聖路加国際大学で開催している「ヘルスリテラシー講座」とは

 続いて、聖路加国際大学 学術情報センターで司書を務める佐藤晋巨氏が、定期的に開催している「ヘルスリテラシー講座」について講演した。聖路加国際大学は看護系に特化した大学として知られ、都心の東京・築地に立地。キャンパスに隣接する「大村進・美枝子記念 聖路加臨床学術センター」の1階に「聖路加健康ナビスポット:るかなび」(以下、るかなび)を設け、市民向けの健康情報、看護師による健康相談、機器を使った簡単な健康チェックなどを提供している。

聖路加国際大学 学術情報センター 佐藤 晋巨氏

 ヘルスリテラシー講座は、るかなびを舞台として2015年から年に1回~2回の頻度で開催してきた。るかなびは「People-Centered Care」(以下、PPC)と呼ばれる市民を主人公としたケアをコンセプトとしており、市民と専門職がパートナーとなり、“自分の健康を自分で創る社会”の実現を支援する場でもある。約3000冊の図書が置かれ、大学図書館の分室としても機能しているのが特徴だ。

 90分を1講座として2日間に分けて実施。座学ではなく、実際に本を読んだり、ネットの情報を閲覧したりしながら参加者と講師たちがともに学び合うワークショップスタイルを採る。ここで拠り所としている基準が「いなかもち」である。

 いなかもちとは、健康情報を見極めるための5つのポイントを指す。その内容は「いつの情報か」「なんの目的の情報か」「かいた人は誰か」「もとネタは何か」「ちがう情報とくらべたか」というもの。これは北澤氏が示したメディアドクター研究会の指標とも通底している。

ヘルスリテラシー講座の基準となる「いなかもち」

 いなかもちをより深く理解するため、1本3〜4分程度のビデオ教材を合計11本用意した。この教材はYouTubeでも公開しており、誰もが閲覧できる。佐藤氏は講座の流れをこのように説明する。

 「最初に関心がある、または読んでみたい本を自分で選ぶ。対象となるのは本屋で並んでいる一般書籍だ。いなかもちを説明したビデオ教材で学んだ後、その日に初めて知り合った人たちと机を囲んで本を中心に語り合い、選んだ本にいなかもちがきちんと書かれているかを該当箇所に付箋を貼って確認する。周囲の人と確認しながら共有することも目的の1つにした。

 いなかもちは基本的な情報なので誰でも気づきそうだが、やはり意識しないとチェックしない。最初の一歩はなかなか踏み出しにくいため、『これだけは確認してみよう』というポイントを紹介している」(佐藤氏)

 講師は看護師、司書に加え、ボランティアがグループワーク支援で参加。PCCは当事者同士がともに学ぶスタンスのため、市民との活発なやり取りが交わされる。その中で司書にできることは「情報を扱う専門家として、そのときの最良のエビデンスを含む資料を探すスキルを提供すること。特定の資料を推薦することはしない」と佐藤氏。専門家による客観的な資料評価は看護師に任せ、それぞれの役割を明確にしている。

 「ヘルスリテラシー学習拠点として気をつけていることは、情報の専門性が異なるものを同じトピックで扱うようにしている点。市民がヘルスリテラシーを身に着け、医療サービスを受ける際に自分自身で納得の行く判断ができるための資料を集めている。るかなびには看護師もいるため、たとえ専門書や医学書であっても教えてもらいながら理解できる利点もある」(佐藤氏)

 受講者を対象に評価を行ったところ、講座の前後で「自分の求める情報を選び出せる」「情報が信頼できるかを判断できる」の項目で有意な差が出た。この意識は1カ月後の追跡調査でも継続していたとのことで、一定の成果が出ている。講座には専門家がいるため性急に答を求めるきらいはあるが、佐藤氏は「答を教えてもらったらそこで終わり。応用が効かず、情報収集能力の向上に結びつかない。この違いを理解してもらうことが今後の課題」と話した。

(タイトル部のImage:小口 正貴)

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