する場づくりを進めるといった支援も行う。

 特筆すべきは、横浜市では今年9月に財政情報をわかりやすく可視化した WEBサイト「横浜市財政見える化ダッシュボード」を新設した点。市の予算や取り組みについて、分野別、事業ごとなどに細かく検索できるようになっている。「このツールを活用し、協働・共創に向けた情報収集、分析などに役立ててもらえれば」と中川氏。企業からの相談・提案は WEB上のエントリーフォームから24時間365日受け付けている。

横浜市政策局共創推進室共創推進課の中川悦宏氏
横浜市政策局共創推進室共創推進課の中川悦宏氏
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(タイトル部のImage:monsitj -stock.adobe.com)