腰痛・肩こり――。多くの人にとって、あまりにも身近であり、放置されがちな症状だ。一方で、生産性低下の大きな要因を占めており、メンタル不調にもつながる極めてやっかいな相手でもある。この腰痛・肩こりの悩みをテクノロジーで解決すると同時に、それを切り口としたメンタル不調対策を手掛けているのが、バックテックだ。同社を訪問し、代表取締役社長の福谷直人氏に話を聞いた。

今回訪問したのは、本社として利用している京都駅に近いシェアオフィス(写真:川島 彩水、以下同)
今回訪問したのは、本社として利用している京都駅に近いシェアオフィス(写真:川島 彩水、以下同)
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起業のきっかけ

医療現場で待っていても根本は解決しない

 私は家族や親戚がほとんど医療専門職という家庭環境で育った。そうした背景もあり、大学卒業後には理学療法士の資格を取得した。

代表取締役社長の福谷直人氏
代表取締役社長の福谷直人氏
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 もう1つ、理学療法士の道を選んだ理由には、高校時代のリハビリ経験が影響している。小学校から野球に打ち込み、本気でプロ野球選手を目指していた。だが高校生のときに肘を怪我してしまい、長期のリハビリを余儀なくされた。

 リハビリは痛くて辛くて、通うのが苦痛だったが、週に1度だけ診てくれる先生だけはまったく痛みを感じることなく、あっという間に時間が過ぎた。学校やテレビの話をしながら上手にコミュニケーションを取り、不安を取り除いてくれた。同じリハビリでも、やり方によってこんなにも変わるのかと。自分にとってかけがえのない原体験だ。

 理学療法士になってからは病院でリハビリを担当し、数々の医療現場の課題を見てきた。整形外科はカフェのような感覚で気軽に患者が来てしまうような場所でもある。「今日は腰が痛いから、痛くなくなったら行きます」という笑い話のような日常が繰り返されている。これでは医療費が圧迫されるばかり。医療者が医療現場で待っているだけでは根本が解決しない──そんなジレンマを感じていたのは確かだ。

バックテックの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)
バックテックの概要(表:同社への聞き取りを基にBeyond Healthが作成)
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 ならば違ったアプローチを探ろうと、並行して京都大学大学院医学研究科の博士後期課程で学んだ。大学院に進んだのは、医療専門職の人たちが私の論文を読み、その研究成果を社会に還元してくれることを願ったから。そうすれば自分が起点になり、人びとをより笑顔にすることができる。しかし、論文を書いても社会に求められるのは5年後、10年後になってしまう。そこで京大の起業家育成プログラムに応募し、2016年の卒業と同時にバックテックを設立した。テクノロジーを活用して医療へのアクセシビリティを向上することができるのではないかと考えたのだ。

 バックテックのバックは背骨を意味する。腰痛・肩こりは厚生労働省の国民生活基礎調査でも常に自覚症状のトップ2を占め、腰痛持ちに至っては国民の約4分の1に当たる2800万人がいるとされる。あまりにも身近なので放置されがちだが、生産性低下の3大要因の1位が肩こり、2位が睡眠不足、3位が腰痛との調査結果もある。それゆえ我々は、テクノロジーで肩こり・腰痛の悩みを解決すると同時に、体の痛みを切り口として心も健康にしていくことを目的としている。