薬物が血中にどれだけ含まれているかを調べる血中薬物モニタリング(TDM)。副作用を起こさない範囲で薬の効果を最も発揮できるように、薬の用法や用量を調整するために行う検査だ。

 例えば、臓器や造血管細胞の移植治療で拒絶反応を制御するために使う免疫抑制剤は、過剰に投与すれば免疫を必要以上に抑制してしまい、病原体に感染するといった副作用を引き起こす。このように患者の状態によって使い方や適正量が異なる薬は、治療する前にTDMを行う必要がある。

 このTDMを行う際に必要な試薬などを一つにまとめたキット「DOSIMYCO(ドズィミコ)」と「DOSYNACO(ドズィナコ)」の発売を、島津製作所が発表した。いずれも、トリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS/MS)で分析する際に使うキットで、個別に試薬を購入したり調製したりする手間を省ける。

免疫抑制剤の分析キット「DOSYMICO」。免疫抑制剤の一種であるミコフェノール酸とその代謝物を分析できる。ミコフェノール酸は、心臓や腎臓などの臓器移植の拒絶反応を抑制する目的で使用される(出所:島津製作所)

 このうちDOSYNACOは、抗血液凝固剤の分析キット。投与量を決める際に使うだけではなく、緊急時に患者の状態を知る手がかりとしての活用も考えられる。例えば、抗血液凝固剤の一種である直接経口抗凝固薬(DOAC)は、年齢と体重から投与量を決めるため、治療に当たってはTDMが不要であることが特徴だ。しかし、医療機関では、「脳出血などで緊急搬送されてきた患者が抗血液凝固剤を使用しているかどうかのスクリーニング検査を行いたいというニーズが高まっている」と同社 分析計測事業部 ライフサイエンス事業統括部 バイオ・臨床ビジネスユニット マネージャーの花房信博氏は話す。このスクリーニング検査にTDMを活用できる可能性があるというわけだ。

抗血液凝固剤の分析キット「DOSYNACO」。循環器系疾患で血栓の治療や予防に用いられる抗血液凝固薬を分析できる。対象となる抗血液凝固薬は、アセノクマロール、フルインジオン、ワルファリン、ダビガトラン、アルガトロバン、エドキサバン、アピキサバン、リバーロキサバン、ベトリキサバン、の9種類(出所:島津製作所)

 患者がどのDOACをどれだけ服用しているかが分かれば、患者の状態に合わせて適切な処置や治療を選択できる。例えば、DOACの1つであるダビガトランは中和性があるので、緊急手術を行う場合も中和剤を使用して抗凝固能を抑える――といった具合だ。