4施設の担当者が語る「図書館で医療情報を与えるということ」

 このセッションでは連携の実証に参加した図書館を中心に、神奈川県逗子市立図書館、石川県がん安心生活サポートハウス、埼玉県立久喜図書館、大阪府堺市立健康福祉プラザの担当者が登壇した。

●神奈川県逗子市立図書館

 逗子市立図書館は2014〜2016年度(平成26〜28年度)の3年間、国立がん研究センターとともに連携のパイロット実証を行った図書館の1つだ。2014年4月に健康・医療情報コーナーを設置し、医学関連に加え、関係機関からの寄付による書物、図書館が作成したブックリスト、新聞記事ファイルなどを置く。

 同図書館で司書を務める井元有里氏によれば、2013年の図書館総合展が連携のきっかけ。「国立がん研究センターの先生から、当時の館長にお話をいただいた。2014年度からは助成金もつき、徐々に関係者も広がり、幅広いチーム構成になった。国立がん研究センター、慶応大学文学部、横浜市立大学附属市民総合医療センター、湘南ふじさわシニアネット、逗子市国保健康課などが関わった」(井元氏)。

逗子市立図書館の井元 有里氏

 2014年度には医師、保健師、看護師、司書を交えた医療講演会、2015年度には気軽に楽しめる映画上映会と寸劇、2016年度には医療の場でよく見受けられる事例を示した「あるあるカフェ&ミニミニブックトーク」を制作するなど、積極的に健康・医療情報を発信した。中でもブックトークではスライドショーによる物語の形でがんにまつわる本を紹介し、健康・医療情報への興味・関心を惹くことに貢献できたとする。

 「生と死を考えるコーナー」を設けたのも図書館ならではだ。「病院ではなかなか扱いにくい死の情報も、図書館ではさまざまな切り口で資料提供が可能。生命倫理、終活、看取り、グリーフケア、逝き方の5テーマで分類した。患者本人だけではなく、家族や友人なども利用しやすい」(井元氏)。これからも“本・人・場”の3つを軸に、誰でも気軽に無理なく正しい情報を得られる環境づくりに努めたいと話す。

●石川県がん安心生活サポートハウス

 石川県がん安心生活サポートハウスは「つどい場はなうめ」の愛称で知られる、がん患者や家族の交流の場。石川県のがん対策を推進するために石川県済生会金沢病院に委託された事業として2013年(平成25年)に開所した。

 常勤する看護師に医療相談を受けられるほか、がん体験者によるピアサポーターや患者同士の交流などに利用できる。この“がんに近い場所”に図書スペースを併設し、がんや病気に関する図書をはじめ、小説や漫画などを豊富にそろえている。

 月2回のボランティアで参加する司書の原有樹氏は「司書が関わるようになった2015年度から貸し出しは増加。元気がないときは簡単に読めるものとして漫画や小説が人気。逆に気持ちがつらくなるなどの理由で闘病記は人気がない。ただし闘病記の漫画は読みやすいためか人気が高く、今、集中的に集めている」と傾向を説明した。

はなうめの図書スペースで司書を務める原 有樹氏

 イベントでは、「びぶりお・カフェ」が人気だ。2018年から2カ月に1度のペースで開催するもので、特定のテーマを決めて図書を紹介し、図書を契機に参加者たちが会話を深める。

 「びぶりお・カフェの目的は図書を通して体験や思いを語り、他者の意見を聞いて世界を広げること。図書の話、病気の話、あるいはまったく違う話題につながることもある。病気になって本当に苦しいときには、海外ミステリーを読む。残虐な描写もあるが淡々とストーリーが進むほうがいい。逆に人情ものはつらいといった意見が出たこともある」(原氏)

 公共図書館とはスタンスが異なるが、「利用者ががんとともに豊かでより良い生活を送ってもらうために、健康・医療情報に限らない、さまざまな図書を利用してもらうための活動をしていきたい」と語る原氏。よりがん患者に近いだけに、今後も有益な情報発信を続けていく。