●愛知県蒲郡市

 三河湾に面する観光都市である蒲郡(がまごおり)市。人口は1980年代から緩やかに減り続け、2021年3月現在、人口約7万9000人、高齢化率は29.7%だ。

 そんな蒲郡市は2018年9月に台風24号が接近。市内の約31%の回線で長時間の停電発生を余儀なくされた。

 停電が長く続けば、在宅酸素・人工呼吸患者は命の危険にさらされる。市内には合わせて約100人の患者がいて、その数は今後、高齢化の進展に伴い、増加すると見込まれる。

 市は停電に備えた取り組みを強化しようと、2020年11月に市医師会ならびに医療機器メーカー5社と協定を結び、「蒲郡電源あんしんネットワーク」を設立。台風や地震などにより長期にわたる停電が見込まれる場合には、自家発電機を備えるボートレース蒲郡に避難所を設け、医療機器メーカーや市民病院が必要な装置を届けることとした。対象者は同ネットワークに事前登録しておくと、サービスを受けられる。

 そのほか、災害弱者には避難困難が予想される高齢者や障害者などもいて、要援護者全体は市内で約3000人に上る。

 蒲郡市では、名古屋大医学部付属病院などが開発した、ICTを用いた医療・介護福祉関係者らの情報共有ツール「電子@連絡帳」を既に導入済みで、要援護者をめぐっては、オプションサービスの「災害時連携」も活用している。このオプションサービスは、災害に備えて、自治体があらかじめ要援護者のリスト・マップを作成し、地域内にどのような支援対象者が所在するか、関係者間で把握できるようにするというものだ。また、実際に災害が発生した場合には、安否報告の機能を活用し、自治体と専門職(支援チーム)が要援護者の所在を確認して、互いに情報を共有しながら支援につなげられる。

 もっとも、先の電源あんしんネットワークに関しては、「現状、登録者の3割程度は連絡先が固定電話。携帯電話を持っていないか、持っていても通話以外使っていない」と、市健康福祉部長寿課地域包括ケア推進室の井坂和美氏は明かす。電子@連絡帳の災害時連携の対象者となっている要援護者に関しても、4割程度が同じ状況なのだという。

 在宅酸素・人工呼吸患者をはじめとする災害弱者の「助けて!」をすぐに見つけられる、伝えてもらえるようにしたいというのが、蒲郡市の願い。そのための共創相手となる企業を募集している。

 受け付ける提案内容としては既に導入済みの電子@連絡帳を活かすことが前提。例えば、要援護者マップに、助けるのに必要な対象者の住宅周辺の状況(天気や道路状況など)が一目でわかる仕組みが搭載されている、どの地区から優先的にバッテリーを持っていくか、どこの人たちを優先的に見守りにいくかなどのモデルルートも提示されるといった具合だ。緊急時や停電時にスマホなどがなくてもやり取りができるコミュニケーションツールも求めている。

 実証実験のフィールドとしては、「電源あんしんネットワークに登録している在宅酸素療養者46人を対象に行ってもらえれば」と井坂氏。市が連携協定を結ぶ市医師会や医療機器メーカーの協力も得やすい体制にある点をメリットに挙げる。

蒲郡市健康福祉部長寿課地域包括ケア推進室の井坂和美氏
蒲郡市健康福祉部長寿課地域包括ケア推進室の井坂和美氏