予算を確保できた根拠とは…

 もっとも、集中治療専門医の不足による現場の負担増は、横浜市のみならず日本全体での課題となっている。国内のICUの病床数約7000床に対し、集中治療専門医は約1500人程度とされる。そこで厚生労働省は医療現場の働き方改革の一環として、2019年度に「Tele-ICU体制整備事業」に5億5000万円の予算を付けている。

 横浜市立大学の実証事業では、この予算からシステム構築費の50%が補助されている。そして、残りの50%のうち約半額弱を負担しているのが横浜市だ。鈴木氏は、「Tele-ICUの意義は理解できるものの、市として一般財源で補助するには医療の文脈だけでは難しい。市民へのメリットを考えた行政的な文脈が必要だった」と話す。

 その際に役立ったのが、市の「官民データ活用推進計画」だったという。2016年12月に施行された官民データ活用推進基本法を受け、鈴木氏らが議員提案で制定した条例に基づく計画だ。

 同計画は、情報を根拠とした効率的な市政運営や市内経済の活性化、市民が安全で安心して暮らせる生活環境の実現を目指すもの。「先端技術やデータを活用した取り組み、データ活用に関する調査研究を協働・共創によって推進すること、横浜市立大学をはじめとした大学・研究機関と連携することなどがポイントとして掲げられている」(鈴木氏)という。これを行政的な文脈の根拠とすることで、極めて短期間に横浜市立大学の実証事業への補助決定ができたと振り返る。

 横浜市では現在、同計画に基づいた公民連携プロジェクトとしてTele-ICUの実証事業のほかに、小児科医による小児科オンライン相談の実証事業にも取り組んでいる。専門医によるオンライン相談で未就学児の過度の受診を削減できるか、母親の不安解消が可能か、などを検証しているという。

(タイトル部のImage:Beyond Healthが作成)