●埼玉県立久喜図書館

 埼玉県立図書館は熊谷市と久喜市に置かれる。久喜図書館では2009年(平成21年)と早い段階で健康・医療情報コーナーを設置し、図書は入門書から専門書まで約8800冊、雑誌は約60冊の各種分野の雑誌を収集。そのほか患者会や相談窓口のチラシを関連分野の図書周辺に配架して、自由に持ち帰れるようにしている。

 さらに医学文献情報を探せるデータベースを3種類導入して県内医療系大学図書館との相互貸借を可能としたり、独自に作成した「健康・医療情報リサーチガイド@埼玉」を紙とウエブで提供して情報リテラシーを支援するなど、健康・医療情報発信に熱心な図書館として知られる。

 館内の障害者サービス、子ども図書室と連携しているのも特徴だ。協力の結果として、2015年には「見て・聴いて・感じる読書コーナー」を設置した。久喜図書館で司書を担当する山本輝子氏はその成果を次のように語る。

久喜図書館の山本 輝子氏

 「あえてバリアフリーや障害という言葉を使わず、誰でも身近に自分ごととして興味を持ってもらえるコーナーを目指した。健康・医療サービスは発達障害関連の資料や親の会のパンフレット、障害者サービスはデイジー(音声図書)やマルチメディアデイジー、子ども図書室はユニバーサル絵本などを持ち寄っている。これにより、視覚障害者以外の読書が困難な方の登録が増加し、活字が読みにくくても図書館が利用できる第一歩となった」(山本氏)

 定期的に音訳者の研修会を開催して音訳の向上を図り、作成したデータを国会図書館に提供するなどの活動もある。がんに特化したわけではないが、「久喜図書館では地域資料や専門資料を中心に、必要とすべき人に届くように、どこの図書館も作っていないものを中心に作成している」(山本氏)。この姿勢には場内からも賛辞が贈られた。

●大阪府堺市立健康福祉プラザ

 堺市立健康福祉プラザは点字図書館を有する。並行して視覚・聴覚障害者向けの情報提供を行い、字幕入りビデオの貸し出し、コミュニケーション支援などに関わっている。同プラザは逗子市立図書館同様、国立がん研究センターとのパイロット実証に参加した。

 同プラザの原田敦史氏は、視覚障害者だった施設の前館長ががんを発症したことが、国立がん研究センターとの接点になったと語る。「視覚障害者は情報をがんの集める際、資料がないために自分が知りたい情報になかなかたどり着けない。目が見えない人が大きな病気にかかると、情報を集めるのが困難。家族、友人から聞くケースが多く、書籍から情報を得ることが非常に少ない」(原田氏)。

堺市立健康福祉プラザの原田 敦史氏

 点字図書館の利用率がわずか2割弱にとどまり、そもそも8割が利用していないとの問題もある。そのためオンラインで利用できる点字・音声図書ネットワークの「サピエ」の利用を促すが、医療情報のタイトルが非常に少ないのがネックだ。

 「制作に時間がかかることもあるが、専門書よりも小説が人気なのでタイトル数は多くない。録音を担うボランティアも高齢になり、ボランティアを集めるのも一苦労。ましてや、がんの専門書を録音してほしいと募集してもなかなか集まらない。

 そこで国立がん研究センターと提携して、センターの資料を堺市で音訳、点訳している。サピエではこの7年間でデイジー(音声図書)が約7400件、点字図書が約2100件利用された。堺市も協力したので、がん検診に音訳、点訳で案内を加え、保健センターで利用されるようになるなどの効果も見られた」(原田氏)

 どうしても医療情報の鮮度が落ちてしまうなどの課題もあるが、原田氏は「いろんな情報提供の形が見えてきたことは学びにつながった。視覚障害者に医療情報をしっかり届けるとの目的はある程度達成されたのではないか」と自信を深める。この取り組みは、全国各地の点字図書館にもヒントを与えるはずだ。

(タイトル部のImage:mikelaptev -stock.adobe.com)