スタートアップのミッドナイトブレックファストが2020年12月、AIジャーナリングアプリ「muute(ミュート)」をリリースした(現在のところiOS版のみ)。ジャーナリングとは、昨今欧米を中心に流行しているメンタルセルフケア/マインドフルネスの手法の一つで、頭の中に思い浮かんだことを思うままに書き連ねること。そのため「書く瞑想」とも呼ばれている。元大統領夫人のミシェル・オバマ氏、歌手のレディー・ガガ氏、サセックス公爵夫人のメーガン妃なども習慣にしているという。

ミュートの使用イメージ(出所:ミッドナイトブレックファスト)

 ミュートはジャーナリングの手法を取り込み、そこにAIによるフィードバックを加えたアプリだ。心から吐き出した感情に対するリアクションを自動で受けることで「自分がどのような状態にあるのか、自分は何をしたいのか」を可視化する。メインターゲットは1990年代中盤以降に生まれた、Z世代と呼ばれる現在25歳未満の若者たち。生まれたときからインターネットが当たり前の環境にあり、スマートフォンとともに育ち、複数のSNSを使いこなす、いわゆる“デジタルネイティブ”である。

 開発者である同社パートナーの岡橋 惇(あつし)氏は「Z世代は自ら情報を収集し、個性を編集して発信することが当たり前の世代」と分析する。一方、価値観と生き方の多様化が進み、「溢れる選択肢に迷い、意思決定が複雑化している」(岡橋氏)と指摘。アプリ開発前にZ世代の人たちにインタビューを行ない、エスノグラフィ(行動観察)を重ねたところ、「自分らしく生きたいが、自分がよくわからない」との声が多く寄せられたという。

 そこにはZ世代ならではの特性がある。SNSによって他人と常時バーチャルコミュニケーションを図りながらも、Twitterでは表と裏と趣味のアカウントを使い分け、Instagramではハッピーな自分を表現し、LINEはチャットツールに特化し、Facebookは就職活動などフォーマルな場で駆使する。もはやこの時点でいくつもの“顔”が存在するわけだ。そこに終身雇用制の揺らぎ、少子高齢化の加速、あるいは新型コロナウイルス感染症のような予期せぬパンデミックなど、社会不安や不確実性の高まりが拍車をかけ、若い世代にとって規範となるべき道が見いだせなくなってきている。

 ミュートは、これらの問題を解決したいとの思いから開発した。まずはアプリにありのままの感情を書き出す。機能としては自発的に書く「フリージャーナリング」と、定型の質問に答える「ガイドジャーナリング」の2つを用意する。書いた結果をAIが分析し、リアルタイムまたは毎日届く分析結果で振り返ることができる。振り返りの機能も多彩で、自分がよく使う言葉がピックアップされたり、ポジティブ/ネガティブの動きをグラフで見せたり、感情をマップ化したりする。