「柏の葉に医療機器開発のエコシステムを構築する」を目的に、2021年10月26日に実施された「第5回メディカルデバイスイノベーション in 柏の葉」。その第2部では、11社の医療機器スタートアップによるプレゼンテーションが展開された。その内容を、登壇順に紹介していく。

●ARCALIS

ARCALIS 事業開発部 長谷川由紀氏
ARCALIS 事業開発部 長谷川由紀氏
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 2021年2月に設立されたARCALISは、アクセリードと米Arcturus Therapeutics Holdings, Inc.による合弁会社。2021年5月に柏の葉でCMCラボを設立し、2022年からmRNA医薬品・ワクチンの受託製造開発事業(CDMO)を開始する予定だ。

 mRNA医薬品は、最新の医薬品カテゴリーであり、がんや希少疾患にも迅速に新規治療法を提供できると期待されている。しかし日本ではこれまで、自社開発できる企業や受託製造開発事業者がほとんど存在していなかった。そこでARCALISは、CMC開発からLNP製剤製造までを手掛け、mRNA医薬品のワンストップCDMOサービスを提供する国内初の企業を目指す。

●アットドウス

アットドウス 代表取締役 中村秀剛氏
アットドウス 代表取締役 中村秀剛氏
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 アットドウスは、「電気二重層」という自然現象を利用して電流の流れを水の流れに変える装置「電気浸透流ポンプ」を開発し、抗がん剤の副作用を防ぐことに取り組んでいる。電気浸透流ポンプは既存のポンプと比較して、「サイズが小さい」「軽い」「安価」「必要な電流が少ない」「振動がない」「音がしない」「脈流がない」といった特徴がある。

 現在は城西大学でがんマウスによる検証実験を行っており、電気浸透流ポンプを使った局所への超微量投与によって「副作用を軽減しながら薬剤の効果を持続できた」という結果が得られているそうだ。さらに、IoT機器として「スマホアプリを使った投薬コントロールの検証」も進めている。

●メドメイン

メドメイン 代表取締役 CEO 飯塚統氏
メドメイン 代表取締役 CEO 飯塚統氏
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 病理AI解析ソリューション「PidPort」を開発・提供するメドメイン。PidPortは、深層学習によって開発された病理AIを利用した高精度かつ迅速な解析結果の提示と、オンライン上での病理診断を実現する。これによって世界的な「病理医の不足」を解消し、どこにいてもすぐに高い水準の病理診断を受けられる世界を目指す。

 主な機能としては「保管・管理」「閲覧・共有」「AI解析」の3つを用意するほか、スキャニングサービス「Imaging Center」も提供。基本的には、病院で作られる病理標本やプレパラートをまずは画像データに変換し、その画像データとそれに付随する症例情報などを合わせてWeb上で利活用するシステムとなる。

●メドリッジ

メドリッジ 代表取締役 CEO 益田泰輔氏
メドリッジ 代表取締役 CEO 益田泰輔氏
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 メドリッジは、エンジニアリング技術を活用し、雑多な中から特定の細胞を1個単位で分取できる独自のセルソーターを開発。マイクロピラーアレイを有するマイクロ流体チップを使い、細胞のサイズ差や変形度を利用して分離・捕獲するほか、捕獲した細胞を回収して個別に分取するロボットマニピュレーションシステムも搭載する。

 これにより、ヒト全血から前処理不要で、CTC(血中循環がん細胞)を高純度かつ高品質に1個細胞レベルで回収できる。さらにEMTを獲得しているといわれるクラスターCTCも高角度で検出できるという。メドリッジはCTCを採取する受託分析サービスを提供し、がん治療に貢献していく考えだ。

●ソニア・セラピュ-ティクス

ソニア・セラピュ-ティクス 代表取締役兼 CEO 佐藤亨氏
ソニア・セラピュ-ティクス 代表取締役兼 CEO 佐藤亨氏
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 生存率が低い「すい臓がん」に対する次世代型集束超音波(HIFU)治療装置の開発および事業化を進めているソニア・セラピュ-ティクス。エネルギーの少ない超音波を使うHIFU治療には、低侵襲のため「体への負担が少ない」、放射線とは異なり「繰り返し治療ができる」、働きながら治療を受けられる「日帰り治療」といった点が期待されている。

 プロトタイプを用いた臨床研究では、無麻酔で平均22分の治療でありながら、一般的な化学療法に近い成果が得られたとのこと。現在は臨床治験機の開発を進めており、2022年の臨床試験開始を予定する。将来的にはすい臓がんだけでなく、肝臓がんや腎臓がん、卵巣がん、骨腫瘍への展開や、薬剤との併用などを検討している。

