狙い通り、ヘルステックは充実の陣容に

 まずはヘルステックのスタートアップから紹介していく。

 神戸医療産業都市との連携を発表したHERBIOは、へそ部周辺に装着するウエアラブルデバイス「picot」を開発し、これまで計測が難しかった深部体温の継続的なモニタリングを実現。その特性を生かした熱中症対策のソリューションをアピールした。同社CEOの田中彩諭理氏は熱中症による労働損害が莫大であるとした上で、「我々は一人ひとりにパーソナライズした熱中症対策システムを考えている。リスク分析、熱中症になりやすい人向けの訓練、個別の対策支援まで行う。これを月額800円で提供したい」と語った。

HERBIO CEO 田中彩諭理氏

 同じく神戸市と協力体制を敷いたシャンティは、ロボットと連携した問診システム、患者への説明システムを通じて医療現場における人材不足をサポートする。同社取締役の山下咲良氏は「すでに21の病院で導入されている。先月、ロボットは1日平均6時間の説明業務を行った。初期導入費用は50万円。月額が1万5千円で医療施設で導入しやすいモデル」と具体的に説明。アクセラレータープログラムの期間中に10施設の導入が新たに決まるなど、順調に成長を続けている。神戸医療産業都市とはMR技術を採用するとのことなので、また異なった展開を考えているようだ。

シャンティ取締役 山下咲良氏

 キママニは、スマホアプリの「KibunLog」を提供する。精神疾患に効果が認められている認知行動療法とExpressive Writingのテクニックを用いたメンタルヘルスサポートのアプリで、5万人以上のユーザー数を獲得済みだ。2019年12月からは東京大学、北里大学とも慢性疼痛の分野で共同研究を開始。帝人ファーマとは、精神疾患の分野での新規事業創出を視野に入れる。

キママニ代表 村上 遥氏

 自らがADHD(注意欠陥・多動障害)を抱えるHoloAshの岸慶紀氏は、気軽に低コストでメンタルヘルスの相談ができるオンラインの音声チャットサポートを手がける。AIエンジンにはMotivational Interviewingと呼ばれる会話手法を用いて、「誰にも共有できない悩みがあったとき、いつでもどこでもAIに話しかけ、適切な応答を返すことができる」(岸氏)。元アマゾンの言語処理エンジニアがバックアップし、米国を中心に事業を開始している。

HoloAsh CEO 岸慶紀氏

 エピストラは今回の中で、最も学術的要素が強いスタートアップ。膨大なコストと時間がかかるライフサイエンスの実験過程をAIソフトウエアで大幅に圧縮し、すでにある企業と年間4000万円の契約を結んでいる。同社代表取締役 CEOの小澤陽介氏によれば、かつてiPS細胞の分化効率向上に適用した際には23%の効率向上に成功したという。

エピストラ代表取締役 CEO 小澤陽介氏

 スプリンクは認知症の早期診断支援サービスを開発している。具体的にはMRIの画像とAIを用いた客観的指標による検査サービスである。認知症研究の第一人者である医師の朝田隆氏の協力を仰ぎながら、今後は医療機器の承認申請を進めていく。

スプリンク 代表取締役 青山裕紀氏

 I Online Doctorは医療が行き届かない人たちに向けたオンラインの医師相談サービス。創業者のMeghna Patel氏は、インドやアフリカ、中東などの地方都市や僻地では医療が分断されている現実を訴え、ITによって解決したいとの思いを熱く語った。スマホのカメラを用いた簡単操作で、医師が参加できるプラットフォームとしているのも特徴だ。「過去1年間で1万2000件以上の相談が寄せられ、2000人以上の医師が参加した。3つの病院がこのプラットフォームを利用し、15の病院とセールスパイプラインがある。遠隔医療の市場は巨大で、今後5年間でインドだけでも29億ドル。これは始まりに過ぎない」(Patel氏)。

I Online Doctor創業者 Meghna Patel氏

 シンガポールのNephTechは、透析患者の血管狭窄を監視する非侵襲デバイスを開発した。独自のAIとセンサー技術を併用し、患者に負担がかからずに血管の状態をモニタリング可能だとする。同社CEOのToh Yanling氏は「ファイザーと共同研究を行っている。現在、シンガポール、マレーシア、ベトナムで700人の患者に機器テストを実施し、安全性と正確性を実証した」と話す。そして日本の高い技術力を見込み、機器製造のパートナーシップを熱望した。

NephTech CEO Toh Yanling氏