沖縄県与那国町と与那国町診療所は、全島民約1700人(946世帯)を対象としたオンライン診療の実証事業を開始する。町が事業主体となり、診療所がオンライン診療を実施。沖縄セルラー電話とメドレーが製品提供とオンライン診療の島民への導入・活用支援、各種サポートを行う。官民一体となった検証事業の展開となる。

 与那国町診療所にメドレーの「CLINICSオンライン診療」を導入し、主に発熱患者を対象として診療所医師がオンライン診療を行う。緊急時には島民の要請に応じて役場・消防署・社会福祉協議会の職員が島民宅へ行き、沖縄セルラー電話が提供するタブレット端末を用いて診療所医師のオンライン診療を受ける仕組みも検証する。オンライン診療後の処方薬は、診療所から直接、患者宅へ届ける計画である。実証期間は2020年12月16日から2021年2月28日までを予定している。

 与那国島町診療所は現在、医師1人で全島民に医療提供を行っている。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、診療所前にテントを設営して発熱患者を診るなど一般外来との動線を分けた対応を行ってきた。しかしながら、島民が抱く診療所における感染不安を払拭できず、受診を控える高齢者が続出していたという。

 一方、1人の医師や医療スタッフが新型コロナウイルス感染症に罹患すると即刻、医療体制が崩壊してしまう。医療体制の維持、通常診療の継続は与那国島にとって最も重要な課題になっていた。

与那国町町長の外間氏(オンライン会見のキャプチャー、以下同)

 こうした状況を受け与那国町長の外間守吉氏は、官民一体の実証事業に取り組む動機と展望を次のように述べた。「診療所医療従事者の負担軽減と島民が安心安全に住める環境をどう作るかが大きな問題。行政と一体となって発熱外来患者にオンライン診療を提供することで課題解決の一つになるのではないかと考え、将来を見越して事業をお願いすることとした。皆さんの協力をもって進めていきたい」(同氏)。

「離島医療のスタンダードの一つに」

 与那国町診療所 所長の崎原永作氏は、コロナ禍における患者不安を払拭する対策を講じてきたものの、基礎疾患を有する患者にとってコロナ禍での通院は不安が大きいと指摘する。高齢者が通院を控え、持病を悪化させる事態を避けること、診療所職員の感染により島唯一の医療提供がストップする事態を防ぐことが重要だと強調した。「オンライン診療は、患者の不安や負担を軽減できる可能性がある。患者との接触を低減することで医療従事者の感染リスクも軽減でき、感染拡大防止にもつなげられるのではないか。実証事業の有用性に期待している」(同氏)。

与那国町診療所所長 兼 沖縄県へき地医療支援機構専任担当官 兼 地域医療振興協会沖縄県地域医療センター長の崎原氏

 島民には高齢者が多く、自分のスマートフォンでオンライン診療アプリをダウンロードし、実際にビデオチャットで受診することは大きな課題でもある。そのため実証事業の開始に合わせ、12月16日~18日の3日間、島民向けにオンライン診療体験会を実施する予定だ。体験会に参加できないオンライン診療希望者に対しては、役場の職員が島民宅へ出向いて説明するとしている。

 実証事業説明会見に臨んだメドレー 代表取締役医師の豊田剛一郎氏は、アプリをダウンロードしてみる行為が一番のハードルになると見る。「島民への説明会で町と沖縄セルラー電話でしっかり取り組んでいただけるとうかがっているので、とても感謝している。自治体がここまで後押ししてくれるのは初めてのケースであり、官民一体の実証事例として検証するとともに、そのノウハウを積み重ねていきたい」(同氏)と述べた。

メドレー代表取締役医師の豊田氏

 沖縄県へき地医療支援機構専任担当官を兼務する崎原氏は、オンライン診療が新型コロナの不安を払拭し、感染拡大以前と同様の医療サービス提供が可能だと実証できれば、「沖縄の離島医療のスタンダードの一つになっていくことも考えられる」と期待した。沖縄セルラー電話 代表取締役副社長の菅隆志氏は、「沖縄には47の有人島のうち診療所がない島が28ある。実証事業を通して有用性を確認できれば、こうした島々への展開も考えていきたい」と意気込みを見せた。

沖縄セルラー電話代表取締役副社長の菅氏

(タイトル部のImage:出所はメド―)