「13億人の全住民データベースを構築している中国、あるいはGAFAに負けない保健医療のデータ社会を構築するために、3つのキーワードを提案したい」――。

 日本医療情報学会 代表理事(理事長)の中島直樹氏(九州大学病院メディカル・インフォメーションセンター長)は、「第39回 医療情報学連合大会」(2019年11月21~24日、幕張メッセ)の学会長講演の冒頭で、こう宣言した。

日本医療情報学会理事長の中島氏(写真:Beyond Healthが撮影)

 中島氏が提案した3つのキーワードとは、(1)ポピュレーションマネジメント、(2)患者エンゲージメント、(3)ラーニングヘルスシステム(LHS)、である。これら3つのキーワードは、医療全体の大きな流れと、それを取り巻く社会全体の流れから求められる“スーパーニーズ”だと同氏は言う。そして、その実現・実践には、今後の医療情報基盤のあり方が重要になるとした。「戦略的な医療情報基盤が、これらを推進し、支えることができる」(同氏)。

保険者が進めつつあるポピュレーションマネジメント

 (1)のポピュレーションマネジメントとは、集団を意識したリスク管理である。集団全体の健康状態を評価してリスクによる階層化を行い、予算に応じて高リスクから介入することで、費用対効果の高い全体管理が可能になるという。ただし、評価対象の網羅性がないと介入の効果が少なく、評価の方法自体が悪いと効率が低下すると中島氏は指摘する。そのため「集団全体をできるだけ網羅し、正確なリスク評価を行い、適切に介入することが重要になる」(同氏)とした。

 ポピュレーションマネジメントは、全国で3300組織あるとされる国保および企業健保などの保険者が進めつつある。保険者のもとには、診療行為であるレセプト情報が集まり、2008年から特定健診データも集積されてきた。医療医機関への照会によって診療情報(カルテ情報)も得られる。

 これらを基に、次の3つのリスク階層群に分けられるという。すなわち、レセプト情報も特定健診データもない“ブラックボックス群”、特定健診結果でリスクが明らかでありながらレセプト情報のない“発症放置群”、月々のレセプトで薬や病名が増えている“通院重症群”だ。そして、それぞれの群に対して介入可能になると中島氏は説明する。こうした集団的なリスク管理と医療機関による患者の個別管理を両立させることで、効率的な医療が実現できると説いた。