●クアドリティクス

クアドリティクス 取締役・CSO 永元哲治氏
クアドリティクス 取締役・CSO 永元哲治氏
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 「脈拍計」によるデータ取得・解析に限界を感じ、「心電計」に着目するクアドリティクスは、ウエアラブル心電計やそのためのAIを開発している。シグナルの効率化やHRVの解析に関する技術、解析をスマホに適用する技術などを有しており、これまでにウエアラブル心電計と連動する「てんかん発作予知」のアプリ開発などに取り組んでいる。

 こういったアプリを実現することで、ユーザー自身の健康管理や医療者との関係増強、治療の最適化などに貢献していく。また、新型コロナの重症化の兆候や居眠り、睡眠時無呼吸症候群などの検知も可能にするとともに、すべての検知を複数アルゴリズムを搭載した1つのデバイスで実現させていく考えだ。

●X-pain

X-pain 代表 田邉翼氏
X-pain 代表 田邉翼氏
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 テクノロジーを用いてがんと共生できる社会を作る「Project. Cancer and You」に取り組むX-pain。乳がんの課題に着目し、在宅で安価にできるがん再発治療の仕組みとして、再発防止のための術後管理ができるエストロゲン値モニタリングデバイスと、患者、医師、保険会社向けの治療用アプリの提供を目指している。

 デバイスでは、センサーで唾液中のホルモン濃度を測定し、その濃度に応じたホルモン剤を投与する。これにより、患者のホルモンデータや服薬記録を取得する。アプリでは、デイバスから取得したデータや問診データ、血液検査データなどをAIで解析し、患者の再発率や心理的不安の低減、医師の治療方針の変更や治療時間の短縮などに役立てていく。

●エピストラ

エピストラ 代表取締役 CEO 小澤陽介氏
エピストラ 代表取締役 CEO 小澤陽介氏
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 生命科学の研究開発にかかる時間とコストの問題に対し、エピストラはAIを活用して研究開発を加速するためのソフトウエアを開発している。ソフトウエアは「自動状態評価AI」と「自動実験計画AI」で構成されており、人間の研究者と同様に「計画」「実行」「評価」のサイクルを繰り返す。これにより、実験に最適な条件を自動的に探索し、過去データに基づいてAIが判断することで、大幅に試行錯誤の回数を減らすことができる。

 ソフトウエアを使った効果検証では、iPS細胞から臨床グレードのRPE細胞への分化効率を88%向上。また、構造たんぱく質のバッチ培養での収量を最大化する効果検証では、収量を26.5%向上させたという。

●エイターリンク

エイターリンク 代表取締役 CEO 田邉勇二氏
エイターリンク 代表取締役 CEO 田邉勇二氏
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 エイターリンクは、埋め込み型医療機器へのワイヤレス給電技術とその応用に取り組んでいる。要素技術は、中長距離に対応した送信機と、複数のアンテナと整流器で安定した受電を可能にする受信機。これにより「17m以上の給電距離」「双方向通信」「あらゆる角度に対応」を可能にするワイヤレス給電を実現する。

 将来的な利用シーンには、スマートコンタクトレンズなどを用いた感覚器の拡張を想定。そのベースとなるのが「埋め込み型医療デバイス」で、インプラント型迷走神経刺激デバイスやペースメーカーなどは動物実験ですでに成功しているほか、直近の研究ではワイヤレス癌治療デバイスに取り組んでいる。

●Photo Soni Life Technology

Photo Soni Life Technology 代表取締役 若松知哉氏
Photo Soni Life Technology 代表取締役 若松知哉氏
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 Photo Soni Life Technologyは、光超音波イメージングを利用し、人間の手のひらの血管を3次元的に捉える技術の社会実装を進めている。光超音波イメージングは、パルスレーザーを生体内に照射すると生体内で熱膨張変形が起き、そこから発生する超音波をセンサーで検出する仕組みとなる。この原理を応用したデバイスを開発し、生体内の小さな血管を可視化する。

 既存のモダリティと比較して、光超音波イメージングは「比較的深い領域を高分解能で非侵襲的に可視化できる」のが特徴。この技術を応用し、がんやリウマチ、動脈硬化や脳卒中などの疾患を対象に、予防予測診断や治療の支援などに役立てたいと考えている。

●ALTs

ALTs 代表取締役 吉田龍央氏
ALTs 代表取締役 吉田龍央氏
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 筋電義手を製造・開発するALTs。そのコア技術となるが「筋電センサー」で、そのセンサーは人間の筋肉が動くときに発生する微弱な「筋電位」を読み取ることができる。さらに、そのデータを増幅させることで、人間の筋肉の動きをある程度推測できるという。

 この技術と仕組みを活用し、腕に装着するだけで五指を思い通りに操作できる筋電義手「AlternaHand」と、自社設計の汎用筋電センサー「MyoScan」を開発した。既存の筋電義手が最低でも約150万円するのに対して、ALTsの筋電義手は約26万円と安価なのが特徴。さらに、人間に近い見た目のデザインや、高精度かつ汗・乾燥に強い独自の筋電センサーを採用している点も魅力となる。

(タイトル部のImage:monsitj -stock.adobe.com)