患者が医療従事者と直接顔を合わせることなく治験に参加する──。そうした「バーチャル治験」の試みが海外で広がりを見せており、国内でも実現を模索する動きが出ている。

 治験の情報サイトや被験者募集サービスなどを展開する3Hホールディングス(東京都豊島区、代表取締役社長:安藤昌氏)が11月28日、「日本初の訪問治験から学ぶ。バーチャル治験導入とその課題」と題したセミナーを都内で開催。国内で在宅訪問型治験を責任医師として携わった経験を持つ東京センタークリニックの長嶋浩貴氏と、3Hクリニカルトライアルの佐々木靖彦氏が登壇し、バーチャル治験の方法や日本での可能性について解説した。

きっかけは「在宅訪問型治験」

 治験は、新規の医薬品や治療機器の製造販売承認を前提に、その効果や安全性を評価するために行う臨床試験だ。新薬などを世に送り出すためには欠かせないが、被験者を見つけることは年々難しくなっている。若年人口が減少し高齢化が進む中で、治験の条件に合う患者が必然的に少なくなるうえ、在宅医療へのニーズが高まり、医療機関への受診機会も減少しているからだ。

 東京センタークリニック臨床研究センター長の長嶋浩貴氏が在宅訪問型治験に携わったきっかけは、ある中枢神経系の治験で認知症のために治験続行が難しくなった被験者との出会い。訪問診療を行う中で、その治験では想定されていなかったものの、通院しなくても治験を継続できる道もあるのではと考えるようになった。その後、製薬企業に持ちかけて実現させたのが在宅訪問型治験だった。これは日本初の試みとなった。

東京センタークリニック臨床研究センター長の長嶋氏(写真:Beyond Health、以下同)

 「治験実施計画書補遺」「同意説明文書の改訂」「実施手順書の追加」「実施医療機関との覚書」などの書類は製薬会社が準備。その後の治験担当医師への依頼や必要な情報を包括した書類などをまとめる作業を含め、ほとんどの治験手順が医療機関外で実施可能だった。薬物動態を調べる採血、体重測定、有害事象の確認、バイタルサインの確認、問診、診察、心電図なども在宅で可能。薬物動態を調べるための採血については、検体を1時間置いても数値に変化が表れないか検証した結果、問題ないと判断できたという。治験薬の点滴投与だけは、安全性を考慮して医療機関で行った。

 在宅訪問型治験のメリットは、「何よりも患者や家族の負担が減ること。病院に行く必要がなく、患者本人は緊張せずに検査もスムーズに受けられるようになった。例えば、採尿が漏らさずにできたり、心電図の異常値が出なくなったりする変化が確認された」と長嶋氏。デメリットは、医療スタッフが居宅に入ることに対して拒否感を持つ患者家族がいることだという。しかし、「訪問診療全般に同じだが、一度家に入ってしまえば、信頼関係が築かれる。一転してメリットになる」という。訪問型治験では準備から訪問、診療録の記録までに半日ほどがかかり、時間的な制約はネックと説明。そうした経緯から、長嶋氏はさらにその発展系として、医療従事者が患者を訪問しなくても行えるバーチャル治験に可能性を見いだす。