「“買収側の成功体験”も増やしていく必要がある」

 次に池野氏は、朝倉氏と大下氏に投資家の観点から「投資対象となるスタートアップの判断基準やチェックポイントは何か」を質問した。

 朝倉氏は、グロースキャピタルであるシニフィアンの特徴から「シードやアーリーといった初期のスタートアップを対象とする投資家の基準とはやや異なる」と断りつつ、「経営チーム」「事業の本質的価値」「上場の蓋然性」「財務体質」「投資条件」という5つの基準を挙げた。さらに、この中でもっとも重要なポイントとして「経営チーム」をピックアップし、この点は「シードやアーリー、あるいは上場前のスタートアップであっても、高次元で満たしていることが求められる」とした。

 アーリーステージのスタートアップも対象とする大下氏も、まずは「チーム」の重要性を強調。特に、医療機器の開発では「医工連携」が必要となることから、「医師と技術者のコミュニケーションが取れていないと難しい」と指摘した。アーリーの場合は「プロダクト」「マーケット」「チーム」といった要素がすべて高水準でそろっている必要はなく、「どれか1つが際立って良ければ、他は目をつぶる」という感覚が必要になるとのこと。イメージとしては「減点方式ではなく、完全に加点方式で判断する」とし、実際にA-Tractionのケースでも「製品の完成形や市場ははっきりしていなかったが、伊藤氏のチームは際立って良かった」ことから投資を決めたと振り返った。

 最後に池野氏は、「今後の日本の経済成長を担うスタートアップを生み出すエコシステムを作っていくためには、何が必要か」をたずねた。

 大下氏は、ベンチャーキャピタルに求められる点として「きっちりとリターンを出し、資金調達ができる状態を継続していく」ことを挙げた。「M&Aの後でも成長していくことが重要」という点にも触れ、M&Aした企業が「買収して良かったと思えないと、買収自体が増えない」と指摘。医療機器であればその製品が医師や患者に届き、それを使った医師が「自分も新しい医療機器を作ってみようか」と思えるようなムードを醸成することの必要性も説いた。

 朝倉氏は、入口側での「起業の絶対数の増加」と、出口側での「M&Aの成功」「IPOの成功」という3点を挙げた。大下氏が語った「M&A後の成長」にも賛同し、買収したスタートアップが買収後も自社の事業に大きな貢献を果たしたという「“買収側の成功体験”も増やしていく必要がある」と補足した。

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