慢性疾患や生活習慣病の管理に適しているとされるオンライン診療。実際にどのようなケースで利用され、どんな有効性があるのか――。「第23回 日本遠隔医療学会学術大会」(2019年10月に盛岡で開催)では、オンライン診療の様々な活用と研究成果が発表された。その幾つかを紹介する。

術後管理にオンライン診療を

 医療法人社団鉄祐会 理事長の武藤真祐氏は、(1)慢性心不全と、(2)がんの手術後の在宅における術後管理などにオンライン診療を適用した実証例を発表した。

鉄祐会の武藤氏(写真:Beyond Healthが撮影、以下同)

 (1)の心不全疾患は、入院中はきちんと管理され安定していても、退院後に憎悪して入退院を繰り返すことが多い。そのため、退院後の疾患管理が重要だという。武藤氏はシンガポールでの在宅医療にも携わっているが、「シンガポールでは、ステップダウンケアと呼ばれ退院後の管理を集中的に行っている。そこには医師の派遣やTele-Medicine(オンライン診療)を行う国家的な仕組みがある」と語る。

 武藤氏が進めているオンライン診療の実証では、同氏が開発を主導したインテグリティ・ヘルスケアの「YaDoC」と呼ぶシステムを使う。テレビ電話機能に加え、オンラインでの問診と各種のバイタル測定デバイスによるオンラインモニタリング機能を備えている。

 慢性心不全の患者が在宅で測定した体重・血圧・心拍数・酸素飽和度などのデータをスマートフォンアプリを介してYaDoCに転送し、モニタリングする。「一部ではウエアラブル心電計のデータもオンラインでモニターしており、異常があると迅速にアラートをケアチームに上げ、対応できる体制をとっている」(武藤氏)。こうした退院後管理が、再入院を防ぐことに効果があるのかなどについて、今後検証していくとした。

がん患者の術後管理でも実証

 (2)のがん手術患者の在宅術後管理にオンライン診療を適用する実証研究は、聖路加国際病院と共同で進めている。同病院の呼吸器外科で肺がん手術を受けた患者を対象に、オンラインによるフォローアップを2020年3月まで実施している。

 具体的には、退院から約6週間の間にYaDocを用いて、血圧・脈拍・体温・酸素飽和度・服薬状況・睡眠・痛みの程度といった療養記録を患者に入力してもらう。その情報を主治医と共有し、次回の外来診察に生かすようにする。「在宅での患者の状況をオンラインで把握することが、臨床的に価値があるのか検証する。今回の肺がん患者を対象にした検証で有効性を示せれば、侵襲度の高い様々な疾患の在宅管理に使える可能性がある」(武藤氏)。

 こうした在宅での疾患管理では、計測デバイスおよびモニタリング機器のコストが課題になるという。慢性心不全の患者は高齢者が多く、デバイスを用いた管理がきちんとできるかの懸念もある。武藤氏は「患者の状況に合わせた管理のアルゴリズムの開発、あるいはモニタリングデータを電子カルテの診療情報とつなげて診療に生かすといったことを模索している」と述べた。